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泊が、手当のために席を外した。
「せめて、父の最近の写真はありませんか?」。望巳が訊ねた。
ここに来て、息子を騙ったことが生きて来た。かつての家族なら、写真を見たいと言っても不思議ではない。
「うーん…。僕はよく、生徒と写真を撮るんだけどねぇ。黒田くんは、あまり、そういうことが好きではないんだ。優秀なんだけれど、人付き合いが極端に悪くてね。要するに変わり者なんだよ。出世欲も無いから、今でも助手止まりでね。彼がその気になれば、博士号なんて、思いのままだろうに。…あっ、そうだ。一昨年の物で良かったら、こっちにあるよ」
そう呼ばれて、アキラたちは一番奥の部屋へ移動した。
高畑専用の研究室らしいその部屋は、他と同様に古いものであったが、すっきりと片付いていた。本棚の本は行儀よく背の順に並べられ、アルミサッシの窓際には観葉植物が置いてある。使い古されたスチールデスクの上には、ユリの花を象った電気スタンドが置いてあった。
「どわっ!」。突然、望巳が叫んだ。
「ああ、ごめんごめん。この研究室の先代が飼っていたんだけれどね。事情があって、去年から、ここにいるんだ」
デスクの横に、縦の丸太に横の丸太を打ち付けただけの、簡素な止まり木があり、そこに、40cmはある大きなフクロウがいた。
「モリフクロウのオスだよ。もう、ニ十歳にもなる。人間で言うと、百歳以上だ」と、高畑は、フクロウの頭を撫でた。「君たちは、撫でちゃダメだよ。噛まれるから。まぁ、僕もしょっちゅう噛まれるんだけどね。な、ストラス」
「ストラス?!」。アキラが、驚いて大声を出した。
「このフクロウの名前だよ。どうかしたのかい?」
「いえ…」
「これも、僕の前任者がつけた名前なんだ。ストラスっていうのは…」
「悪魔の名前ですよね?フクロウの姿をした悪魔。召喚した者に知識を授ける」
「ほう。詳しいね。その通りだよ。ここは大学だからね。知識が必要なわけさ。それに、実験用のマウスがいるから、餌にも事欠かない」
棚の上に、水槽がのっていて、中に白いハツカネズミが4匹いた。望巳がそれを見て嫌な顔をした。




