10 デレを希望
「キュッ!」
よちよちしながらもどこか貫禄のある羽ペンギン。
目がきりっとしていて、深みのある上品な青色グラデーションの体をしている。
その羽ペンギンは私の近くまで来ると、羽をばさりと動かし執事がやりそうな挨拶のポーズをとった。
「はあ……こんちは……」
なんとなく私も左手を胸に当てるポーズをとって挨拶を返す。
すると、羽ペンギンが羽をひと振りし空中に水の塊をいくつも出現させた。
「すご! ――あ、いいの? ありがと……」
どうも羽ペンギンは私に手を洗わせるためにこの水の塊を出したようだ。
なにこれ。
ちらちら羽ペンギンを見ながらぱちゃぱちゃ手を洗う。
洗い終わった手を自分の服で拭き、羽ペンギンをじっと見つめていると、「名前を」と言われた。
「チカチカさんあの、」
「その3」
……よく理解した。
「青色だけどちょっと違うよね……あ、これロイヤルブルーっていう色だ。ならあなたの名前は【ロイヤル】で」
「キュッ!」
予想通り光に包まれた後、ロイヤルの胸には“R”の白文字メインの紋様が。
そして今度は私の左手首にロイヤルのシルエット紋様が刻まれていた。
ダクスはさっそくロイヤルをふんふんしていてすぐに仲良くなれそうだ。
「チカチカさん、まだ木の精霊さんっています?」
「いる」
「おお~。どこにいます?」
「外」
これはさっそく他の精霊さんに挨拶しに行かないと。
しかし今の私はMPがゼロ。武器もない。
攻撃手段は自分の手足のみ。まさに野生。
「チカチカさん、始まりの島って敵は?」
「出ない」
助かった。これなら野生のままなんとか生きていける。
「じゃあ始まりの島を探索してきますね。人がいる場所ってどの辺りにありますか?」
回復薬とか武器を買いたい。
価値はまだわからないが、ステータス画面を見るとお金は3000リピ持っている事になっている。
早く買い物してみたい。
「人はいない」
……おお?
「人がいない?」
「そう」
「島に?」
「そう」
「なんで?」
「そういうもの」
「そういうもの?」
「そう」
「なんで?」
「しつこい」
「いたたたた!」
何かに頭をごしごしされた!
「えっえっ今のチカチカさん?」
「そう」
管理人さんに実体がある事がこのタイミングで判明した。
頭をゴシられるとは……。
「チカチカさん、顔見せて欲しいです。どんな感じ? まんま妖精みたいな?」
「気が向いたら」
この管理人さんはツンの要素が多めだという事も判明した。
薄々気付いてたけど。
にしても人も敵もいないんじゃ私のラブピ人生どうなんだ?
当初の予定ではチュートリアルを終えたあと始まりの街で少しレベルを上げ、初心者装備から抜け出す予定だったのに。
とそこで、ひとつの可能性に思い至った。
「あっ! もしかしてチュートリアル的な基礎を学ぶ時に武器とか装備とかもらえちゃう系なのかも」
チュートリアル時にアイテムをもらえたりするゲームもあるしね。
これまでの流れでチュートリアルがあるのか怪しいところだが。
「じゃあそうする?」
「えっ」
管理人からの予期せぬお言葉。
そうするって……。
「チュートリアルダンジョンを用意する」
「え」
「残りの木の精霊を見つけてダンジョンに挑む」
「え」
「100階層にダンジョンボスがいるからそれを倒したらクリア」
「え……100!? ちょ、100!?」
多い!
チュートリアルダンジョンが100階層あるってどういうこと!?
ゲームバランスという言葉を知らないんだろうか……。
しかも家の管理人がチュートリアル用意するってなに。
「チュートリアルって……」
「ここ押して」
そうチカチカさんが言うと、壁の一部が光った。
人の話聞いてないなと思いながらそこを押すと、ずずっと木の壁が変形して洗面台のような形になった。
そしてそこには液体がじわじわと染み出てきた。
「おおお?」
「いろいろ回復するからそれを飲めばはるでも何とかなる」
「はあ……」
知り合い歴2日なのにもうできない子扱いされてるな……。
それなのに100階層のダンジョンに挑ませるとか鬼だと思う。
「これどうやって持っていくんですか?」
「触る」
「ほうほう」
言われた通りにその液体に触れると、液体が少し減ってまたもとの量まで戻った。
すぐにアイテムボックスを確認すると、『???』と表示されている。
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『???』
??????
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こんな怪しげなものを飲まないといけないのか……。
でも回復薬を入手するあてもないしこれのお世話になるしかない。
早く鑑定スキルが欲しいところだ。
『???』をアイテムから取り出す操作をすると、目の前に飴玉状態で出てきたのでぱくりと口にする。
「味はしないんだ」
ステータス画面を確認すると、MPが全回復していた。
もともとの値が低すぎてすごいんだかすごくないんだかはわからないが助かる。
「キャン!」
「ぴちゅ!」
「キュッ!」
「う、うん。この液体持てるだけ持ってくからちょっと待って」
3人のお仲間がとてもやる気だ。
床をがりがりしているし羽もばさばさしている。
あのステータスのダクスもやる気なんだから私もやる気を出さないと。
「チカチカさん、残りの木の精霊さんってどこにいますか?」
アイテムボックスを全部埋めるくらいの勢いで謎ポーションを集めながらチカチカさんに聞く。
「1番近いのが20キロ先にいる」
「ひえっ」
遠い……!




