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場所を変えようというゴロウの提案で、二人は少し歩き、シャッターの開いた民家のガレージを見つけ、中に入り込んだ。ゴロウが廃油のランプを取り出して火を点けると、ささやかな灯が庫内を照らし出した。
風が強いので、シャッターを閉める。それでも隙間風がランプの火を揺らした。
車庫のようだが、車はない。壁際に作られた棚に、ジャッキと古いバッテリーがのってあった。
しばらく沈黙が続いた。揺れるランプの光が、下から二人の顔を照らしている。
「寒いだろう。火でも焚くか?」
アキラは答えなかった。ゴロウの目を見ようともしない。
「会いたかったよ、アキラ」
「俺は、会いたくなかったよ」
ゴロウは胡坐をかき、腹の前で軽く指を組んでいる。視線を下げて、小さく嘆息した。
「言い訳はしない。お前に顔向けできる俺じゃない。ユイのことは…、残念だった」
アキラが、キッとゴロウを睨んだ。
「お前がユイの名を口にするな!二度と!」
「…すまん」
そして、また、沈黙が訪れた。廃油のランプが、ジリジリと音を立てている。風が唸っていた。
「輸送隊が襲われたのは、いつのことだ?」。アキラが、重い口を開いた。声が掠れている。
「二日前だ」
「何故だ!俺はその頃、とっくに輸送隊にはいなかった」
「知っている。タクミは、マサトが行方を知っていると睨んだんだ。輸送隊は、精いっぱい抵抗したが、ほとんど役に立たなかった。あとは、見せしめさ。タクミは、少しでも自分に歯向かった者を許さない」
「俺が輸送隊に助けられたのを、どうやって奴は知った?」
「輸送隊を含む全てのハイブに、ヴェスパの息がかかった者が潜んでいる。情報は全て筒抜けだ」
「クソッ!」。アキラは、拳でコンクリートの地面を殴りつけた。「何も…、皆殺しにすることなんて、なかったのに…」
再び、涙が溢れて来た。
「お前に、言っておかなきゃならんことがある」。ゴロウが言ったが、アキラは答えず、涙を拭った。「俺も、ヴェスパだ」
アキラの動きが止まった。震える声で、
「な、ん、だ…、と?」
「輸送隊のうち、何人かは俺が殺し…」
「うわぁ!」
言い終わる前に、アキラはゴロウに飛びかかった。
ランプを飛び越え、胡坐をかいていたゴロウを向こう側に突き飛ばし、馬乗りになる。拳を固めて、ゴロウの髭面をメチャクチャに殴りつけた。
「もう一遍言ってみろ、この下衆野郎!お前が、お前らが殺しただと?!ユイだけじゃなく、輸送隊の人たちまで!」
鼻が潰れ、唇が裂けたが、ゴロウは防ごうともしない。
五発殴ったところで、アキラは拳を止めた。どれだけ許せなくても、無抵抗の奴は殴れない。ましてや、あのゴロウだ。本気になれば、アキラの首など、あっという間にへし折ってしまう、あのゴロウだ。
振り上げた拳が、怒りに震えていた。




