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「黒田さんは、外で、いったい何をしてるんですか?」
アキラが訊ねると、高畑は「うーん」と考えた。
「研究だね。僕の前任者が行っていた研究を、僕よりも熱心にやっているといったところかな?難しい言葉で言うと、『高次元空間における現座標の特定』。でも、詳しいことは僕も知らないんだ。物理に興味があるのかい?」
「いえ、まったく」
「まぁ、聞きたまえ」と、高畑は身振り手振りを大きく、話し始めた。「知っての通り、僕たちが暮らす世界は三次元で構成されている。これに時間軸を加えて四次元。ただし、人間が認識できないからといって、他の次元が存在しないわけではない。実は、もう一つ、一般には知られていない軸が存在する」
「多様性でしょ?」
高畑の動きがピタリと止まる。
「君、どうしてそれを?」。怪訝な顔でアキラを見る。「普通は知っていることじゃないんだけどね。さては、君…」
アキラは、まずいことを言ってしまったかと息を飲んだ。
「論文を読んだね?尾藤先生の。いやぁ、久しぶりに熱心な生徒に巡り合った気分だよ。予習をしてくるとは、感心感心。だけど、一口で多様性といっても、その軸は一つじゃないんだよ。僕が計算したところによると、多様性の軸は二つあるらしい。だから、縦横高さに時間を加えた四次元。さらに多様性の二つの次元を併せて、この世界は6つの次元の上に成り立っていることになる」
「え?」と、アキラはその言葉に違和感を持った。「7つじゃなくて?」
「え?」と、再び高畑が動きを止める。「どうして、そう思うの?」
どうして、そう思うんだろう。何処かで7つと聞いたような気がするんだが…。
「わかりません」と答えると、高畑は何故か安心したような顔をした。
「とにかく、その六次元空間の中で、現在地の座標を計算するのが、僕たちの研究さ。とりわけ、多様性軸の二つの座標をね。黒田くんは、それを熱心にやっているというわけさ」。高畑は、そこで人差し指を立て、「そうだ。一つ面白い話をしよう。多次元に関する知識が深まれば、全ての座標間の距離を同じ単位で表すことができる。縦、横、高さの三座標が同じ単位で表せるようにね。そして、なんと、1mと1秒は、まったくと言ってよいほど、同じ距離なんだ。メートル法ができたのは、18世紀。太陽暦に至っては紀元前だ。共に地球を尺度としてできた単位ではあるが、ただの偶然とは考えにくい。どうだね?科学のロマンを感じるだろう?」
高畑は目を輝かせて、そう語ったが、正直、アキラには何がそんなに面白いのか分からなかった。




