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傷の男は、銃のグリップを握る手を整え、改めてアキラに狙いをつけた。
「馬鹿な。ゲートが開く時間を知ってるのは、ボスと俺たち6人だけだ。おまけに、向こう側には、厳重に見張りをつけてあるんだ。通れるはずがねぇ」
こいつらも、ゲートを知ってる?そんなの、聞いてないぞ。
とはいえ、目下の問題は、どうやってこの、拳銃を突き付けられた状況を凌ぐかだ。何か使える物はないかと、アキラは左右に目を走らせた。椅子、テーブル、トイレのドア…。残念ながら、銃弾を防げそうな隠れ場所は一つもない。
そのとき、踵の後ろで、動く気配がした。さっきのデブが目を覚ましたらしい。要領の悪いデブだ。これは、使えるかもしれない。
「俺が、どうやってこっちへ来たのか、教えて欲しいかよ?」
二人は顔を見合わせた。
「言ってみろ」
アキラは、半歩前に踏み出した。
「動くな、オラァ!」。傷の男が怒鳴る。「その場で言え!」
デブは、上体を起こし、頭を振っている。まだ、意識がはっきりしないらしい。前の二人に、こちらの考えを勘付かれるわけにはいかない。なんとか気を逸らさなければならない。
「あんたらが、さっきから言ってるの、ストラス・ゲートのことだろ?紫色した丸いやつさ。俺も持ってるんだ、それ」
「こりゃあ、驚いた。まさか、ゲートがもう一つあるとはな」。坊主頭が感心している。「こりゃあ、野放しにはできないぜ。何処にある?場所を言え」
言えるかよ。
「待てよ。こいつが、もともと向こう側の奴なら、ゲートを通ることができないはずだろ?こんな下品なガキが、ボスと同じようにこっち側の出身だとは思えないし、ひょっとして、こっち側に協力者がいて、俺たちと同じようなことをしているってことか?」
ボス…、タクミがこっち側の出身だと?!
「もしかしたら…」と、傷の男がアキラを見て、「天然かもしれないな」
「そんなわけないだろ」と、坊主頭が否定した。「こんなデカいガキが。どう見ても、十歳未満には見えねぇ」
「いや、理屈で言えば、そうでなくても天然はいる。ごくごく稀な存在というだけさ」
背後でゆっくりとデブが立ち上がった。
それを見た坊主頭が、ハッとする。
「立つな!ナオ!」
「え?」
とぼけた顔で訊きかえすデブの前で、アキラは体勢を低くした。
「クソッ!」。傷の男は撃てない。
当たり前だ。今ぶっ放せば、仲間に当たる確率の方が高い。
その隙に、アキラはデブの背後に回り込み、首に腕をかけて、その後ろに身を隠した。
「酷い臭いだな、お前。この世界の奴は、臭いに敏感なんだぞ。風呂には毎日入るようにしとけ」
そして、傷の男たちに向かってデブを突き飛ばすと、背後の扉を開けて、外の町に飛び出した。
「逃がすな!追え!」
傷の男の怒鳴り声が聞こえたが、こうなったら、もう捕まるはずがない。なにしろ、足の速さには自信がある。




