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おとなりの文学淑女  作者: シルヴィア・紫の夜明け


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10/11

喫茶店の本

 インターフォンに起こされた。

 時刻はまだ午前五時。

 日が昇り始めた時間だが、まだまだ暗い。

 はた迷惑な隣人だなと思い玄関のドアを開けると、想定通り緑川若葉が立っていた。

 本を携えて。


 今日は大分冷え込んでいて、彼女は薄手のコートを着ていた。

 彼女のが抱えていた本を確認した後、一旦部屋に戻りコートを羽織って外に出る。

「おはようございます」

「ええ、おはようございます。それじゃあ行きましょう」

 別に何処へ行くという訳でもない。

 ただのコンビニデートで、ウォーキングデートだ。

 彼女が今日持っていた文庫本に表紙には、カフェオレのような茶色とミルクのような白の間に、正方形のテーブルと座席が書かれていた。


 100mにも満たないコンビニまでの距離をふたりで歩いていく。

「手でもつなぎますか?」

「いえ、そこまでしてもらわなくて大丈夫です」

 断られると思ってかけた言葉の予定調和。

 これが心の平穏を生んでいるのだろうか。


 コンビニでレギュラーサイズのコーヒーをふたつ買い、砂糖とコーヒーフレッシュをふたつずつ貰った。

「どちらで飲みますか?」

「今日は喫煙されてる方もいないので、外で飲みましょう」

 彼女の言葉を聞いてからカフェマシンの前でコーヒーを混ぜ、ゴミを併設された小さなゴミ箱に入れた。


 もう十分は過ぎているのに空は明るくはなかった。

 雨の匂いも感じず、ただ暗くて肌寒いだけ。

 ふたりコンビニの端で横並びで、冷たい空気と共にコーヒーを味わっていく。

「料理しないんですか?」

「出来なくなったんです」

 昔は出来たかのような口ぶりだ。

「理解しているのに体が動かない感じですか?」

「あなたとの会話が楽すぎてそれに甘えてしまいそうになります」

「ただ知人に恵まれているだけですよ」

 知人たちは恵まれているとは思えないのだろうが。


「パンでも買ったらどうですか?」

「焼いてもらえますか?」

「いいですよ」

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