浮き出た悪意・4
アオナシに限ったことではないだろう。家政の授業や、科学の実験などではホームルームを使わない。特別教室棟という場所があって、そこの施設を使う。
これがまた、なんとも陰気臭いもので。文化系の倶楽部でも、特に胡散臭い娘たちが愛用している建物だったりもする。黒魔術会だとか。ここへ来ると、超自然の力でも受け取ったかのように活発になる娘も、クラスに一人は居るものだ。
「あら」
「どうしたんですの」
「この椅子、なんかガタガタしてるんです」
「……それってもしかしてお肉が豊満に――」
「お黙りヒラさん! そんなこと絶対にないんだから!」
元気で有名な三人娘がなにやら騒がしくしている。いつものかしましさとは違っていた。
「あれ、でも、私の席もガタガタです」
「私も私も。……なんか、脚の一本の長さが合ってないような」
三人娘に触発されたのか次々とクラス中から不満の声が上がる。その声は、僕の口からも発せられた。
「なんか、こう……授業を受けにくいなあ」
僕の座る椅子は、背もたれが緩くなっていた。
「お前はそもそも授業受けるつもりなんかねえだろ」
「てへへ……君からそう言われるとなんだか照れるなあ」
「その反応は『お前ってかなり可愛いよな』とか言った時にしてくれ頼むから」
言葉の前借をする女、梨山羅紗です。
「ここを最後に使ったクラスってどこだい」
「【巨蟹宮(高一)】ですわ。あちらさんは不便じゃなかったのかしら、こんな状態で」
僕が誰ともなくそう聞くと、クラスメイトの一人が答える。これはこれは。偶然にも程っていうものがあるだろうに。
「…………」
「諫早?」
ほんの数秒前まで軽口を叩いていたのに、すぐ彼はダンマリを決め込んでしまった。 この一連の騒動を見て、酷く思慮気な顔をしている。
「俺は経験があるんだよ、こういった遠回しで陰湿なものに」
「僕は経験が直接はないけれど、他人のそれを解決したことがあるし、なにより、これの前兆は掴んでいる。それも何回も」
それでもクラス単位で攻撃してきたのは初めてだ。先日の報復か、あるいは別件か。きっかけすら断定できない。如何にしろ、静観することはできないか。




