表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとなりの文学淑女  作者: シルヴィア・紫の夜明け


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/11

かえるの絵本

 今日の彼女は絵本を読んでいた。

 珍しい。

 西日が神妙な面持ちでページをめくる彼女の顔をオレンジ色に染め上げている。

 その絵本のタイトルには友達の文字が刻まれていて、直感が不味さ不都合さ厄介さを告げた。


「お疲れ様です」

 そう言って素通りするに限る。

「おかえりなさい」

 と彼女はこちらに顔を向けて挨拶を返してくれた。

 ただその瞳には自分がちゃんとロックオンされている。

 帰宅時間を1時間ずらすという方法もあるが、彼女はそれでも待っていそうに思えた。

 それに日が沈んでも玄関前の照明で読んでそうにも思えてしまう。

「この絵本を先程から何度も読んでいるのですけど、あいにく私には友人と呼べる友人が少なくてですね」

 うん、まあ、この間の弾丸旅行で大体わかっているつもりだ。

 さらに普通なら異性の隣人を旅行には誘わないと思われる。

 だがあの桜の本は、そう言う本だった気もする。

 近所付き合いがいい人は幸福度が高い的な論文を見た事があるが、それは逆で近所に友人がいる時みたいな感じだった覚えがある。

「すこし分からないんですが、友人は寝坊した友人を起こすものなのでしょうか」

 それは主人公が寂しかったからと返すべきなのだろうが。

 ただそれを分かって聞いてきているのだとすると。

「同姓の友人でも家まで起こしにいくのは稀かと。今はスマホがあるのでメッセージを送るくらいですかね。ただ漫画やアニメだと異性の幼馴染が起こしにくるシーンはよく見かけますよ。幼馴染は友人かは分かりませんが」

「なるほど、ありがとうございます。因みに君には仲の良い同姓の友人はいらっしゃりますか」

 ああ、違う、これは違う。

 何かが違う。

 多分、これは仲の良い男友達はいますか? ではなくて、同性愛者ですか? と訊いてきてる気がする。

「いえ、最近は全然。高校生の時にお付き合いしていた女性とは進学して別れましたし、大学では2、3回付き合ってすぐ別れた程度ですかね」

「経験豊富なんですね」

 貴女よりはねと、言いたくなったがこらえる。

 知人の、事故で記憶障害を患ったクリエイターが知らないうちに8股していた話や。

 何かに憑かれているせいで、付き合った人間の女性が必ず変死する知人に比べたら、経験豊富ではない。

 あくまでも自分は一般的で平均的で普通だ。

 貴方の恋バナを聞かせてください、と顔に出している緑川若葉。

 それに、もう眠いんです、と顔に出して返事をすると、解放して貰えた。


 翌日メッセージの音で目が覚めた。

 若葉さんからのおはようのスタンプ。

 そう言えば旅行時に連絡先を交換したんだった。

 メッセージがなかったら遅刻していた。

 ありがとうのスタンプを押した後に、いってきますのスタンプを押した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ