↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/16

第10話 神速のアルト

「アルトばっかりにいい恰好させるかよッ!!」


先陣を切ったのは元帝国軍隊長のガルザであった。


大地が割れるほど脚に力を込め、ロングソードを構えたまま、一気に飛翔する。彼女もまた鋭い弾丸となり、プラトスの真正面へと臆面もなく突撃する。


ドガァアン――!


音速を超えた物体同士の衝突で、辺り一帯にソニックブームの衝撃が行き渡る。


「うぐぅ……!わ、私の翼が……!」


プラトスの右の翼の付け根に、大きな切り傷がつけられていた。飛翔能力を失ったプラトスはあえなく墜落し、片膝をつく。


「ルネ!相手は手負いよ!一気に片づけて頂戴!」


「わかってるよ……!セレン……!」


ルネが長い杖を掲げ、瞳を鋭く光らせた。


「……ハァアア!!神の雷(いかずち)よ!!あの不浄なる者に裁きを!!……神罰雷撃(レーヴァテイン)!!」


一瞬、空が咆哮したかに見えた。それは天空より下りし大いなる雷(いかずち)であり、光の濁流となって、プラトスの頭上に落ちたのである。


「グァワアアア!!!」


竜貴族は一塊の光となって、その分厚い鱗の奥まで焼かれた。稲光は完全に地面に吸収されるまで、プラトスの周りで暴れまわり、彼の周囲に猛々しい電撃を轟かせた。


「や、やりましたの?」


聖女リーゼロッテが、煤となった竜貴族を見て、言った。辺りには焦げた匂いと死臭が混じった不愉快な匂いが漂っている。


「……いえ、まだよ……!」


刹那、プラトスは開眼し、妖しい光を放つ黄色の目で、憎きフェフシュタイン嬢を捉えた。


「せめて……お前だけでも地獄に連れて行く……!クワッ!!」


プラトスは口から小指サイズの鱗の弾丸を放った。弾丸の射線は、セレン・フェフシュタイン公の心臓に目掛けて、音速以上の速度で向かっていく。


(セレンさん――!!)


アルトは時間が緩慢になるのを感じた。彼の時間間隔は人のそれを逸脱し、あらゆる物体が遅く見えた。しかし、アルト自身は、その中で高速で動くことができるのである――!


(セレンさんは僕が守る!!僕はもう大切なものを失わないって……決めたんだ!)


アルトは弾丸に相対し、解呪の術式を刻んでいく。


アルトの指は神聖な光を帯び、指の動きの一つ一つに、この世界の理(ことわり)を書き換えるほどの、神の力のようなものが込められていた。


(こんな術式、僕だって知らない!でも、指が勝手に動く――!)


アルトの指は自動操縦(オート・マタ)だった。彼の預かり知らぬ偉大な何かが、少年を動かしている。


(で、できた――!)


それは、見た事も聞いたこともない謎の神秘言語だった。たった六文字のそれは、頭で理解はできぬが、心の奥底ではその意味が理解できるような気がした。


「……うっ!!」


時は通常の状態に戻り、アルトも復帰した。


プラトスの放った弾丸は、完全に跳ね返され、逆に彼自身の心臓を貫いていた。


「グワッ!!!」


「な、なにが起こったの!?」


セレンはこのコンマ一秒にも満たない間に何が起きたのか、まったく理解できずにいた。


確かにプラトスはセレンを狙った。なのに、今ではプラトスの方が弾丸を食らっている――!


「クソ……!この私が……!私の理想国家が……!おのれ人間め……!下等生物のくせに、私の命を奪うなど……許せん……!」


プラトスは血走った眼でアルトたちを睨み、その長い腕で宿敵を捉えようとしたが、遂に絶命した――。


プラトスの巨体が、地響きと共に地に倒れ、物言わぬ肉の塊へと変わった。かつてこの地を恐怖で支配し、アルトの故郷を奪った不倶戴天の敵の最期である。


辺りには静寂が訪れ、プラトスの死体から漏れ出した黒い霧も、アルトの放った【極光浄化(アニマ・ルクス)】の残光に触れて、雪のように白く浄化されて消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。