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第40話 ライドレール

「そういえば勇者の力はなんなんだ? 剣から光波を出すのはファイターなんだろう?」

 今は前回の続き、ギンガのシーフの説明が終わってアレスに質問している。

「そうですね。光波は攻撃力のある斬撃系とノックバックを主体とした衝撃系があります。僕はこの衝撃系を良く使いますね。魔剣もありますが、これもソルジャーのサイボーグ同様MP直結型です。僕のスタイルとは合わないんで使いません。僕はあくまでタンク兼ヒーラーですね。そして勇者の力は、僕のスタイルに関係しています」

 そこまでスラスラと語っていたアレスの目が淀む。

「という事は短期形態進化が勇者の力か?」

「それも違いますね。あれも勇者の力に起因した僕の判断です。・・・これはなるべく口外しないで欲しいのですが、このギルド第072冒険者ギルドで共有しておいた方が良いでしょう。使う時が来るかもしれません」

 そう言うアレスの表情は変わらないがその目が淀む。

「そんなにヤバいのか?」

「ええ。ヤバいですよ。よく言えば煽動。どんな状態の人間でも戦いに駆り立て、戦える戦士に変えます。悪く言えば洗脳ですね。どんな痛みも、苦しみも、悲しみさえも戦う力に変える。全ての人間が最高のパフォーマンスで戦う事のできる忌まわしい力です」

 アレスの言葉に俺は唖然とする。言うなれば安全なドラッグか。

「副作用はあるのか?」

「ありませんよ。あるわけない。神の力ですからね。ですがそれは存在しました。依存症なんて起こる筈もないんです。ですが依存症は起こりました。禁断症状があると思いますか? 起こるわけないんですよ。ですがそれは起こりました。それはなぜかシコルさんにはわかりますか?」

「一回その力に触れたら、それを忘れられなくなるって事か。最高の自分を知る事が出来れば常にそれでいたいと思うようになるだろうしな。・・・本当に副作用はないのか?」

「ありません。全開の状態はあくまで神の力に支えられた状態です。栄養剤の様に後から反動なんて起こりません。強いて例えるなら勇者の力を得ている状態は体の時間が止まっていると考えてもらっても構いません。その停止した時間中は最高で最適な自分でいられる。どんな状態でもですね。効果が切れた後と前では何も変わりません。健康であれば健康のまま、疲れていれば疲れた状態に戻ります。ですから休息の代わりにはなりませんけどね」

「その時差が副作用と言えなくもないか」

 元気な状態で勇者パワー全開。終わった後も元気じゃ休めんわな。むしろ疲れていた方がマシまである。

「そうですね。ですが問題はそこではありません。副作用も依存性も禁断症状もないのに人間はそれを求めます。戦闘はおろか訓練や日常まで。何の危険もないはずの神の力が危険な忌まわしい力に変わっていったのですよ」

「アレス自身は平気なのか?」

「僕には効果がありませんからね。それにいっその事この力に制限があった方が良かった。際限なく使えたからこそ地獄の始まりです」

「常に使えと言われたのか?」

「そうですね。力を使われない事へのいら立ちがはっきりと感じられました。使っていれば死なずに済んだ、そう言われては拒否は出来ないでしょう。そして未熟な者達も戦いに参加できる。そう思わせる。実際にはその人物の力を高める事はありません。あくまで最高の状態を引き出すだけです」

「それでタンク兼ヒーラーって事か」

「はい。そういう人々を守り癒す。どんな人間とでも戦える最高の勇者としての賛辞を得ましたよ。その実態はともかくとしてですね」

「でもよ。その人間ってのは使徒なのか? 聞いてると違う気がするぜ」

「はいそうです。僕の遥か前の前世ですね。使徒は安全です。ここでは短期形態進化で使徒の超強化も行えますしね。とはいえ使徒の魔物堕ちを誘発する一因にはなるでしょう。使う時には使いますが、あまり知られたくない力です。ですがシコルさんなら安全でしょう。いつでも使いますよ?」

「ここまで聞いて、はい使って下さいと言う奴が居るのかよ。あるとしても相当の連戦だろうな。起死回生の一撃にはなりそうだな」

「そう使ってくれるのが一番ですね。やはりシコルさんに言ったのは正解でした」

「よせやい。にしても昔の惑星ファンタジーじゃ人間が戦っていたのか? アレスは異世界転生じゃなくてこの惑星の転生者、いってみれば輪廻転生者なのか?」

「確かに人間が戦っていた時代もあったようですが、僕が来たのは使徒が出来てからですね。それまでは別のファンタジー異世界に居ました。異世界ファンタジーからの惑星ファンタジーへの転生ですね」

「お前ってどれだけ転生しているんだよ。俺は現代日本からの初回転生だぜ。アレス、お前って実年齢千歳越えのエルフみたいなキャラかよ」

「そうですね。数えてはいませんがそうかもしれません。現代日本の記憶もありますよ。エルフやVRなんかは通じます」

「お前本当に何者だよ。道理でなんか通じるものがあると思ったぜ。同郷の初回転生と千年超え転生が交わるとか流石惑星ファンタジーだな」

「その千年超えは止めてください。ファンタジーエルフの気持ちがわかりますよ。気持ちが老いたら老け込みそうです」


「それならアレスはライドライダーって知ってるか?」

 アレスの顔が驚愕に染まる。これは知ってる顔だな。

「実はな、それ関連で面白いものが見つかったんだ」

 俺は俺の写真が入ってた謎ストレージを操作する。

 そこにあるのはライドレール。この前の7thパレスのボスを撃破した後だ。いつの間にか入っていて試す機会を失っていた。

 ライドレールとは俺の居た現代日本で流行っていたVRゲームだ。そこに一輪ロボを操作する時に使う、ガイドレールのような物が存在する。

 実際に使ってみよう。

 俺はそれを操作すると金色の鉄パイプの道が出来る。中空に、だ。これは宙に浮いている。それに乗ると俺が宙に描いた金のパイプに沿って自動的に体が前に進む。これは途中下車も可能だ。ジャンプして金パイプから離れるとパイプの下の方に乗り移り、そして地面にジャンプで着地する。

 これがライドレールの使い方。ライドレールトリックだ。思い描いたパイプの間を自由自在に飛び回って攻撃するライドライダーの戦い方だ。

「これは、これがライドレールですか!!!」

 アレスが興奮した声で叫ぶ。珍しいな、アレスがこんなに感情を表すなんて。

「やっぱり知ってるのか?」

「はい! 知ってますよ! 僕はこれを体験できなかったんですよ! 仕事で外してて結局遊べずに転生してしまいました!」

「ライドレール未実装っていつの時代だよ。テストプレイヤーかよ」

「そんな感じですね。聞いてはいたんですけど、仕事が、仕事が、結局僕はライドレールトリックを使えなかったんですよ!!!」

 滅茶苦茶感動しているな。

「なら使ってみるか? もっかい出すぜ」

 俺がライドレールを宙に描くと前のライドレールが消えていく。持続時間は長いが表示限界はある感じか。レールが長ければ早く、短ければ長く多く使えるのかもしれない。これも要研究だな。

「では使わせてもらいますよ!」

 さっきまでとはうって変わってご機嫌なアレスだ。パイプ状のレールの上に足を着いてもぐらつかない。それどころかパイプ状のレールを回転しながら進んでいく。流石にライドライダー経験者だな。ライドレールは使った事がないと言っていたがもうものにしている。レールから飛び上がり自身の体を回転させ腕の振りで更に自身の動きを制御していく。そしてまさかの手でレール、腕でレール、背中でレールと一方通行のライドレールの特性をもう把握している。俺でさえ知らない仕様をなんでこいつは知ってるんだ。

 くっ! 俺も負けてらんねぇ!

 俺はサイボーグ化のストレージを開く。確か足にリング状のものがあった筈だ。

 俺の膝から下がサイボーグ化する。踵が縦のリング状になりそれが回転して自走する奴だ。初めて見た時はこんなもの悪路の惑星ファンタジーで使えるのかよ、と思ったがライドレールなら別だ。

 俺はサイボーグ足のリングを回転させ、ライドレールに乗る。ビンゴだ。ベストフィット。速度が一定のライドレールの上で加速が出来る。これならアレスにも負けねぇぜ!

 先で舞っているアレスに見せつける様に加速して飛び上がる。アレスも驚いているな。そこでお互いトリックの見せ合いだ。

 散々ライドレールトリックで遊んだ俺達は地上に戻る。

「最高ですよシコルさん! あなたは最高のシコル・ギウスだ! 僕の理想のシコル・ギウスですよ!」

「お前もだぜアレス! こんなに凄ぇライドラ乗りが近くにいたなんてな!」

「はい! まさか転生後にライドレールトリックを極められるなんて!」

 俺達はひたすらに感激を分かち合った後でこの仕様について考えを巡らせる。

「でもなんだろうな。やつらのボスは地球からの転生者なのか? それとも俺の記憶から生まれてるのか。イマイチわからねぇな」

「そうですね。少なくとも僕には使えません。ボスのラストアタックの報酬と考えるのが妥当でしょう。神からの報酬ではなくてドロップ品でしょうね」

「だったら分配した方が良いかもしれねぇな」

「いえ。MP強化の出来る聖母のシコルさんが持っておくのがいいでしょう」

「だな。中身がわかればいいんだがわからないうちは俺が使う事前提が良さそうだな」

「話は終わった?」

 ギンガが声をかけてくる。

 やべぇ。俺とアレスでライドレールに夢中になっている間、ギンガの事を忘れていた。それを伝えて謝るとギンガは笑顔で答える。

「じゃあ、今日は私がシコルを貰う。いい?」


ーーー


 その夜。俺とギンガはギンガの私室に居た。

 俺は膝を胸に抱えながらベッドに横になっている。その後ろからギンガが俺の足に手を伸ばす。ギンガの繊細な指が俺の足の裏に絡みつく。

 そっと足の裏の筋を撫で上げ、踵と踝を撫でる。そして足の指を揉みほぐし、ギンガの手が絡みつく。

「シコル。足を交差させてみて?」

 ギンガの言葉にそのままの体勢で足先だけを交換する。さっきまでは俺の左足の裏をギンガの左手が包んでいた。今は俺の右足の裏にギンガの左手が恋人つなぎになっている。ギンガの柔らかい指が俺の足の指を刺激していく。

「ん。やっぱりシコルは足の指が敏感。あのライドレールの動きでそれが見えた」

「それで黙って見ていたのかよ」

「そう。感覚のないサイボーグ足だったのにシコルのリングは正確にレールを捉えていた。シコルは手よりも足だってわかったの」

「そりゃソルジャーは足が資本だからな」

「じゃあ私の足も見てみて?」

 俺が足を解放してギンガの方を向くと、ギンガの左膝がギンガの顔の横にある。上げた左足をギンガが両手で抱きしめている。

 俺は恭しくギンガの左足首を両手で包み込む。いつもは見る事も触れる事も出来ない隠された秘部が俺の手の中にある。

 その少し湿った足の指先を凝視していると、俺の眼差しがギンガの瞳と絡みあう。

「シコル。シコルを履かせて。シコルに履かされて、私をシンデレラにして」

 俺はギンガの左足首を包んでいた手を振りほどくと、靴を履かせるように足先を掴み、踵に沿わせて、俺の靴をギンガに履かせる。俺の指先の感触がそのままギンガの靴になる。そこに俺の所有権を主張する様に何度も何度も擦り上げる。

「シコル。私の足をシコルのものにしたい?」

「したい。この指を絡めて、足裏をなぞってこの足を俺のモノにしたい」

「それは本当にシコルの願望?」

「俺の・・・望みは・・・」

「シコルはして欲しいんじゃない? こういうお姫様になりたい。足の裏を強引に掴まれて、捻じ込むように履かされたい」

「俺は・・・」

「そう。シコルの弱点は足。私の弱点じゃない。気付いてる?」

「ああ。俺がされたい事をギンガにさせてる。夫失格だな」

「フフッ。シコル。ドキドキしてないでしょ?」

 悪戯っぽく笑うギンガが可愛くてドキッとする。そうか、この感覚がないのか。

「悪いなギンガ」

「ん。シコルの弱点は私の領域じゃなかったみたい。やろうと思えば出来るけど、今はしない。代わりに私を抱きしめて。シコルの胸で甘えたい」

 ギンガは足を解くと俺の胸に顔を埋める。

「ギンガの足は弱点じゃないのか?」

 俺はギンガの銀髪を撫でながら聞く。

「私は特に感じない。それをするならこの方が良い」

 ギンガは俺の手を取ると恋人つなぎをする。その顔はドキッとするほど可愛らしい。

「・・・もしかして足指を弄られてた俺ってそんな顔してたのか?」

「見なくてもわかる。そして求めてたのが私じゃないことも」

「ギンガには敵わねぇな」

「そうでもない。弱点を責めたらシコルが女の子になったのは計算外。シコルが良くても私が止められない。痛み分け」

「ありがとうなギンガ」

「勿論、あなたの妻だもの」

 俺達の時間は緩やかに過ぎていった。

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