第14話 ガルザの特訓
「よし、アルト!さっそく戦闘訓練を始めるぞ!厳しい訓練だが、ちゃんとついて来い!途中離脱は許さないからな!」
「は、はい……」
今日はガルザに己の腕を鍛えてもらう日だった。
屋敷近くの森にちょっとした訓練場があり、ここで戦士たちは剣術を磨くことができる。
だが、アルトは疲れた目をしていた。まるで徹夜でもしたかのようである。
(き、昨日はルネさんにたっぷり搾られたから……体力が残ってないよ……!)
昨日は一日中お楽しみだったのだ。だが、元帝国軍隊長は訓練生の個人的事情など配慮してくれない。
疲労困憊のアルトに過酷なスパルタ式特訓のフルコースを味わわせて、少年の足腰が打ち砕かれるまでしごきにしごきまくった。
「どうしたアルト!竜貴族と戦った時のお前は、もっと凄かったぞ!あたしの胸をときめかした、あの時の迫力ってもんを見せてくれ!」
(か、解呪はあくまでスキルで、体力は全然関係ないんだよぉ……、ガルザさん、無茶言うよなぁ……)
満身創痍になりながら、アルトは心の中で愚痴をこぼす。
だが、それでもアルトはなんとか最後の訓練まで持ちこたえた。ガルザ式ハードレッスンの最終課目は――?
「もちろん、実践だ。アルト、あたしと一騎打ちしろ。もちろん寸止めだが実戦のつもりで全力で来い!お前の全てをあたしが受け止めてやる!」
ガルザはアルトと同じ身長くらいのロングソードを構え、その切っ先を少年の方に向ける。
さすがは帝国の猛将と恐れられただけのことはあり、周囲の空間が歪むほどの覇気が漏れ出ていた。竜貴族とはまた違った、より野性的なプレッシャーが、少年の肝を冷やした。
(……僕に勝ち目なんてないんじゃないかな?)
アルトはあくまで解呪スキルを持ったひ弱な少年にすぎない。腕っぷしの方は貧弱と言わざる得ないだろう。
だがしかし、アルトの目に不可思議なものが映った。
(あれ……?これは……竜の呪い?でも、おかしいよ。ガルザさんの呪いはこの前消したはず……)
ガルザのロングソードに、禍々しい黒炎がまとわりついていた。その見ているだけ背筋が凍るような不快な感じは、まさしく竜貴族のそれである。
「行くぜ――!アルトォ!」
ガルザは大地を踏み、一直線にアルトに切りかかる。大地が揺れ、周囲の木々がざわついた。
しかし、アルトは冷静に呪いだけを見て、ガルザの強靭な剣戟の一振りを、ほんのわずかな体の反りで躱す。風圧がアルトの背後の高木に傷をつけた。
ガルザは巨岩を素手で屠るだけの怪力の持ち主である。食らったら一たまりもないだろう。
(ここは、こうすれば――!)
アルトは大ぶりのガルザの隙を狙い、一秒にも満たない速度で解呪の術式を展開する。竜の呪いは半分ほど解け、それと共にガルザは身をたじろがせ、頬を紅潮させた。
「ひぃん――!!せ、戦闘中に、それは卑怯だぞ!」
解呪に伴う副作用である――!
ガルザは普段のハスキーな声からは想像もできないような、甘く艶やかな声を漏らした。
(あと半分は、こうだ――!)
アルトはもう片方の手で術式を展開し、闇に犯されたガルザの長剣の残り半分に秩序をもたらす。
ガルザはついに剣すら持てなくなり、両肩を抱いて、地面に座り込んだ。
「ひっぐぅうーーーっ!んんっ!!はぁ、はぁ……!」
彼女の鋼のような硬さを持つ筋肉は弛緩し、乙女の柔肌のようになり、汗ばみ、蒸気を放ち、ひどく熱っぽくなっていた。
悩ましく開かれた口からは劣情を孕んだ吐息が漏れ、凛とした森の空気に、発情した女の色気を足していた。
「か……勝っちゃったのかな?僕、なんにもしてないんだけど……」
敵は武器を放棄し、戦闘意欲を消失している。アルトは武器の一振りすらしていないが、ガルザを退けたのだ。
「あ、あの……ガルザさん、この剣は……?」
アルトが地面に落ちた長剣を拾い上げると、ガルザが息を整えながら話し出す。
「……その剣は、帝国軍時代に竜貴族から奪った戦利品だ。まさか、剣にまで呪いが侵食していたとはな……」
「ええ!?そ、そんな危ない代物を使ってたんですか……!?」
「いいか、アルト?戦士ってもんは、強力な武器には惹かれるもんなんだぜ?目の前にご馳走並べられちまったら、かぶりつきたくなるってのが戦いを生業にする者の性分だ!」
古より呪われた武器の罠に嵌る冒険者が多いのは、こういう性癖のためなんだろうな、とアルトは思った。
「アルト……。勝負は、あたしの負けだ……。掟通り、勝者の言うことを聞いてやるよ」
「そんなルールなかったですよ!?」
「あたしの一族じゃあ、勝者の言うことを聞くのが敗者の誇りって教えがあるんだ。特に、女が男に負けた場合はな――」
ガルザはそう言って、まだ熱を帯びた体のまま、座り込んだ状態でアルトを自分の胸元へと引き寄せる。
アルトはビキニアーマーの硬い金属の冷たさと、その奥にある柔らかい乳房の弾力を己の頬で感じ取った。
「……さっきの続き、してくれよ。その、お前の力でさ……。まだ、胸の奥が熱くて、たまらねぇんだ……」
「ガルザ……さん……!? ちょ、ちょっと、近すぎますって!」
アルトの狼狽などどこ吹く風。ガルザはアルトの細い腰に逞しくもしなやかな腕を回し、逃げられないようにがっしりとホールドした。
「恥ずかしがるな……。今のあたしは、お前の所有物みたいなもんだ。……ほら、ここだ。まだこの奥に、あいつらの嫌な冷たさがこびりついてやがるんだ……。あたしのこと、熱くしてくれよ……」
ガルザがアルトの手を取り、自らのビキニアーマーの隙間、心臓に近い豊かな膨らみへと導く。
指先から伝わるのは、激しい戦闘による鼓動と、解呪による異常なまでの発情した熱量――。
「……っ、ふぅ! あ……アルト……!」
アルトの指が肌に触れた瞬間、ガルザは背中を大きく反らせ、喉の奥から震えるような声を漏らした。
鋼のように鍛え抜かれた彼女の腹筋が、快感に耐えるように細かく波打つ。
「あ、熱い……! アルトの力が……あたしの中を、めちゃくちゃにかき回して……。あぁ、これじゃ、戦士として……使い物にならなくなっちまう……っ!」
強気だったガルザの瞳が、涙を浮かべて潤んでいく。彼女はアルトの首筋に顔を埋め、野生動物が甘えるように、荒い吐息を吹きかけた。
「……もう、離さねぇぞ。お前はあたしをここまで乱れさせた。なら、最後まで面倒見ろよな……」
ガルザの指が、アルトの衣服の裾から中へと滑り込む。訓練場という開放的な空間で、最強の女戦士が少年に完全に屈服し、貪るようにその力を求めていた――。




