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第48話 鎖

 ※年齢制限のため衣服の描写は避けます。


 魔物の襲撃を掻い潜った俺達は憩いの時間を過ごしていた。


 ここはギンガの私室。

 俺はベッドに女の子座りをするギンガの前で固まっていた。

「シコル・ギウスご主人様? ギンガの鎖、受け取って?」

 俺の目の前には首輪をつけたギンガが居る。そしてそこから延びる銀の鎖を手にしたギンガの右手が俺に迫る。

「ちょ、ま、ちょま、ちょっと待てくれ。これはどういうシチュエーションだぜ?」

「シコルが私のご主人様で、この紐メイド服を着たイケナイメイドをお仕置きするシチュエーション。シコルはこの鎖を受け取って私を蹂躙するの」

「それはわかる。それはわかるんだぜ。なんでそうなるんだぜ?」

「シコル。自分の顔を鏡で見る? シコルはそれを求めている。私にはわかる。だってあなたの妻だもの。アナタのギンガを蹂躙したいって顔に書いてある」

 俺は自分の顔に手を触れるとその熱が感じられる。確かめるまでもない。女の子座りで鎖を手に前かがみになるギンガの姿に興奮しているのは自分でもわかる。

 だがそれでも自分を落ち着ける様に自分の顔を撫でる。

「・・・それはわかるぜ。けどな、俺はギンガを傷つけない。首輪に鎖付きなんて危ないぜ。それを・・・」

 俺がギンガに向き直ると、その言葉が終わらないうちに俺の左手にギンガの首輪の鎖が巻き付けられた。

「どうシコル? 私を所有した感想は?」

「ス、凄ク良イデス!!! じゃないぜ。こんな・・・」

「んッ・・・!」

 俺が無意識に左手を下ろしたせいでギンガの首が下に引っ張られる。

「すまねぇ! やっぱ危険じゃねぇか?」

「駄目。ちゃんと持っていて」

 俺はギンガの言葉で鎖の巻き付いた左腕を危なくないように高く上げる。するとギンガは両腕を上げて頭の腕組んだ。腕が持ち上げられ、それに沿う様に胸の形も変わっていく。俺の握る鎖がギンガの胸の谷間に吸い込まれていく。俺は軽く鎖を引いて谷間に鎖が埋まるのを防ぐ。

 そして垂れ下がっていただけの鎖がピンと糸を張るように伸ばされる。

 それは図らずも両手を上に上げたギンガを鎖で引き寄せようとするような錯覚を覚えた。

 そこにギンガの声が響く。


「シコル。引き寄せたくなった?」

「・・・」

「シコルの視線は何処を向いてもいい。私はシコルのギンガだから」

「・・・」

「私の視線が気になるなら、目隠しをしてみる?」

「め、目隠し!?」

「そう。私の視線をシコルが奪って、自分の物にするの。私は五感をシコルに奪われて、全てがシコルの所有物になるの。

 それともあなたを惑わすこの言葉もあなたの物にする? 目隠しと口枷で私は完全にシコルの所有物に成り代わる」

「く、く、く、口枷ぇぇぇ!?」

「そう。口答え一つできないあなたの所有物をあなたの好きにしていいの。私はあなたのギンガだから」


 俺は無意識に、いや意図して左腕を引っ張ってしまった。そしてバランスを崩したギンガが俺の上に覆いかぶさる。俺はギンガの鎖を握りしめながら、ギンガに押し倒されてしまった。


「シコル。私のご主人様。あなたの心を聞かせて? あなたは自分の所有物である私をどうしたい? 私はあなたのギンガ。あなたの望みは私の望み。シコルの心を私に聞かせて?」

 俺は左手を上げると、鎖の先を自分の首に巻き付けた。

 意外そうな顔をするギンガに俺は笑って答える。

「俺は、これがいいぜ。所有者とか、ご主人様とか、そういんじゃなくて、俺はギンガの隣がいい」

 ガッ、と鎖が掴まれた。俺が自身で首に巻き付つけた鎖が引かれ、顎が上がってしまう。

「シコル。シコルシコルシコルシコル」

 俺は鎖が引かれてギンガの表情が見えない。ただ俺の名前を呼び続けるギンガ。

 それが終わると荒い息をしたギンガが俺を鎖でベッドに引き倒し完全にマウントを取ってくる。

「ハァハァ、シコル、あなたを壊したい。殺して、殺されたい。全部滅茶苦茶にしてなにもかも壊したい」

 荒い息のままギンガが俺の耳元で囁く。ギンガの左手が俺の頬を撫でる。それでもギンガの唇は何処にも触れなかった。そのままギンガの言葉は続く。

「それでも、私はあなたを守る。私からもあなたを守る。

 こんな約束しなければ良かった。でもこれが心地よくて気持ちいい」

 そしてギンガは荒い息を吐き切ると言葉を続ける。

「私のシコルへの思いは一体何なの? 愛を超えたこの思いは一体何? シコルとなら一線を超えられる。このまま交わって一つになっても構わない。妻としてあなたの子を孕んでも私は構わない。それ程までに一つになりたい。この境界を消し去りたい」

 クッ。ギンガが色々言っているが、そんな事よりもギンガの発情した体のせいで俺の心と体から何かが生えそうだ!

 俺はゆっくりとギンガの体を抱きしめる。

「離さないぜ。俺達はもう夫婦だからな。ギンガが望む事を聞かせて欲しい。ギンガは俺が男に戻ることを望んでいるのか?」

 ギンガは俺の抱擁から逃れると俺と目を合わせる。


「シコル。それはない。気分の問題」

「ソーナノ!?」

「そう。それぐらいにシコルと一つになりたい。寧ろ私はシコルの子供になって生まれたい気分」

「ドウイウコト!?」

「だからそういう気分。実際にどうこうじゃない。シコルはシコルのままでいい」

「さっき、俺スゲェ悩んだんだけど」

「その心が引き出したかった。シコルが私を蹂躙しないから。シコルが私を苛めて悦んでたからそのお返し。多分そういう事。そんなに私を屈服させたくないの?」

「苛めてないだろ」

「私に恥をかかせて悦んでた」

「違うって。俺だって俺からギンガを守ってたんだっての。一線超えてギンガを傷つけて悦ぶ変態にはなりたくないっつーの」

「私は構わないのに。シコルがずぶずぶに自分に溺れていく、じゃない。私に溺れていく様を楽しみたかったのに」

「・・・俺を苛めているのはお前だろ」

「でもシコルの心は望んでいた。私を滅茶苦茶にしたいって」

「それは、否定しないけどよ。二人の時間ってのは二人を大切にする時間だろう? 傷つけあってちゃいつか壊れちまうよ」


 俺の言葉にギンガは目を丸くしていた。


「シコル。シコルシコルシコル」

「またかよ!?」

「違う。シコル大好き。いまシコルで私が満たされた。さっきのはシコルが私に満たされていなかった。

 うん。シコルの言った二人が大切にしあう時間。これが今わかった」

「だろ? 行き過ぎた行為なんて必要ないぜ。俺達は、愛し合ってるだけで、ただその時間を共有するだけで幸せなんだからな」

 ギンガが微笑む。その信用しきった心からの笑顔に俺の心がドキッと動く。いつでも、いつまでも、俺はギンガが好きなままなんだな。

 だが次のギンガの言葉でそれは打ち砕かれる。

「でも私は諦めないけど」

「ナンデ!?」

「シコルへの復讐が終わってないから。絶対に私を屈服させて見せる。私を蹂躙して貶めて悦に入るシコルを味合わせてあげる」

「ソンナノイラナイヨ!?」

「今はまだ。時間はたっぷりあるもの。シコルの知らないシコル・ギウスを見せてあげる」


 ヤレヤレ。悪戯っぽく笑うギンガの顔に俺は自分の顔を擦り付ける。

 鎖はまだ繋がったまま。

 俺達はその繋がった時間と体をいつまでも楽しんでいた。


ーーー


「これがそうなのか?」

 今俺はゼロスの私室に居る。

 前の晩、俺とギンガは夜通し語り合って昼まで寝てしまった。それを訝しんだゼロスが何があったか知りたがったんでいまここに居るという訳だ。

 案の定首輪を手にしたゼロスは訝しげだ。

「だから毎回言ってるだろ。俺とギンガだから通用するって領域があるんだよ。俺とゼロスでやっても合わねぇっての。

 お前が首輪プレイをしたいなら別に俺は付きあうぜ?」

 それでもゼロスは訝しげだ。やっぱりこいつも首輪はお気に召さないらしい。

「ギンガが首輪をつけて、お前がその手綱を握って自分の首に巻いたのか?」

「そうだぜ。主従よりも隣がいいってな。首輪付きギンガは確かにエロかったけどな。ゼロスもやりたいか? 俺が首輪をつければいいだろ?」

「俺はそういう趣味はねぇな。そもそも拘束してたら自由に動けねぇだろ」

 ゼロスの言葉に俺は頷く。こいつは激しいから動きを制限する系は逆に、いや言葉通りの足枷に感じるだろう。

「だろ? 拘束系は俺の性癖をギンガが見抜いただけだぜ。

 おっと、俺は男を拘束する趣味はねぇぞ。鎖でつないでプレイなんてのもなしで頼むぜ。俺の首が折れちまう」

 俺の言葉にゼロスが頷く。

「そうだな。今回は流石に俺達で使うって事は出来そうにねぇな」

 そう言いながらもゼロスは首輪を自分に付ける。

「もしかして目覚めちまったか?」

 俺の言葉にゼロスは鎖を見つめて言葉を返さない。

 おいおい。まさかのゼロスがそういう趣味だったのか?

 俺の心配を他所にゼロスは鎖の先端を俺に向ける。

「わからねぇが持ってくれシコル。なにか掴めそうだ」

 うっ。俺は一瞬躊躇ってしまう。この構図はまさにギンガの時と同じだ。これを掴んでいいものか。

 ゼロスを見ると別段いつもと変わらない。

 だが俺が鎖を受けとるとゼロスの態度が豹変した。そのまま俺をベッドに押し倒すとマウントで話しかけてくる。


「俺を従えた気分はどうだご主人サマ。俺を手に入れた気分は?」

 ぐお!? ゼロスめノリノリだな。こういう感じかよ。

「下僕がどうして上に居るんだよ」

「俺がご主人サマにご奉仕できねぇからな。それでどうだ? 俺の乗り心地は?」

「乗ってるのはお前だろうが! 流石にこれは想定してなかったぜ。ゼロスが俺の所有物になるなんて怖すぎて遠慮したいんだが」

 これもギンガの真似か。男を所有物にする趣味も俺にはないぞ。

「遠慮するなご主人サマ。何が欲しい? 金か? 女か? 世界か? 俺なら何でも手に入る。この世界をお前の物にもできる。この世界の王として君臨したくはないか?」

「お前それ下僕じゃなくて悪魔か魔王じゃねぇか! 俺が世界を手に入れてどうするんだよ。今でさえコミュ障だっての。女王様なんて柄じゃないぞ。王になりたいのはお前じゃないのかゼロス?」

「俺もそんなものは要らねえ。だがシコル。お前はどうだ? お前が望むのならこの世界を牛耳ることだって可能だぜ? その力が俺にはある。全てが思い通りになる世界だ。お前の体も自由自在だ。酒池肉林を楽しむこともできるようになるぜ?」

 ? なんだゼロスめ。そういう事かよ。

「それこそいらねぇよ。俺はお前の妻でアレシスの母親だからな。ギンガもそれを望んでくれた。俺は俺のままでいい。今の俺がシコル・ギウスだ。そりゃお鎮鎮を望む日もあるだろうさ。だが俺は変わらない。ずっといつまでもこのままだ」

 ゼロスは何も言わない。俺の言葉を待っている。

「俺が欲しいのはゼロス。お前だけだ。お前だけを俺は望む。金も女も世界も俺はいらねぇ。それが全部なくなっても俺と一緒に居てくれよな」

 俺は本心を全てさらけ出した。

 ゼロスが聞きたいのはこういう事だったんだろう。

「サイッッッコーーーーだぜご主人サマ!!! 俺の忠誠心が溢れ出しそうだぜ!!!」

「お前まだそれ続けるのかよ」

「こんなもん、素面で続けられるかよご主人サマ。本当に要らねぇのか? 今の俺なら何でも手に入れられるぜ?」

「いまでも十分多すぎなんだよ。これ以上は手に余るぜ。

 俺を置いていくなよなゼロス。王になりたいなら女王は別で用意してくれ。それなら俺もついていけそうだぜ」

「それじゃ意味ねぇだろ。お前が女王でなくて何のための王だ」

「だったら俺が望むもんは全てここに在るな。

 退け悪魔よ。俺達の夫婦愛の前に敗れたな」

 俺が冗談めかして言うとゼロスが俺の手から鎖を奪いとって俺の首に巻き付けた。

「おい!? ホントに折れちまうって!」

「今日はそんな気分じゃねぇな。シコルがやりたい事はねぇのか? それこそなんでも付き合うぜご主人サマ」

「俺のやりたい事ねぇ。俺は別にいつも通りで良いぜ。女の性欲なんてそんなに強い物じゃねぇしな。愛されてるって実感だけでも俺は構わねぇぜ」

 それを聞くとゼロスは自分の首輪を外し、俺に巻きつけた鎖を取り払う。

「おい!?」

「シコル。お前いつも自分がどんな顔をしているか知らねぇのか?」

「うっ」

「だったらお望み通りいつも通りだ。ご主人サマの忠実な下僕のご奉仕タイムだ!」

 ヤレヤレ。いつも元気な俺のダンナ様だぜ。


ーーー


 次の日の俺はギルド本部の受付嬢としてぐーたらしていた。

 俺の日々の夜の営みは俺の想像以上に疲弊をもたらしていたらしい。朝の朝食で受け答えのオカシイ俺を見てアレスのドクターストップがかかった。

「これ以上するのなら僕がシコルさんを隔離しますよ」

 珍しいアレスの怒りの表情にゼロスとギンガも思う事があったらしく、俺はしばらく休養。俺も平気だと思っていたが、どうにもそうでも無い様だ。


 そこにシマリルギスの三人がやってくる。

「あれシコルじゃない。今日は何かあるの?」

 マギカが無遠慮にやってくる。

 今じゃこの第072冒険者ギルド本部はたまり場になっている。特に意味のない喋り場。喫茶店や図書館のように使っている使徒が居る。仕事は二階だ。ゼロスが二階でギルドマスターとしての業務をこなしている。その他会合もここだ。

 一階はラウンジ以外は俺の居る受付嬢用のスペースのみ。この奥は罠が仕掛けられたダンジョンと化している。面白半分で強化していった結果、一戸建てから階層式のダンジョンにまで成長している。仮にこの『072』が落ちてもこの第072冒険者ギルド本部は相当の事がないと落ちないだろうな。


「いや、今日は休暇、しばらく休暇だな」

「シコルが疲れるなんて何があったの!?」

 驚くシルド。俺が夜の営みだと答えると顔を赤らめて頷いた。この辺はまだ進展していないようだな。

 ぐったりと受付嬢カウンターに突っ伏す俺をシルドとマギカが上から頭を撫でてくる。マギカは1th元地下ダンジョンから脱出した時に俺の髪を掴んだのを気にして良く触ってくる。シルドは真似しているだけだな。

 そこから一歩離れた所からリストが話しかけてくる。


「僕達はダンジョン攻略用のギルドを立ち上げようと思っているんですよ」

 聞いてみると1th元地下ダンジョンガイドのようなギルドを立ち上げるらしい。やはり初心者が最下層から登っていくのは危険だからという判断らしい。慣れた人間と一緒に中腹から。

 ダンジョンに潜ってみたいもののメンバーが揃わない事は多々あるだろう。それの解消のようだ。既存の使徒と言うよりもチルドレンの場所になるだろうな。


 ここ072も変わっていくな。俺達のスローライフはそう遠くないのかもな。

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