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日が暮れると、発電機が動き始め、天井に取り付けられた投光器に光が灯った。音楽が流れ、噴水の上はステージとなり、狭い縁の上を器用に歩きながら、裸同然の女が2人、セクシーなダンスを踊り始めた。
性的な物に免疫のないユイは、目を逸らした。男はみんな、あんなものに興味があるんだろうか。アキラも、ああいうのを見て喜ぶのだろうか。
多くは酒を飲んでいて、たいして意味のないことを叫んだり、突然ゲラゲラと笑いだしたりする。ソファの上で、絡み合っている男女もいる。
生活の苦しいハイブでは、欲しかったとしても酒、煙草には手が出ない。男と女は厳格に分けられていて、正式に結婚するまでは、同じ部屋で生活することはできなくなっている。泥酔した人間を見たことのないユイにとって、その姿は狂人以外の何者でもなかった。ましてや、他人の目があるにも関わらず、行為に及ぶ男女など論外だ。
いやらしいダンス、淀んだ空気、いかれた騒音。もう、あと一秒も耐えられないと思いながら、もう二時間近くも、この狂宴の中に身を浸していた。
すぐにでも逃げ出したい気分だったが、あの包帯の男が、絶えずこちらの方に気を配っている。逃げ出したとしても、帰り道は暗闇。生きて逃げ延びるのは不可能だ。三人掛けのソファの真ん中に座って、体を固くしているのが、ユイには精いっぱいだった。
「あんたが、ユイちゃんかい?」長い黒髪の、赤いスパンコールのドレスを着た女が、両手にグラスを持って近づいて来た。何処か日本人離れした雰囲気を持つ女だ。おそらく、外国人の(黒人の)血を引いている。一つをユイに手渡し、「可哀想に、アンタ。ハイブを助ける〝カタ〟にされたんだってね」
「カタ?」
「身代わりってこと。珍しいことだよ。女一人でハイブ一つ、丸々見逃されるなんてことは。そんな価値のある女、ここにはいないよ。自慢して、いいんじゃないかい?」。女は、グラスの中身を一口啜り、「ま、これから歩む運命は、たいして変わらないだろうけどね」
「運命?」
「ここにいる女たちはね、みんな、こいつらに襲われたハイブの生き残りなんだよ。逃げようとして捕まった奴だとか、殺されるはずが気に入られた奴だとか、細かいこと言うと、色々いるけどさ」。彼女は、思い出したように右手を差し出して、「私はミシェル。ここに来て、もうすぐ1年になる」。おそるおそる握り返した。大きな手だ。「一年以上、生き延びる奴は、まれだよ。ここじゃ、女は玩具でしかないんだ。人間の尊厳を捨てきれない奴から死んでいく」




