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第43話 冒険者たち

 俺はギルドのカウンターで突っ伏していた。

 昨日のギンガとの一夜で脳が焼き切れたからだ。またゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンの早朝砲撃で目を覚ませず、昼飯を食ってからここで休んでいる。

 そこに、この第072冒険者ギルドの門を叩く者達が現れた。


 それは三人。

 一人は金髪ポニーテールの鎧を着こんだ女の子。

 一人は赤髪ショートヘアーの魔法使い風の女の子。

 一人は青髪を刈り込んだ髪型の僧侶風の出立の男の子。


 その顔立ちでわかる。チルドレンだ。

 もう若さが凄い。こんなお上りさんは見たことがない。

 これは久々に水晶球の出番か? それともいちゃもんをつける先輩冒険者をやるか?


「ここが冒険者ギルド? 私達はチーム『シマリルギス』冒険者登録に来たんだけど」

 おおお。マジか。マジ物の天然だ。チルドレンの転生者か? 冒険者なんて初めて聞いたぜ。いや、ギルド名にはあるが。

 俺は営業スマイルで彼らに対応する。

「いらっしゃい。ここは惑星ファンタジーナンバーワンギルドよ? あなた達に務まるかしら? どこかからの紹介?」

 俺はギンガの真似をしながら受付嬢をこなす。結構いけるんじゃねぇかこれは。

「待ってください。僕達はここに来たばかりで、ここしか見つからなかったんです。僕はリスト。あなたの名前を教えてもらえますか?」

 やたら礼儀正しい青髪僧侶服の男はリストというのか。

 にしても名前か。どうするか。シコル・ギウスは流石にバレるよな。

「リスト。その人は嘘を吐こうとしてる。使徒じゃないかもしれない」

「マギカ。そんな事は無いよ。すみません受付さん。僕の仲間が」

 赤髪の魔法使いのショートツンツンヘッドの女の子はマギカか。そして、コイツラお上りさんにしては肝が据わっているな。このリストという男、腰が低いが明らかにこちらを値踏みしている。マギカの言葉からして魔物堕ちに襲われた経験がありそうだな。

「私からもすみません受付さん。この子、マギカは何時もこうで私達も困っているんですよ。私はシルド。あなたは?」

 金髪ポニテの鎧女シルドが、さも困ったように振舞っているが目が笑っていない。その左手が腰の剣にかかっている。

 間違いなくマギカを信用している。俺が怪しいと踏んでいるな。

 場数がないわけじゃない。072の人間じゃないな。ここは魔物堕ちが少ない。ここに居る使徒は信用できる使徒が多い。ここのチルドレンなら俺の息子アレシスのようにもっと使徒を信用しているはずだ。


 俺は常備しているハンドガンを抜くとギルドのカウンターを飛び越し青髪のリストに足払いをかける。金髪シルドが剣を抜くが、俺はさらに奥の赤髪のマギカの腕を取ると首の後ろにハンドガンの銃口を押し付ける。

「見えているかシルド。動くんじゃねぇ。お前らどこから来た」

 俺はヘカトンを奴らから見えない様に呼び出すとセンサーで探る。魔物球体はない。間違いなく使徒だ。そして対人戦に馴れていない。殺しはしていないようだな。

「わ、私達は、069のチルドレン。そこから逃げ出してきた」

「シルド!? なんでそれを!?」

 金髪シルドの言葉に青髪のリストが驚愕する。

 それにしても069か。この惑星ファンタジーで遊園地を作っている奴らだ。あそこの出身なら魔物堕ちは日常茶飯事。俺も襲われたことがある。あまりにもヤバくて統治しているギルドまで行かずに帰ってきたぐらいだ。

「リスト! この人は敵じゃない! 受付の人! 私達は敵じゃない! この街で暮らしたいだけなの! だから話を聞いて!」

 なるほど。このパーティのリーダーは金髪鎧女のシルドか。青髪僧侶の男リストは参謀。赤髪魔法使いの女の子マギカはトラブルを演出して相手の出方を引き出すわけか。

 どうやら問題はなさそうだ。

 俺はマギカの手を放すと数歩下がる。シルドは剣を納め、マギカは不満そうにこちら睨みつけている。そして、

「リスト!?」

 リストは手にした杖を槍のように使って俺を襲ってくる。見た目に反して交戦的だな。俺はハンドガンを杖に絡ませると押さえつける様にして発砲する。足元に穴が空くが勿論俺は当てる気はない。逆上して掴みかかるリストをいなして逆に抑え込む。シルドとマギカは動いていない。シルドは静観、マギカは動揺しているな。敵対はしてこない。

「この第072冒険者ギルド最弱の俺に負けてるようじゃここには入れないぜ」

 俺はリストを押さえたまま口を開く。リストは物腰に反して交戦的で諦めが悪い。前衛に向いているようで向いてないな。ヒーラーは正解だな。

「僕達がどんな思いでここまで来たと思っている! 今更帰れるか!」

 ? 使徒なら宿舎が使えるはずだが? さっきもシルドがここで暮らしたいと言っていたが、宿舎なら使徒の専用空間が使える。共住許可なんてものは無いはずだが。


 俺は、三人を引き連れて宿舎を案内し食堂で遅めのランチを頬張っている。

「美味しい! こんなご馳走が食べられて住まいもあるなんて!」

 シルドが感激してる。

 どうも069ではチルドレンに宿舎の存在を教えていないらしい。食堂もガラの悪い使徒が屯して使い辛かったようだ。

 神に祈って白パンと水の毎日。衣服と清潔さは浄化と召喚魔法でどうにかなるが、野宿だったようだ。親の顔は知らないらしい。言うまでもなく魔物堕ちだろうな。

 そしてこの第072冒険者ギルドという名称だけが勘違いして伝わっていたようだ。創作ファンタジーの冒険者ギルドと同じだと思っていたらしい。誰からもこの世界の事を知らされていないチルドレンであれば、こんな情報でも信じてしまうのだろう。

 そして驚いたことにこの三人は069から南下してここに来たという事だ。やって出来ないことはないが街の外はMPが回復しない。相当に困難な旅だっただろう。

 聴いてみるとジョブのキャスターにMPの自然回復がある様だ。基本クラスの基本的なストレージが使えるジョブチルドレンだからこそできる仕様だな。残念ながら俺はチルドレンのジョブは見れない。キャスターのジョブもストレージが見当たらないな。チルドレン経由でジョブを知ることは出来ないようだな。


「それにしてもあなたが聖母シコル・ギウスだなんて。今でも信じられない」

 マギカの言葉に俺は苦笑する。それを思ってるのは俺も同じだ。

 そして俺の名を明かした事で更なる情報が手に入った。

 この三人シルド、マギカ、リストは重婚、いやこの言葉は止めよう。複婚だという事だ。リストが複婚かと思ったが、トライアングルで複婚だという事だ。

 流石の俺も難色を示してしまった。複婚で有名な聖母シコル・ギウスの言葉という事で失望されたが、仮にゼロスとギンガが複婚となれば血を見るだろうという俺の言葉で納得してくれた。

 三人の複婚も簡単なものではなかったらしい。紆余曲折を経て結ばれた。肉体関係のない清い複婚。チルドレンでなければ嘘だろ、と言ってしまう所だが本当の様だ。

 正直069の使徒という事でパーティを組む感覚で結婚をしているのかと思ったが、そこまで簡単に出来るものではないらしいな。


「ギルドに入れないのは残念です」

 リストの言葉だ。

 その通りこの三人をギルドには入れていない。これはアレシスの時もそうだが第072冒険者ギルドは惑星ファンタジーナンバーワンギルドだ。ここに入った時点でこの重い肩書がのしかかる事になる。これは丁度ギルドに立ち寄ったゼロスの言葉だ。基本ジョブのソルジャーでありながらギルドマスターをしている男の言葉だ。この三人にも通じたようだ。

 リストの言葉は納得はしても自分には可能性があると驕ってるんだろうな。それが若さってものだ。けして悪い物ではない。


 そして稼ぎ場。ソルジャーなら072東側の定期的襲撃で稼げるのだが、ファイター、キャスター、ヒーラーで防衛をしても敵に触れる事すら出来ないだろう。

 というわけで1th元地下ダンジョンへ向かう様だ。あそこならこの三人のパーティでも問題ない。むしろ向いているだろう。

 銃も使える筈だが使わないのはMP関係から来ているようだ。ソルジャーはどうしても給弾でMPを消費する。山岳横断をしてきた三人にはMPの枯渇が何よりも恐ろしいのだろう。その辺は072でぬくぬく戦って来た俺達にはわからない感覚だ。長丁場や長旅でソルジャーは向いてないようだな。

 そして三人が最初に言っていたチーム『シマリルギス』というのは069のローカルルールの様だ。072ではパーティ名などない。集まりはギルド。ギンガのように有志を募ったスナイパー組合はチームではないしな。根本的に考え方が違う様だ。

 だがこの三人はその069から逃げ出した。つまりそこのシステムが合わなかったのだろう。違うシステムの072なら上手くやっていけそうだ。


 そして三人は1th元地下ダンジョンへと赴いたが惨敗。

 どうも聞いて見ると上の方から入ったようだ。

 あそこは俺が超巨大ヘカトンアームで上下逆さまだ。上に行くほど敵が強い。初心者は下からだ。

 その辺の説明も含めて俺が一度同行することになった。

 こいつらは将来有望そうだしな。そろそろこのダンジョン専用のギルドか組合が必要なのではないかと思っていた所だ。その可能性を探れるだけでも意味はある。

 三人と第072冒険者ギルドの訓練場で準備と訓練を重ね、俺の駆るギルドカーで1th元地下ダンジョンへ向かう。

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