11 ようやく冒険
1番近い木の精霊さんまで20km。衝撃。
この島思ってたより大きいぞ。
「20キロって……」
自分の通勤ルートを思い出し、歩くと何時間かかるか計算してみようとするがすぐやめた。
鬱蒼とした森の中と整備された道路じゃ比べものにならない。
これはもう野宿も視野に入れるべきだろう。
「毎日少しずつ進めて……来週の週末を目途に……」
ダンジョンには来週の週末に挑めればいいな。どこにあるのか知らないが。
その時までには他のスキルもいくつか習得しているかもしれないし、創造魔法ももう少し使いこなせているはず。
「じゃあチカチカさん、木の精霊さんに会いに行ってきます! 数日留守にすると思いますのでよろしくお願いします」
チカチカさんに方角を聞いてもいまいちわからなかったので、全面的にキイロにお任せする予定だ。
助かります。
準備を終えて木の洞から外に出る。
敵が出てこないと分かっているから鬱蒼とした森も気にならない。
もはや気分はトレッキング。
リアルが充実している女性の休日に見えなくもない。
そう考えると山歩き用の杖が欲しくなってきたので、その辺の木から枝を拝借する事にした。
「キイロ、私でも手の届きそうな低さの枝を教えて欲しいな」
「ぴちゅ」
肩に乗ったキイロの指示に従ってのんびり歩く。
ロイヤルはよちよち歩きなので私が抱っこする事に。チワワを抱っこするマダム感。
いや、ダクスもいるから桃の太郎もありか……?
わいわい話しながら歩いていると、木の根をジャンプ台にすれば届きそうな枝があった。
「ロイヤルちょっと待っててね。――よいせっ」
ジャンプして両手で枝にしがみついたまではよかったが、見た目の細さの割に枝が折れない。
なので負荷をかけようとぶらぶら体全体を揺らしていると、ダクスが楽しそうに足元を回りはじめた。
遊びじゃないからね。いちおうこれでもサバイバル中だからね。
そんな時、頭上からバキっと音がし私の目線がすっと高くなった。
「ん? ひっ!?」
音のした方向に視線をやると、大きな、苔のような毛むくじゃらの生き物が私の掴んでいる枝を片手で持ち、木に足をからめながらこちらを見下ろしていた。
「…………」
あまりの出来事にそのまま見つめ合う私と毛むくじゃら。
「……枝、折った?」
つい、「髪、切った?」みたいなセリフが飛び出してしまった。
「フォーン」
「あ、言葉」
それだけでわかった。
この毛むくじゃらさん――ぱっと見オランウータンっぽい――は木の精霊その4だと。
「あー。はじめまして、はるです」
「フォーン」
「名前ね、名前…………色が抹茶に似てるから【マッチャ】で」
何故かマッチャが持っている枝にぶら下がったままのまぬけなやり取りだったが、無事に光ってお互いに紋様が刻まれた。
「フォーン」
「うん、ありがと」
私の腕がぷるぷるしてきたのを見て、マッチャが地面におろしてくれた。
力持ち。
マッチャはダクスにふんふんされながらも、キイロとロイヤルに挨拶している。
ダクスのふんふんは精霊に意味があるのか気になるところだ。
「あのさ、木の精霊は20キロ先って聞いてたんだけど……」
1キロも歩いてない内にエンカウントしたんですけど。
「フォーン」
「なるほど、樹上を移動してね……」
よくわからないが、『木の精霊はハイスペック』という事にしといた。
「残りの精霊さんの場所わかる?」
「キュッ」
「そこ?」
「ぴちゅ」
「あっち?」
「クー」
「ここ……おぉ!?」
ナチュラルに会話に参加してきた見慣れぬモフモフふわふわした生き物。
馬のような大きさの鹿のような頭をしたアルパカのよう生き物……角が2本上に向かって湾曲しながら生えている。
「クー」
「あ、はい」
その鹿馬アルパカさんが名前をつけてと言ってきた。
モフがえんじ色なので【エン】に決定。赤い宝石のような目が綺麗。
この私の即決具合、才能の現れ。
私に刻まれたマッチャの紋様は右手甲、エンの紋様は右手首に。そしてキイロは左手甲、ロイヤルは左手首。
なんとなく左右対称になったので、木の精霊さんはこれで全員なのかもしれない。
「ねえねえ、木の精霊さんってチカチカさんいれて5人?」
「コフッ」
「ちが……うよね~」
6人目が現れるよね~。




