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第46話 三日目冒険者

 それは早朝のゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンの咆哮から始まった。

 それを合図に魔物の群れが動き出す。

 俺がいつものホーミングレーザーでの掃討を始めようとした時だ。魔物の群れの各所でドームが展開される。それが俺のホーミングレーザーを通さない。

 そして次にアギトレーザーを放つ。それは流石にドームを破壊するが、盾持ち鎧ミノタウロスによって防がれてしまう。

 これはマズいな。これでは数が減らせない。なによりもここで初手の初戦で竜の吐息を使っても良いものか。それこそがゴブデロの狙いではないかと疑っている。ゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンの砲撃が終わったと同時の進撃がその証拠だ。

 このドームは魔物側の魔物ドームだろう。使徒のドームは固定で動かす事が出来ない。だがこいつらは纏ったまま前進している。同じドームでも仕様が違うんだろうな。

 そして何よりも魔物達が初戦でMPを使えていることは、間違いなく敵にゴブデロが居る。奴のスキルだかなんだかの魔物MP注入が行われているのだろう(第27話 フルフルフルプリリング参照)。魔物に強化MPを注入し、初手からMPを使え、しかも強力になる。こいつがいるせいでゴッドゴーギャンを出すわけにはいかない。下手をすると魔物MP注入でコントロールを奪われる可能性まである。

 初手で突出してくるゴブリンも何かを纏っている。アサルトライフルのワンマガでようやく壊せるバリアー。こちらも使徒のバリアーと性能が違う。使徒バリアーは全ての攻撃を防げるが耐久が低く持続時間も短い。敵の攻撃を見てから張るタイプだ。だが魔物バリアーは持続時間も耐久力も桁違いだ。先に張っておくプロテクションに近い。

 魔物ドームも魔物バリヤーも異常な程、遠距離攻撃に強い。これはソルジャー対策なんだろうが、とすれば近接に対する防御を捨てているのか? 単純に魔物MPによる強化の可能性もまだあるけどな。

 俺は銃剣を装備しながら付与を掛けていく。銃本体に貫通、バレルに銃弾氷結化、銃剣に爆発属性。

 貫通はバリアに有効、ワンマガ以内で潰せる。そしてオマケ程度だと思っていた銃弾氷結化は地味にバリアへの攻撃力が上乗せされる。バレルの発熱も防げて、当った時の感触も良い。無駄なダメージよりも銃弾が長く残る方が効果的だ。そして銃剣の爆発は使い捨てだ。魔物相手に銃剣術もクソもないだろう。命を拾う一撃にはなる筈だ。

 ようやく前座は片付くかと思われたが、まさかのゴブリンに回復魔法でさらに厄介な展開になってきた。見ていると全回復だが、俺達のリザレクションに相当する魔法をゴブリンに使うとは考えにくい。これも魔物と使徒で仕様が違うんだろうな。この魔物ヒールはおそらくだが固定値回復。体力の少ないゴブリンなら全回復だがミノタウロスには雀の涙ほどしか回復しないと見た。実際はどうだかわからないが、この大盤振る舞いならそうだろう。

 そして俺達はゴブリンに前線を奪われることになった。


ーーー


 外堀を埋められた俺達は壁の中へ。壁を越えて来た魔物達を迎撃中だ。

 魔物側はよほどこのヒーラー戦法に自身があるのか、魔物キャスターはいない。むしろ魔物の魔法は魔物自体にも当たっていた。敵味方お構いなしだったからな。この編成ではいらないんだろうな。

 ヒーラーの守りで遠距離攻撃を防ぎ、近距離が来ても盾持ち鎧ミノタウロスがいる。この布陣は崩せない。もしかしたら、072が陥落しかけたのはこの編成だったのか? これは確かにソルジャーだけではキツスギル。

 だがこちらには強力な近接攻撃ジョブが居る。

 勇者アレスと救世主ギンガだ。

 壁を越えて来た魔物ヒーラーたちを片付けている。


 アレスは完全に戦闘スタイルを変えたようだ。今までの使徒を援護する動きから自分が前に出て魔物を討ち倒すスタイルだ。ウォール、バリア、サンクチュアリを使って敵を足止めしつつ、剣と斬撃系の光波で敵を殲滅していく。実質ヒーラーの魔法が光波の衝撃の代わりだ。サンクチュアリにしても、これは魔物を吹き飛ばせるが、逆に言えば敵に抑え込まれる危険性がある。ヒーラーであれば絶体絶命だが勇者であればそこからいくらでも攻撃方法はある。寧ろ無敵を使って一方的に攻撃が出来る状態だ。押しのけた魔物達を斬撃光波で切り裂き、中型のミノタウロスは実際の剣技で打ち倒す。

 剣での直接攻撃でミノタウロスの鎧も破壊している。これは単純にアレスの技量だろうな。盾はなく、両手持ちのバスタードソード。それで中型魔物を切り裂いていく。ギンガに相当絞られていたからなぁ。それに比例して剣の腕も上がっているのだろう。そしてヒールも自身に使っている。自分の体の限界を超えた一撃を放ち、ヒールで自己回復して戦っていく。あの異常な攻撃力はそこから生まれているんだろうな。


 ギンガの方は完全にアサシンスタイルだ。

 見ていると魔物の魔物ドームは使徒を透過している。使徒のドームは動けない代わりに魔物の侵入も許さない。やっぱり別系統の魔法なんだな。魔物ドームを通過して気付かれる前に魔物ヒーラーの首を刎ねる。正直この魔物ドームのお陰でヒーラーの居場所は丸見えだ。追従する上に中心にいるんだからな。まあ、まさか魔物ドームの中央で首を刎ねられるとは思ってもいないだろうけどな。

 意外な事に魔物ヒーラーが死んでも魔物ドームは消えないようだな。それをギンガが聖剣で破壊している。だが、それ故に味方の射撃は通るが魔物のヘイトも溜まっていく。流石に警戒されていると魔物ヒーラーには近づけない。


 ここは俺の出番だな。

 空中にライドレールを敷くとリングサイボーグ足を出して、ヘカトンに対物ライフルを持たせる。空中を飛び回りながらヘカトン対物ライフルだ。言ってしまえばライドライダーだ。俺の腕で銃を撃つより、ヘカトンの太い腕で大威力の銃器を撃った方が効率がいい。空中で撃てば安定しないが、ライドレールに接地していればヘカトンの命中率は静止時と同じだ。その上ライドレール上は接地すれば自動で動く。本来なら地上で構えて静止撃ちしなければならない銃器でも、疑似的に空中で移動しながら使えるという訳だ。

 本体に貫通、バレルに初速上昇、マガジンに遅延爆発。最高に貫通力を高めた対物ライフルの一撃が、最後に爆発するという完全に魔物ドームを狙う仕様の弾丸をバカスカと撃ち込む。流石に魔物ドームは外しようがない。弾け飛ぶ魔物ドームが再展開され魔物のヘイトは俺に向かっていく。

 こうなれば寝首をかくのは楽だろう。俺に敵意を向けていた魔物ヒーラーの視線が沈む。俺はヘカトンでヒールの使用をギンガに促すと安全圏で一度足を止めるギンガ。そこに空中からヒールを山ほどかけていく。

 それで少しづつわかってくる。ヒールをすることで回復が必要な部位が見えてくるな。必要なのは足と胴体。腕はダイアグラスを操るだけだ、微塵もダメージが見られない。攻撃する時は一切の負担が無いんだな。それよりも移動に負担がある様だ。そちらを重点的に回復していく。

 ギンガの装備はソルジャーの物だ。体のラインが出るほどのぴっちりとした戦闘服。揺れや揺らぎが起きない仕様だ。シーフにも特別な付与装備はあるが、壁走りは戦闘中に足が離れない隠蔽用だ。姿隠しのローブもローブという時点でない方がマシ。結局付与装備無しの状態だ。サイボーグもあるにはあるがギンガの戦闘スタイルには合わないだろう。

 俺がヒールを上手く使えればそれだけでギンガの戦闘力は上がりそうだな。

 そんなことを考えながら、俺は投げつけられたミノタウロスの大斧をリングサイボーグ足で切り裂いていく。俺に衝撃を与える事もなく消えていく大斧。これなら俺もミノタウロスの鎧を切り裂けそうだな。

 まあ、流石にやらないけどな。

 だがそれがフラグになったようだ。魔物の斧投げ大会が始まり、バリアを展開しても逆に被弾面積が上がる始末。俺はヘカトンに持たせた対物ライフルを盾にしながら落下軽減用にライドレールを敷く。

 これは流石に調子に乗り過ぎた。俺がファイターならヘカトンに盾を持たせるんだがな。ヘカトン自体の耐久力はあまり高くない。

 俺は路地に着地する。魔物には囲まれてはいないが時間の問題だ。魔物ヒーラーを守っていたであろう鎧ミノタウロスが護衛対象を失って俺に狙いを定めている。

 思ったよりも足が速い。鎧を出せるミノタウロスは上位の存在みたいだな。明かに知性がある。雑に斧を投げているミノタウロスとは違うみたいだな。ヘカトンの対物ライフルを盾で弾いてくる。盾を正面ではなく斜めに構えてだ。

 こいつは魔物側の異世界転生者か。被帽徹甲弾が欲しい所だな。付与ではなく弾自体の強化も必要だな。

 クソ。この距離では爆発物は撃てない。移動も間に合わない。なら近接攻撃を避けてからの離脱。だが出来るか?

 俺の迷いに答える様に俺の両腕が消失する。そして現れる鉄塊の巨大な腕。俺のイメージでは俺の両脇に浮かぶ両錐の金属塊。その両腕の基部が俺の後ろで繋がりリングサイボーグ足ともリンクする。

 ミノタウロスの大斧を左手で受け止める機械アーム。俺のイメージでは宙に浮いた両錐の金属塊が俺の前に出た感じだ。俺の体に負担がかからない。そして右腕がミノタウロスの盾ごとその腕を握りつぶす。

 ミノタウロスの判断は早かった。握られた大斧と左腕を捨て即座に離脱する。

 こいつは逃げてるんじゃねぇ。回復を貰うために後退したな。明かに動きが違う。知性がある。逃がすわけにはいかねぇな。

 俺のイメージの両錐の金属塊が回転を始めると、実際の機械アームも前腕部が回転を始め、その先の拳も連動して回転を始める。俺のMPを食らい、存在を強固にしていく。そしてその拳が開かれると肘から先が射出され、魔物を蹂躙し始める。

 それを見ていると魔物バリアーは近接攻撃に無反応だな。ゴブリンがバリアーを纏ったまま死んでいく。

 だがまて。何故ゴブリンを攻撃している?

 俺の狙いは知性のあるミノタウロスだったんだが?

 それに反応するかのように目標を変える金属アーム。それに追従する様に俺の体が浮かび上がる。この肩と上腕にそういう機能が付いているんだろうな(第21話 1th地下ダンジョン参照)。そして大型化し展開されるリング。宙に浮いた俺は踊る様に足のリングを振り回し魔物を切り裂いていく。

 コイツも金属アームに追従するために本体の俺を死地に進ませるのはどうよ?

 それに呼応したのか、それとも知性ミノタウロスを逃がしたからか、俺の前身は止まり、腕と足で魔物の殲滅が始まる。

 ヤレヤレ、死地にはありがたいが俺自身が実質バーサーク状態だな。

 安全が確認されるとサイボーグ腕が解除され、俺は荒い息を吐く。そして自身にヒールをかけていく。体に負担は無いが、使用中は精神が固まり、解除後に一気に感情が戻ってくる。これの解消には呼吸以外にない。肺ヒールと喉ヒールだ。ついでにフィジカルアップスタミナも掛けていく。

 流石に精神を回復する魔法なんてのは無いんだろうな。


ーーー


 さて、ようやくこちらも落ち着きそうだな。敵の第一陣はまばらになり時間の問題だ。

 シルド、マギカ、リストの三人も銃撃戦に参加している。マギカが魔法を放ち、リストはその防衛、シルドは銃だ。流石にこの状況で前に出たら一瞬で呑まれてしまうだろう。

 どうもギルドフォネティックに同行しているようだ。あの連中なら大丈夫だな。


 そして魔物側の第二陣。これもまた同じような構成だ。

 これは持久戦か? これが延々続くようならヤバいな。疲弊した所にゴブデロ参上というわけか。

 

 だが事態は急変。072の深部に火の手が上がる。

 なんだ? 何かが突破したのか?

 そこに短期形態進化のオーガを解いたゼロスがやってきた。

「すまねぇ。ゴブデロを取り逃がした。俺じゃ追いきれねぇな」

 姿を見かけないと思ったらゴブデロを狙っていたのか。道理で魔物MPの強化魔物が少ないわけだ。

「ゼロスから逃げきれるのかよ。そんなに早いのかあのゴブリン」

「いや、ワープだ。ある程度パターンは読めて来たんだが、逃げに徹せられとどうしようもねぇな」

「なんだよワープって?」

 俺の驚きの声に答えたのは訳知り顔のアレスだった。

「ワープといったらサイキック系のジョブでしょうね。相当手強くはありませんでしたかゼロスさん?」

「いや、射線さえ切ればそうでもないぜ。動きと思考は単純だった。ただ火力がな。正面切って撃ち勝てるかっていうと厳しいな。翻弄してもトドメがさせねぇ」

「そうでしょうね。サイキック系の強みは魔法の発動が早い事です。キャストは無いですがリキャストで調整しているジョブですね。その分瞬間火力は高い。例えばファイアⅠ、ファイアⅡ、ファイアⅢ、と覚えていれば実質三連射が出来る形です。少しでも間を開けるとリキャストが終わり、いつまでも高火力を維持できるジョブですね」

「そんないいジョブがあったのかよ」

 だったらキャスターなんていらないと思うがな。

「シコルさん。そんなにうまい話はありませんよ。特に使徒のサイキッカージョブは味方に当たるどころか、建物に迄影響しましたからね。防衛で使えば町が火の海です。特に昨今はソルジャー編重でしたからね。そこでサイキックなんてやられた日にはどちらが敵かわかりませんでした。自然と消えていったジョブですね。今はもう

知る使徒もいないでしょう」

「なるほどな。敵地の味方のいない状態でのみ最高の火力を発揮できるってわけだ。特殊ジョブの魔物MP注入見ても魔物版の名前付きと見て間違いねぇな。まだサイキック以外の基本ジョブも隠しているかもしれねぇしな」

 そこにゼロスが口を挟む。

「だったら、奴を殺すには、火力のシコル、ギンガの聖剣、アレスの防御力だな。俺じゃすべて足りねぇ。俺はこっちに残るぜ。それでどうだ?」

 俺達はゼロスの言葉に頷く。

 ゴブデロさえ居なければヒーラー編成でもそこまでじゃないだろう。

 俺達三人は072の内壁内へと向かう。

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