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ともかく、黒田を見つけることが先決だ。見つけても殺さないと、望巳と約束はしたものの、最終手段として、それも計画のうちに入れておかなければならないと考えていた。とは言え、こっちの世界では、警察が幅を利かせていて、法律を破った者は地の果てまでも追いかけられ、捕まって刑務所に放り込まれたり、死刑にされたりするらしい。特に、殺人などの重犯罪を犯した者においては、例え死刑を免れたとしても、一生まともに暮らせないほどの社会的制裁が下るのだそうだ。黒田を殺した後、向こう側の世界に逃げ帰れば、逮捕されることはないかもしれないが、そうすると、この世界でユイを捜すことができなくなってしまう。
もし、やらざるを得なくなった場合、何とかして、警察にばれないように殺す方法を探さなければならない。
バスは、『聖修学院大学前』で停まった。数人の女子大生と共に、アキラはバスを降りた。ここまで来れば、あとは歩いて、黒田の自宅や、あの喫茶店を回ることができる。
昨日と同じ老齢の守衛が、腰の後ろで手を組んで立っていた。まっすぐ前を向いたまま、アキラの方を見ようともしない。
「やぁ」と声をかけてみた。
「何か?」
「黒田って人に会いに来たんだけどさ。今日は来てるかな?」
「黒田?理学部の黒田さん?」
「えーと、コウジゲンブツリガク研究室…」
「その黒田さんなら、しばらく見ていないな。学校の外にいるか、中にいるかのどっちかだろうね」
当たり前のことを言う奴だ。
「研究室には、顔を出していないらしいよ」
「じゃ、外にいるんだろうね。君、ここの学生?」
「いいや。その人を捜してるだけだよ」
「変わった人だね。黒田さんに何か用?」
「何の用なんだろうね」
「変わった人だね」
どうやら、今日も黒田は来ていないらしかったが、せっかく、ここまで来たので研究室にも顔を出してみることにした。
理学部棟に入り、薄暗い廊下と階段を抜けて四階の端の部屋まで行くと、ドアをノックした。
「はい」と、高畑の声がし、アキラはドアを開けた。
「ああ。君は昨日の…。黒田くんなら、まだ来ていないよ」
フクロウのストラスが、止まり木の上からこちらを見ている。水槽のハツカネズミは、二匹になっていた。
「せっかく来たんだから、コーヒーでも飲んで行きたまえ」。そして、隣の部屋に向かって、「泊くん、泊くん!」
泊がイライラして頭を掻きむしっている姿が目に浮かんだ。




