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第47話 最終日冒険者

 俺達三人、俺、アレス、ギンガは炎に包まれる072でゴブデロと対峙していた。

 ワープしながら瞬間火力。しかも多段だ。バリアなどはすぐに破られ攻勢に出られない。そしてゼロスの言う通り、ワープのパターンは読めないほどじゃない。

 だが、ワープを見越してゴブデロの出現位置にヘカトン対物ライフルを食らわせると、魔物バリヤーで防がれる。しかもこれはゴブデロ自身の魔物MP強化から生み出された強化バリヤーだ。一発では抜けない上に再展開される。やはりゴブデロは魔物MP注入なんて特殊スキルを持っているんだ。名前付きの二つジョブ持ち。サイキック系とヒーラー系の合わせジョブだろう。

 近接するのが難しく、射撃は防いでくる。俺達が対峙しているからこそ街自体の被害は流れ弾程度で済んでいる。ゼロスが仕留めきれないと言っていた理由が知れて来たな。

 アレスのサンクチュアリアタックも、強引に攻めればサイキック技を連発して目くらましにして逃げてしまう。地味に大きさがゴブリンサイズなのが厄介だ。

 ギンガも聖剣でのサイキック技を無効化しながら近づくのだが、弾が多い上にワープもある。正面から潰すのは厳しい状況だ。

 ゴブデロ相手に短期形態進化は意味がないだろうな。俺のサイボーグENレーザーも対策をしていないとは考えにくい。余程の不意打ちでないと決まらないだろう。

 仮にアレスの勇者の鼓舞で一時的に最適状態になったとしても(第40話 ライドレール参照)トドメを刺すビジョンが見えない。現状使っても無意味だろうな。

 

 俺はヘカトンで繋いだ二人に話しかける。

「アレス。奴を倒すにはやっぱり連携技だと思うか?」

「ですが難しいでしょうね。シコルさんはなぜゴブデロがワンパターンなワープを繰り返していると思いますか?」

 なるほど。あのワンパターンはわざとか。

「破られない自信があるからだな」

「そうです。このままなら勝ち格。このパターンを崩さないでしょう。そしてこちらの連携技は一度切り。それを外せば読まれてゴブデロの勝利は盤石になります。あのワープパターンは間違いなく誘っているでしょう」

 実際俺達は決まりきったロジックで戦っている。ゴブデロがそれをついて反撃してこないのがその証拠とも言えるな。

 そこにギンガが提案を出してくる。

「可能性の話だけど、もしも聖剣が多く出せれば対処できるかもしれない」

「どういうことだ?」

「今は一本だから打ち負けているけど、これが多くなればそれだけ倒せる可能性はでてくる。ただそれを生み出せる私のMPがまるで足りてない。シコルの聖母の力で出来るだけ多くの聖剣を生み出したいけど、どう?」

「実際何本欲しい?」

「正直六本は欲しい。それなら逃げられても追撃できる」

 そうか。なら聖母のMP強化塔の使い道はここか。俺が使ってもトドメはさせないからな。トドメはどうしてもギンガの聖剣の、神の理さえも無効化できる力が必要だ(第39話 ダイアグラス参照)。

「アレス。勇者の鼓舞を使ってくれるか? 俺じゃなくてギンガに」

「わかりました。準備が出来たら言ってください」

「なら今だ。その後しばらくゴブデロを頼む。俺達は聖剣の鋳造だ」


 俺達は少し離れた狭い路地でMP強化塔を出す。こいつは攻撃を食らうと能力が激減してしまうからな。それを全力でギンガに流し込む。

 取り合えず一本、ギンガの手から聖剣が生み出される。

「シコル。そこまで私を信用しているの?」

「ああ。ギンガの強さは俺達が一番よく知っているからな」

 二本目が生み出される。

「私が、シコルに憎しみを抱いていても?」

「ああ。ギンガはそんなことお構いなしに俺達に応えてくれる」

 そして三本目。

「私がシコルを独り占めするためにこの状況を利用するかもしれない」

「ギンガは言ってくれただろ? 自分からも俺を守ってくれるって」

 四本目。そろそろMPコンバータ塔がヤバいな。

「シコルはそこまで私を信じて怖くないの?」

「俺は全部お前に賭けるぜギンガ。俺の全部だ。ギンガに賭けているんだ何も怖くないさ」

 五本目。マズいな。ギンガよりもMP塔がマズいな。

「スマン、ギンガ。お前よりもMP強化塔がヤバイ。六本目は無理かもだぜ」

「わかった。六本目は保険だったから。いまはもうそれも必要ない」


 そこにゴブデロが現れた。俺達が居ない事に不審を感じたのだろう。

 ギンガは聖剣をジャグラーするとゴブデロに迫る。

 連射されるサイキック技を悉く消していく。そして一閃。投げつけられた聖剣がゴブデロの右肩に。その瞬間ギンガの右手から突き出された聖剣の一撃がゴブデロの左肩を貫き壁に縫い付ける。そしてジャグラーで落下してきた聖剣を、ゴブデロの右足と左足の腿に突き刺し、それも壁に縫い付ける。そして最初に刺さった右肩の聖剣もゴブデロごと壁に突き刺す。そして両手に持った聖剣でゴブデロの首を落とす。

 一瞬の出来事だった。

 成す術がないと思わっていたゴブデロが瞬殺だ。

 だがその首が消える。これは、

「ゴメンねシコル。トドメは刺せなかった」

「正直何が起こったんだぜ」

「結論から言うとこのゴブデロは聖剣対策をしていた。最初の一撃で気づいたの。何かはわからないけど、神の理を消し去ってもゴブデロは殺せないと分かった。だから二撃目で封印処置。そして四肢の封印。

 首を落としたのはわざと。首が残っていたら封印が解かれるから。そして首だけが逃げ出した。この状態なら逃げ出しても弱体化しているから問題ないと思う。

 そして・・・」

 ギンガは首無しゴブデロの首元に聖剣を突き刺す。

「これで力の供給も途絶えると思う。後は・・・」

 ギンガは聖剣で壁をくりぬく。

「シコル。壁に永続化を掛けてくれる? 後はこの体の耐久値を常にゼロにしておけば安全。どこか目立つ所に飾って標的にすれば問題ない」

 俺はゴブデロの刺さった壁に永続化をかけながらギンガに話しかける。

「これだけやって死なないのか?」

「私もこれは当てずっぽうだけど、本体は1th元地下ダンジョンのコアみたいなやつだと思う。あれを私の聖剣で貫かないとトドメは刺せない。ゴブデロは何かのイベント用なんだと思う」

「イベント終わらせないとこのままって事か」

 俺は永続化付与した壁をヘカトンで持ち上げる。

 となれば取り合えずこれは第072冒険者ギルドの訓練場でお立ち台でも作る必要があるな。周りに罠を張って常に衆人環視で、ライトアップも必要だな。

 俺達の姿に流石に驚くアレスと合流し、ギルドの訓練場にゴブデロのDPS案山子を打ち建てる。そしてスナイパーがどこからでも狙えるように位置を調整。何処からでも確認でき、削る事が出来る。

 もう衆人環視ではなく囚人の監視状態だな。これでゴブデロは一段落。後は外の掃討だな。


ーーー


 外では第三波が来ていた。

 だが大した脅威では無い様だ。第一陣はゴブデロの魔物MP注入で強化された魔物達だ。それに比べて第三陣はここに来るまでにMPを消費しきっているだろう。MPの回復は神の建造物の近くでないと回復しない。ここに着いても神の建造物である072のMP回復阻害塔は健在だ。ゴブデロ編成では完全に無視されていたが、今では有効。その上MP回復阻害塔を狙う魔物キャスターもいない。魔物ヒーラーが居た所で魔法が使える頃にはこちらの使徒スナイパーにやられているだろう。事実そうなっている。

 ゴブデロによる魔物MP注入の強化は本当に強力だったんだな。

 改めて俺の聖母のMP強化系のスキルも見直しが必要かもな。今の所個人向けに収束する方向で強化している。だが使徒が大規模攻勢をかけるなら、どこでもMPを強化できる聖母は戦闘の要になるかもしれない。アレスの短期形態進化のバフとの兼ね合いも考えておいた方がいいかもしれないな。


 こちらも疲弊しているが援軍が来たことにより形成が逆転。アレスはもとより、ギンガももう一本聖剣を生み出して二刀流だ。と言っても一本はワイヤーのような物をかけて投擲用。それだけで魔物ドームをぶち破れる。

 こんなことなら最初から用意しておけばよかったな。

 俺もヘカトン対物ライフルを使っているが鎧を纏うミノタウロスはいない。鎧無しミノタウロスにはむしろ貫通は邪魔だ。俺はいつも通りの爆発物を、魔物ヒーラーを片付け終わった所に撃ち込む。後はいつも通りの掃討戦だな。


 俺は粗方片付いたのを見るとシルド、マギカ、リストの三人の所に顔を出す。流石に疲労が見えるが達成感の方が大きい様だ。これを生き延びられたのなら、この先の防衛戦でも稼げるだろう。無理にダンジョン探索をする必要もないだろうからな。

 取り合えずの無事だけ確かめると俺はギルドフォネティックのギルドマスター黒光りするゴルフの所へ向かう。

「よぉゴルフ。あの三人を見てくれて助かったぜ」

「お。シコル。お前も大活躍だったじゃねぇか。中のボスは片付いたのか?」

「いや、トドメがさせなくて封印だぜ。ここから見えるか? 俺達のギルド本部だ」

 俺の言葉でゴルフが双眼鏡を覗き込む。

「おいおいシコルよ。アレは流石に趣味悪すぎだろ。どんだけ恨みがあるとあんなザマになるんだよ」

「違ぇよ! 倒せねぇから首から下を封印したんだ。ギンガですら殺せねぇんだ。ああするしかねぇだろ」

「はー。確かにな。あのダンジョンで殴っても死なない奴だ。これで安心ってわけかシコルよ?」

「どうだかな、首だけでワープして逃げたからな。力はだいぶ抑えられるとは思うが、魔物MP注入で強化された魔物はちょこちょこ出てくるだろうな」

「第一陣の鉄壁防御でないならマシだぜ。それでなんだ? あの三人の事か?」

「ああ。やっていけそうか?」

「問題ねぇな。流石にアレに突っ込むような真似をしないだけマシだな。それにチルドレンジョブってのは便利だな。取り合えず銃が撃てるのが強ぇ」

 やっぱりゴルフも俺と同じ意見だな。

「そろそろ基本ジョブの見直しも必要だと思うんだけどよ。ゴルフから見てなんかあるか?」

「それを言うならキャスターの魔法だな。軽減はされてたみてぇだが、魔物ドームをある程度貫通してたぜ。魔物バリアーもな。護衛としてヒーラー1とファイター1かソルジャー3だな。その価値はありそうだぜ」

「そうだよな。いつか主力になりそうだよな。ソルジャーの火力上げより基本ジョブとの連携だな」

「それになんだ、シーフの回復薬か? それにヒーラーのヒールだ。正直軽傷を治せるのはありがてぇな。今までみたいにプロテクションで受けるよりも、ヒールで動けるようにするってのもありだな。

 今まではヒーラーが実質アレス一人だったからな。チルドレンが増えてくるならヒールや回復薬の重要性は高まってきそうだぜ」

「だな。俺もあの回復薬は欲しいと思ったぜ。なんでヒーラーにねぇんだよって思ったな。ヒールは正直難しいぜ。前衛を注視するなら3人が限界って所だな。ソルジャーの回復は正直そっちから来いって感じだな。回復薬と手榴弾はソルジャーにこそ欲しいぜ」

「シリンジャーで代用するか?」

「物理の回復薬なんて、そんなもんあっても毒だろ。魔法で出来た回復薬じゃなきゃ試したくねぇぞ。俺のヒールも要練習だな」

「使えるだけいいじゃねぇか。シコルよ、お前の言っていたソルジャーの限界がチルドレンで現実味を帯びてきたぜ。サイボーグは論外として、外骨格系も試してみる時が来てるのかもしれねぇな」

「ああ。ヘカトンで対物ライフルを撃つのは良かったぜ。これから前衛が増えるんなら重火器を撃てる固定式の外骨格もありだな」

「戦車砲を撃てるあれか? 実質キャスターの魔法と変わらねぇな。それなら迫撃砲もありだな」

「今まで護衛できるジョブなんて無かったからなー。ソルジャーの立ち位置自体もチルドレンで変わりそうだな」

「違ぇねぇ。今までは重火器が棺桶だったからな。動かないソルジャーは即死時代は終わるのかもしれねぇな」

「ま、今すぐじゃねぇけどな。でもよかったぜあの三人が無事で」

「随分買ってるじゃねぇかシコルよ。気持ちはわからなくはねぇけどな」

「だろう? 新しい世代の新しい使徒だ。その第一世代だもんな。アレシスも今は何処で何をしてるのか。もう次の世代が生まれてたりしてな」

「おいおいシコル。そんなに急いでチルドレンを量産するんじゃねぇぞ。チルドレンアーミーでも作る気かよまったく。アレシスはお前に似て奥手だからな。あんまり急かすんじゃねぇぞ」

「その忠告は聞いておくぜゴルフ。ありがとな」

「おう。お前もなシコル。気張り過ぎるなよ」


 そして俺達は別れる。そういえばゴルフの思い人、聖女レディは未だ行方不明だったな。それこそアリアは何も言ってなかったが、そこはまた別の物語だろう。

 そして戦闘は終わり、俺達は新たなゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンを用意。一つ目は東側なので、次のは西側。本当は昼か夕方に別で撃ちたかったが、結局早朝にダブルゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンを撃つことになった。

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