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ストラスは、スタンガンで気絶させたアキラをコンクリートの床に寝かせると、ゲートのスイッチを入れた。
少し間を置いて、聞きなれたハエの羽音がし、ピンポン玉大で現れた紫色のゲートが、みるみる大きくなった。
アキラには、お前の代わりなどいくらでもいるような事を言ったが、捜しに捜して、ようやく見つけた適格者だ。死んでもらうわけにはいかない。こちらの世界に、ゲートを行き来できる資格を持つ人間は、そうはいない。おそらくは、数人。もしかしたら、唯一の存在であるかもしれない。
ワスプには、上手くしてゲートの向こうへ行く力を手に入れた者もいるという。
しかし、奴らの中にゲートを利用して、この世界の覇権を狙う者がいるのなら、もう一つのゲートを持つ自分の存在を快くは思わないだろう。やはり、アキラを利用するしか方法はないのだ。
実は、アキラに注射したのも、毒ではなく、ただの精神安定剤だ。下手に毒など注射して、うっかり殺してしまっては困る。だいたい、かっきり一ヶ月で死ぬ都合の良い毒薬など、存在しない。あったとしても、今の世の中では手に入らない。そう言うしか、アキラに言うことを聞かせる方法が無かったのだ。
恋人を失った悲しみを利用するのは忍びなかったが、そうでもしなければ、彼は取引に応じなかっただろう。
気絶させた後で睡眠導入剤を飲ませたので、今はスース―と寝息を立てている。
彼を見つけてからというもの、ずっと見守って来た。恋人が死ぬきっかけとなったワスプを殺さずに逃がしたところも見ていた。
この世界にありながら、この少年は正義の心を失わずに持っている。今日、このような人物がどれだけいることだろう。そして私は、そんな彼に殺人を犯させようとしている。許されることではない。許されることではないが、それでも私は、向こうの世界に戻りたいのだ。
この数週間の間に、何度も人の生き死にを目の当たりにしたアキラの寝顔は、それでも、ただの十七歳の少年のものだった。その寝顔を眺めて、ストラスは思った。
頭は悪いが、この少年には、人を惹きつける魅力がある、と。
そして、最初は利用することしか考えていなかった彼の幸せを願う自分がいることに気が付き、動揺していた。
ゲートの中へ放り込むため、アキラを抱き上げようとしたそのとき、突然、壁に設置された赤い回転灯が回り始めた。
外に仕掛けてあったセンサーに、誰かが引っ掛かったらしい。
敵だ。




