16 フラグ回収
1秒ホラー(自称)回
1ミリたりともホラーを受け付けない方は回れ右。
「んん~? ナナ、これは?」
とげとげしい少し丸みを帯びた虹色の何か。
ヘルメットか……?
「フォーン」
「はい――おお?」
マッチャに「貸して」と言われたので謎トゲ物体を手渡すと、マッチャが手でその物体をぱかりと半分に開き、ダクスに装着した。
えっ鉱石って素手でぱかりってなる? まじか。
虹色謎トゲ物体を装備したダクス。
その姿は全身とげとげでサボテンのように見える。
「コフッ」
「……なるほど、全身で体当たりできるようにかあ」
思ってたより何倍も好戦的な装備品が出来上がってしまった……。
「キャン!」
ダクスは大喜び。
しかもトゲ鎧がダクスの動きを阻害している様子は一切見られない。
なにこの技術力。
しかもマッチャの力(物理)により取り外し可能という謎仕様。
鉱石は仕事しろ。
このままダクスに本来の猟犬の血が戻って山奥でデカい熊とかに勝負を挑まないか心配ではある。
しかし目元口元、尻尾がとげとげからそっとのぞいている様は激しく可愛い。
スマホの待ち受け待ったなし。
「良かったねダクス。でもそれでみんなに体当たりしないようにね。危ないから」
「ぴちゅ」
いや、平気って……。
「キュッ」
「キャン!」
「ちょっとちょっと……!」
体当たりの許可を出したロイヤルにダクスが突っ込んだ!
しかしロイヤルは無傷で羽をふぁさふぁさしている。
むしろダクスの方がばいんと後ろに飛ばされた。
「ええええ」
そのまま全員に体当たりしてはばいんとはじき返されているダクス。
まじみんなの皮膚どうなってんだ。とげとげアタックなんだけど。
モフか? モフで吸収か?
そのまま確認のためみんなのモフをもふしている内にうとうとしていた。
目を覚ました後エンに乗って家まで戻ってきた。
危ない、貴重なラブピ時間を熟睡して過ごすところだった。
「チカチカさん、見て下さいこれ。かっこいい!」
虹色槍をかっこよく構えながらチカチカさんに報告する。
「よかったね」
「ナナが光って土がぼこっとなってエンが口から光ってロイヤルがばしゃってなってダクスがとげとげの――」
みんなの凄さをあれこれと報告するも、チカチカさんからのコメントはその後なかった。
たぶん絡み方がめんどくさかったんだろうな。
この無視っぷり、いっそすがすがしい。
管理人のツンは気にせず、ダンジョンに挑む前にご飯を食べておく。
早く果物以外のご飯が食べたい。
「よし。じゃあダンジョンに突入します!」
「キャン!」
柔軟体操もしたし謎ポーションも大量に補充したしダンジョンアタックしてみよう。
今日は感覚を掴むために1階層をじっくり探索する予定だ。
あー早く人に会いたい。いつ会えるの。
「チカチカさん、家の外にあったあの階段ですよね? 地獄に連れてかれそうな」
「そう」
「みんなと一緒に行っていいんですよね?」
「いい。でもはるのレベルアップにはカウントされない」
「ダンジョンじゃ私のレベルは上がらないって事ですか?」
「自分の力で倒せば上がる」
木の精霊が敵を倒しても私のレベルアップにはつながらないって事か。
でもまあいてくれるだけ心強い。
「ではいってきます!」
きりっと槍を構えチカチカさんに挨拶すると、レインボーに光って送り出してくれた。
デレをありがとうございます。
体が蝕まれそうな黒いもやを吐き出している階段。
家のそばにこんなスポット、全然心が休まらない。
「い、いくぞ」
腰が引けながらも槍を前に突き出し1歩ずつ慎重に階段を下りる。
キイロは肩にとまり、ダクスは私の少し前を勇まし気に歩いている。
残りのメンバーは後方だ。後ろを気にしなくていいというのはありがたい。
時間をかけて階段を下りきる。
「明るさは問題ないね……」
そこは正統派のダンジョンといった感じだった。
人の手が入っていそうなつるりとした壁に通路。壁には松明が。
下りた場所は少し広めの空間で、前方と左右の3方向に通路が見えている。
初っ端から3つの選択肢、道に迷う予感しかしない。
「とりあえず左から確認して――」
小声でみんなに話しかけていると、どこからか音が聞こえてきた。
ごおり、ごおり、と何か重いものを引きずっているような音がする。
それはだんだんこちらに近付いているようで、音が大きくなってくる。
「……ダクス、階段の所まで下がって」
手が震える。
ゲームなのに手が震えるんだとぼんやり考えていると、前方、階段正面の通路がさっと暗くなった。
あそこになにかいる。
汗をびっしょりかいている両手で槍をしっかりと握り直す。
ダクスが唸りはじめる。
正体がわかった。
ゆっくりと、巨大な斧を片手で引きずりながらこちらに向かってくるなにか。
ゆらゆらと左右に揺れながら歩いてくる。でも人間じゃない。頭部が人間ではないのだ。
牛。巨大な牛の頭部をもった筋骨隆々の大きな生物。
血走った目をしたソレが、首を傾げた状態にもかかわらず、視線を逸らさないままこちらにゆらりゆらりと近付いてくる。
背筋が凍るような呼吸音を響かせながら。
そして、見てしまった。
――松明に照らされたソレの体と斧に、赤黒い何かがこびりついているのを。
「っぎゃー!!」




