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「そうそう。これが、その写真だよ。一昨年やった、僕の還暦祝い。珍しく黒田くんもいたんで、一緒に写真を撮ったんだ」

 壁にかけられた額には、学生と見られる2人の女性の他に、赤い帽子を着てチャンチャンコを羽織った高畑と、もう一人の男が写っていた。

 長い髪の一部を、後ろで束ねた男。年齢は、高畑と同じくらいだろう。口の周りに無精髭を生やしている。

 これが?

 アキラが持っている写真とは、ずいぶん雰囲気は違うが、確かに同一人物であるように見える。

「おい」と、望巳が緊張した声をかけて来た。アキラが視線の先を追う。

 望巳は、高畑の机の上にある写真立てを見ていた。それは、アキラが持っている写真と同じものだった。髪を七三に分けた、人の良さそうな黒田の写真。だが、問題はそこではない。

 破られていないその写真には、他に二人の人物が写っていた。

 アキラと望巳が注目しているのを見て、高畑が説明した。

「それは、僕たちが若い頃の写真だよ。もう二十年も前になる」

 何処か自信の無さそうな笑みを浮かべる黒田とは対照的に、輝くような笑顔で写っている色男が、高畑だろう。その二人の間に、眼光の鋭い、白い短髪の老人が、口を真一文字に結んで、こちらを睨むように座っていた。

「この人は?」

「ああ。これが、僕の前任者。尾藤洋造教授だよ。もう十五年も前に亡くなったけどね。素晴らしい研究者だった。研究のために人生を捧げたような人さ。性格的には、僕よりも、今の黒田に近いような気がするな。思えば、黒田が今のようになったのも、教授が亡くなってからだ。その後、教授の遺族にもいろいろあってね…。今は、家が空き家になってしまったから、僕がストラスを引き取ったというわけさ」

 高畑は、神妙な顔をした。

「これ、写真に撮っていいですか?」。望巳が訊ねて、二枚の写真をスマートフォンで撮った。

「すげぇ。それ、カメラにもなるんだな」

 感動するアキラを、高畑は不思議そうに見ていた。


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