第3話 呪われし乙女たち
「……ここが、食堂です」
エリアが扉を開けると、そこには優雅にティーカップを傾ける一人の女性がいた。
「あら、エリアさん。それがセレンさんが言っていたお客様かしら?」
ゆったりとした動作でこちらを向いたのは、驚くほど美しい女性だった。
透き通るような肌に、慈愛に満ちた瞳。彼女がそこに座っているだけで、食堂が神聖な聖堂であるかのような錯覚に陥る。
「……あ、あの、はじめまして。アルトです」
アルトが緊張で身を強ばらせながら挨拶すると、彼女――リーゼロッテは、花が綻ぶような笑みを浮かべて立ち上がった。
「アルトくん……なんて可愛らしい。ふふ、まるで迷子の子猫さんのようですわ。わたくしはリーゼロッテ。……あぁ、そんなに怯えないで。今まで辛い思いをなさいましたわね? もう大丈夫ですよ。この私が、あなたの心も体も、隅々まで癒して差し上げますから」
そう言って彼女が歩み寄ると、アルトの鼻腔を甘く高貴な香りがくすぐった。
彼女の細く白い指が、アルトの頬に残ったロイの殴打の跡を、壊れ物を扱うように優しくなぞる。
「……こんなに綺麗な顔に傷をつけるなんて。……全く、その男は万死に値しますわね(ニコッ)」
「ひっ……!?」
温かい笑顔が、凍てつく笑顔に変わる瞬間を目撃して、アルトは震え上がった。
「おいおい、リーゼの『悪い癖』が出てるぞ」
後ろで肉を食らっていた大柄な女性が苦笑しながら言った。
「……アルト、逃げて。……食べられちゃうかもよ?」
同じテーブルでケーキをついばんでいた眠たそうな顔をした女性がボソリと呟く。
「まあ、この子を食べそうなのはあなた方ではなくて?ガルザ?ルネ?」
「そりゃ、オスとして食っちまうって意味かい?なぁ、エリア?」
「……し、知りません!」
顔を背けるエリア。その様子を見てガルザは微笑む。
元帝国軍隊長ガルザ――。190cmの巨体に、男顔負けの鋼の筋肉を搭載した屈強な戦士である。
浅黒い褐色の肌に、乱暴に伸ばした赤黒い長髪が、まるで炎のように彼女の背中を覆っていた。
そして、彼女の胸板にはこれまた豪勢な物体が乗っていた。彼女の装備はビキニアーマーであり、その豊満ぶりがいとも簡単に観察できた。
「これがセレンの言っていた解呪スキルを持つ子どもねぇ……?あたしにはただのひよっこにしか見えないけど?こいつが本当にあたしらの呪いを解けるのかい?」
「の、呪い……ですか?」
「そう……。私たちは竜貴族の呪いを受けた者……。呪いを解くためにセレンのところに来たんだ……」
ぼそぼそと喋るのは天才魔導士ルネ――。薄紫色の髪を長く伸ばした、眠たそうな顔をしている魔法使いである。
彼女は群青色のローブで身体を包んでいたが、前側は空いており、その隙間からコルセットに支えられた豊かな双丘を覗くことができる。
「アルトくんは竜貴族の使う呪術魔法を知ってるわよね?決して常人では解くことのできない邪悪な呪いを……」
聖女リーゼロッテ――。薄い絹の衣服をまとった緑髪の美女である。
彼女はどこか神秘的な雰囲気をまとった女性であり、その額にはめられた月桂冠をかたどったリングからも、世俗の人間ではないことを直感させた。
また、この屋敷の住人の中で、リーゼロッテが最も巨大な乳房を持っていたことも、見逃せなかった。
「わたくしたちはこの地を荒らす竜貴族と戦い、みんな呪いを受けてしまったの。ほら、ここに痕があるでしょう?」
三人とも、髪の毛をたくし上げ、背中を見せた。確かに、傷跡にも似た赤黒い痕がある。
「竜貴族の呪いは人を病気にし、最後には枯れ枝みたいにしちまう。ま、確実に一年以内にはお陀仏だな」
「そう……。だから、人類はずっと竜貴族には辛酸をなめ続けてきた……。ふわぁ……」
「セレンさんが言うには、あなたにその力を無効化する力があるというのですわ。つまり、【聖なる紋章を受け継ぎし解呪】のスキルならば……」
「ぼ、僕にそんな力が……!?」




