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第44話 初日冒険者

 俺達はギルドカーから降りると絶景になっている1th元地下ダンジョンを見やる。

 地下に刺さったダンジョンが地下水によって洗われ、岸壁に滝が出来ている。地下というよりも渓谷だな。そこにダンジョンがハマっている状態だ。ダンジョンの入り口には吊り橋や不自然に飛び出した岩などで地上と繋がっている。魔物が作ったのか、はたまた神の建造物の仕様か。どちらにしろ警戒は必要だろう。

 入口は大きく分けて三つ。地面と平行した上層。地下にある中層。一番下の下層。水は溜まっていない。神の建造物だ。何かの仕掛けがあるんだろう。そうでなければ今頃ここは湖だ。地表より上はゴッドゴーギャンフルヘルスキャノンの早朝砲撃があるから近づけない。EN攻撃は味方には当たらないと思うが、安全策だ。どのみち敵もいないだろう。

 チームシマリルギスの三人は中層から入ったらしいが苦戦。今回は一番下まで降りて探索開始だ。一応道はあるがロープで降りていく。下層の敵が弱いと言ってもこの地形じゃ下から入ろうなんて思えんわな。脱出も時間がかかる。敵が降ってきたら窮地だな。確かに俺でも下からなんて行こうとは思わない。

 今回は俺が居るから帰りはライドレールだな。


ーーー


 やはり最下層は快適だな。

 単純に入り口も通路も狭いから中型のミノタウロスやオーガが居ない。出てくるのはゴブリンとオーク。


 今回の俺の装備は恒例のダンジョン用拳銃弾ガトリング排莢回収型肩掛けガトリング。通称『ハンドバッグ』。消音と相性がよく、左手のコードで繋がったトリガー兼レバーの握りで回転数制御。腰撃ちでノックバックを重視した銃器だ。

 そして左排莢ブルパップサブマシンガンを左にかけている。ハンドバッグが使えない時に即座に持ち換え用だ。弾切れハンドバッグの恐怖は今でも忘れられない。千発の装弾数は流石に数えてられないからな。


 シルドの装備は小盾とロングソード。マギカは魔法の杖。リストも杖だが石突が槍になっている。シルドが前衛、リストが中衛、マギカが後衛。理想的なパーティだ。


「それにしてもそれは凄いですねシコル」

 何戦かして休息を挟んでいる最中だが、リストが俺のハンドバッグに興味を示す。やっぱり男の子だな。

「だろ? 特注品だぜ。ソルジャーはストレージを弄って武器を作ったり強化している奴が居るからな。ちょくちょく仕様も変わってくるぜ。ソルジャーの武器は多彩だからな。お勧めだぜ」

「ですがそれはMPの召喚コストが高すぎませんか?」

「ああ。電装系が入っているとどうしてもな。レーザーなんかも重いからな。その分動力がいらない奴は軽いぜ」

 俺はそう言ってハンドガンを出す。そして空中に放り投げるとそれが消える。

「え!? なんで消えるの!?」

 シルドが驚いた声を上げる。それに俺が答える。

「シルドは知らないのか? ソルジャーの銃は本当にすぐ消えるぜ。だからこそ実用的な召喚コストだな。使うときはワイヤーなりスリングなんかをかけておくのがお勧めだぜ」

 俺は左にかけているプルパップサブマシンガンを見せる。前面に引っ掛けているがそれがスリングで繋がっているのを見せる。

「へー。私達の武器とは違うんだ」

 納得するシルド。ソルジャー以外の武器は一度召喚すればそうそう消えない。レーザーライフルの様に、戦う前に召喚して装備しておく形だ。この系統は他人の物も使えるが、銃と違って他人の付与が機能しないそうだ。ソルジャーの系統だけが異質と言ってもいいだろう。ソルジャーは間違いなく後から異世界転生者が作ったジョブなんだろうな。仕様がだいぶ違う。

「その代わり武器は本当に多彩だけどな。その分防具は何もないぜ。特に防具の付与は何もない。素材の防刃性能だけだぜ。武器の付与は天井知らずだけどな」

 俺の言葉通り、ソルジャー以外は防具が多彩でそれに付与が付いている。シーフに壁登りがあるように、ファイターはノックバックを抑える足防具がありシルドもそれを使っている。武器よりも防具の性能がジョブの適正を引き出せる。ファイターが鎧で後衛ジョブが衣服なのはそのせいだ。

 チルドレンという事で全てのジョブの基本ストレージが使えるが、装備によってジョブの方向性を決めないと機能しない。チルドレンもそこまで万能ではないな。

 それこそソルジャーメインで防御力が高いからとファイターのノックバックを抑える足防具は使いたくないだろう。後衛ジョブのMPに関係するヒラヒラ防具も同様だ。銃を引っ掛けて取り落としそうだ。素直にスリングのかけられる戦闘服が理想だな。

 だが逆に言えば基本ジョブ系統がソルジャーの武器を扱うなら別だ。防具の付与を必要としない銃火器はどのジョブでも腐らない。


「前衛はともかくとしてマギカは銃を使わないのか? その薬を投げるのよりはずっといいと思うぜ?」

 俺はマギカに話を振る。先の戦闘で分かった事だが、マギカは無駄に魔法を使わずシーフ系統の投げもの、それも薬物系を使っている。瓶を投げつけての状態異常だ。

「だって当たらないもの。それに味方に当たるでしょう?」

 マギカの言葉通りソルジャーの武器は味方を巻き込んでしまう。爆発はおろか銃弾は完全に物理で味方にも当たる。シーフの薬物は液体がかかっても味方に状態異常はかからない。

 味方に影響が出てくるのは物理属性だ。シーフの手榴弾もその系統なんだろうな。

「それにレーザーは眩しいですしね」

 リストが会話を繋ぐ。

 レーザーは完全に物理属性。味方にも当てれば被害が出る。それ以上に眩しい。俺達はライフリング付与のレーザーで発射光と反射光がないから使っていたが、それが無いと確かに厳しい。

 俺達使徒は薄暗いダンジョンでも目視は出来るが、光が入ると逆に見づらい。この1th元地下ダンジョンも光が入る事によって逆に目視が困難になる現象が出ている。光源の入る入り口付近はかえって危険だ。

「ならこういうのがあるぜ」

 俺はそう言ってレーザーハンドガンを出すとライフリング付与をかける。そして壁に向かって撃つとそこに付いた苔だけが赤熱して燃え上がる。

「なんですかそれは!?」

 案の定リストが食いつく。やっぱり男の子はこうだよな。

「ライフリング付与だぜ。発射光と反射光がないから最適な付与だぜ」

「・・・これは、僕でもMP関連の装備があればできます。これは凄い・・・!」

 リストの興奮した顔を見て、俺の息子アレシスもこれぐらい食いつけばな、と思う。

 アレシスには最初から教えすぎたか。これが当たり前だったからな。

 後からこの情報知ったリストの顔をみればそう思う。教育に正解はないだろうが、これは憶えておこう。

「だったらレーザーハンドガンで良さそうなの出してくれるかリスト」

 俺の言葉で散々迷ったリストがレーザーハンドガンを呼び出す。結構大きめの大口径な奴だ。まあ、最初はそうなるわな。取り回しは二の次で大威力。そうなるよな。

 俺はリストの大口径レーザーハンドガンに触れながらライフリング付与を掛ける。

 そして手を放して、撃ってみな、という俺の声でリストが壁を討つとライフリング効果の乗ったレーザーが発射される。興奮冷めやらぬリストの顔を見て俺は得意げに話す。

「驚いたろ? ソルジャーの仕様は相当に広いぜ。防具がねぇぶん出来る事が多彩だぜ。まだ俺の知らない仕様がたっぷり残ってそうだからな」

「聖母であるシコルでさえ知らない事があるの?」

 シルドが驚きながらも聞いてくる。

「ああ。特にジョブ専用の上位ストレージは俺でさえ全貌が見えないぜ。神々との戦い用だろうからな。俺の能力が低くて引き出す事も出来ねぇ。お前たちがチルドレンから他のジョブに変わるときは気を付けた方が良いぜ。サイボーグとか魔剣とか色々あっても使えないことが多い。正直チルドレンのままの方が良いかもしれねぇな。ぶっちゃけ羨ましいぜ。どんなジョブでも銃が撃てるんだからな」

 特にソルジャーは防具の有無は関係ない。最高のサブジョブだろう。

「シコル! これは僕の宝物にします!」

 目をキラキラさせながら言ってくるリスト。

「それは嬉しいけどよ。装備の取捨選択は大事だぜ。戦闘服がないならホルスターと、なんでもいいから紐づけだ。護身なら取り回しの良い、小さい奴の方がいいな。それにライフリング付与は距離で消費が変わるぜ。ダンジョンなら問題ねぇが、空に撃ったらバッテリーが爆発するぜ」

 俺の言葉に頷くリスト。それに面白くなさそうにマギカが口を開く。

「だったら最初から使いやすいハンドガンを教えてくれればいいのに」

 まあ、それはもっともだな。それに俺が返す。

「それじゃ面白くねぇだろ。楽しかったって思い出の方が記憶に残るぜ。ここで無難な使いやすいハンドガンなんて強要されてみろよ。逆にムカついて使えない装備を選ぶことになるぜ? 何よりも好奇心だぜ。なぁリスト」

 俺の言葉に頷くリスト。やっぱり男の子はこうでないとな。俺は言葉を続ける。

「ソルジャーの事なら任せろよ。072で暮らすだけなら銃で防衛が一番だしな」

「リストに馴れ馴れしくしないで!」

 俺がリストと肩を組むとマギカの不機嫌そうな視線が絡んできた。

「おい待てよ。俺はTSだぜ? ・・・と思ったがそうだな。悪ぃ。気を付けるぜ。どうも男同士だと距離感が掴めなくてな」

「リストは私とシルドの旦那様だから。それは忘れないで」

「オーケー。アレスやアレシスと混同しちまった。気を付けるぜ」

 一旦は柳眉をさげたマギカだが中々警戒心が解けない。

「シコルは、その二人とはどんな関係なの」

「友達と息子だぜ。リストもチルドレンだからな。どうしても被っちまってな」

「その、シコルは、そっちなの? その、前から、男の人が好きだったの・・・?」

 マギカの言葉にシルドとリストが目を剥く。

 マズいな。俺よりもシルドとリストが反応している。マギカのトラブル気質は演技だけじゃないみたいだな。俺は笑って二人を宥める。

「俺が好きなのはゼロスとギンガだぜ。性別とかじゃなくて、俺はこの二人に会うためにここに来たって感じだ。TS前はノーマルだぜ。少なくとも経験はねぇ」

「その、私、ごめん! もっと凄い事想像してたから、リストを守らなくちゃって、それで・・・。」

 069出身チルドレンならそうなるか。親でさえ魔物堕ちな所だ。そういう行為に忌避が出るのは当然だ。だが、

「むしろ俺はお前たちが気になるぜ。清い関係は良いけどな、愛は有限だぜ? 熱いうちに形を作らねぇと。冷めてからじゃ形は変わらねぇ。嫌悪するのはわかるけどよ。お前たちの形は特殊だぜ。他に類がない。熱いうちにお互いをぶつけあって三人の形が必要になると思うぜ?」

 ちょっと説教臭いかと思ったが、一番に食いついたのは意外にもシルドだった。

「わかる! 私達は唯一無二なんだよ! こんな関係他にない! 怖がってちゃいつか離れ離れになっちゃうよ!」

 シルドの言葉にマギカとリストの二人は頷けないでいる。

 信用していないのではない。どうなるかわからないのだ。

 自分たちの親でさえ行方不明。魔物堕ちの可能性が高い。チルドレンを育めるような間柄でさえ安全ではないのだ。いや逆に言えばその間柄の方が危険に見えるのだろう。

 そこで俺は提案をする。

「だったら072の北の7thパレスとの間に俺の家があるぜ。ゴッドゴーギャンの通り道だからな。今でも残ってる。一度落ち着いたらそこで三人だけの時間を過ごしてみたらどうだ? 予行演習みたいなもんだ。そこで愛の形がどうなるかはわからねぇが、知らないよりかはいいだろう?」

 俺の言葉にマギカが頷く。

「それなら、私も参加したい。私は私達を信じたい。私達三人ならきっと大丈夫。上手くいくよ!」

 女性陣二人は同意。あとはリストだが、まだ即答は出来ないようだ。

 リストに俺は声をかける。

「リスト。男の変態性は女に暴かれるぜ」

 俺の言葉でリストはこちらを向く。言葉を続けても良さそうだな。

「どうしたって性欲は男の方が強い。暴走だってするさ。だけどな。お前の二人のお嫁さんはそれをフォローしてくれねぇのか? 二人を頼れ、二人を信じろ。これまでそうしてきたんだろ? それと何も変わらねぇ。二人はどうだ?」

 俺が女性陣の顔を見ると感極まっていた。シルドは二人を抱きしめ、・・・俺も入ってるんだが。

 四人で抱き締め合う事になった。


「私これから聖母シコル・ギウスにもお祈りすることにする!」

「やめろ」

「私もシコル・ギウス教に入信するわ」

「ねぇよそんなもん」

「シコル・ギウス。この名は僕たちの教義にします」

「マジで止めてくれ。オネガイシマス」


 ヤレヤレ。冗談が言えるくらいには元気になったな。

 ダンジョン一日目は終了。

 お喋りばっかりだったが得るものは大きかったな。

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