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そんなに僕を殺さないで  作者: 立派な人
5/8

「その2 ゲート」

太陽もだいぶ高く昇った頃。

途中、何度かタチション休憩を挟んだジープ旅行も、やっと目的地に到着したようだ。


ジープから外を見ると、ゲートらしきものがあり、そこで何かの手続きをしているようだった。

ゲートの両脇にはゲームにでも出て来そうな重機関銃が2台ずつ設置されており、警備兵らしき者たちも、ラフな服装ながらイカついライフル銃を装備している。



サバゲー会場は、境界線付近に広がる原野地域である。



このサバゲー・ツアーの売りは、日本国内はもちろん、諸外国でも、通常、人間に対する使用や場合によっては所持までが規制されている兵器を用いて、危ないながらも本格的なゲームを体験できることにある。

この地域は、未だ何が起きてるのかよく分からん境界線の向こう側の世界の影響を受けてか、他の諸外国とは異なる法規制が支配している。


たまに境界線の向こう側から漏れ出てくる様々な脅威に対処するため、軍隊はもちろんのこと、民間人においても、通常では考えられない武器や兵器を所持・使用することが認められているのだという。


もちろん、このサバゲー・ツアーでも人間を殺すような実弾は使用不可だが、真摯な同意と契約があれば、場合によっては骨折くらいはしそうなゴム弾等を用いた戦闘ゲーム行為も、合法的に認められるということだ。



ふと、ゲートの向こう側で、けたたましいサイレン音が鳴り響くのが聞こえる。

消防車か、救急車か。

何だかさっぱり分からんが、その物騒な雰囲気が、これからの激しいゲームを想起させ、掌にじわりと生暖かい汗をかかせてくれる。



続いて、ジープの運転手の男が、乗員・乗客たちに大声の英語で何かを指示し始めた。


「あー、パスポート出せってよ。持ってるか、兄ちゃん?」

さっきの日本人のオッサンが教えてくれたので、俺はそれに頷くと、ウェストポーチからパスポートを出して、オッサンに預けた。



その後、いろいろと車内の検査等が行われた後、一人の警備兵らしき者と、ハンドガンのみを腰に差した中年の男が、ジープの後ろ側から何やら説明を始めた。

仮に英語だとしても分からんが、訛りがスゴイのか何なのか。

英語かどうかさえよく分からない。


説明はそんなに長くなく1分程度のものだったが、俺には何もかもさっぱり分からなかった。

俺が困ったような顔をしていると、例の日本人のオッサンがまたまた説明してくれた。

「あははは、スゲェ―なー、こりゃ。俺も初めて来たが、さっすがサバゲーの聖地よ。全世界から筋金入りのマニア達が集まってるのかもな。このゲートをくぐったら、もうゲーム開始みたいだぜ。何でも、ゲートの向こうでは、107人までは殺しても構わないんだが、108人以上はダメだそうだ。唯一の重要なルールだから、よく覚えておけってよ。」


「え?ゲートを超えたら、いきなりゲーム開始なんすか?」

俺はさすがに信じられなかったが、オッサンのほうもそりゃそうだといった様子だ。

「いや、さすがにこのジープ内での無差別殺人はあるまい。まだ、ゲームの目的も勝敗の基準も、優勝賞品だって分かってねーんだ。チーム戦になる可能性は高いだろうしな。いきなり暴走する頭のおかしいヤツもいるかもしれんが、さすがにそれは、普通はねーだろ。」


といいながら、オッサンは足元のリュックサックからハンドガンを取り出した。

「これはな、実弾も打てる本物の拳銃よ。ただ、実弾の代わりにこの地域での使用が認められてるゴム弾が装填してあるけどな。コイツをぶっ放してみたかったのよ、あー、いいねー!ゲートを超えたら、早速2~3人殺っちまうか?日本じゃ所持してるだけで犯罪だから、ゴム弾さえもなかなか打つ機会がなくってな。」


ぃゃぃゃぃゃ、俺のほう、完全に丸腰だから。

狼の巣に飛び込んだ、美味しいソース付きの仔羊さんだから。

今、このジープにいる連中が一気に発砲し出したり、ゲートを超えた瞬間にジープが襲撃されたりしたら、どーにもならんからね、コレ。

オッサン、準備良すぎなんですけど。

こーゆー状況になるの知ってたわけ? ズルくない?



なんて悲惨な思考をしてると、よく見れば、ワイシャツの袖口とか襟元とかから見えるオッサンの肌。

絵に描いたような刺青だらけ。

あのー、その筋の方ですかい?


ですよねー。

そんな方々でもなきゃ、こんなムチャなサバゲー・ツアーなんか参加しませんよねー。


鬱。


そんな言葉がピッタリの気分だ。



「しかし、倒せる相手の上限があるんすね、ビックリっす。」

「そうだなー。やっぱり、ゲートを超えたばっかりの初心者とかを愉快犯的に撃ちまくるヤツが絶えないんだろ、きっと。それじゃーつまんないってことで、一応、殺せる人数を絞っておいて、ちゃんとゲームで楽しめよ!ってことなんじゃねーか? 俺、頭いい?」

見れば見るほど怖いとしか思えないオッサンだったが、その表情は少しだけカワイかった。


「なるほどー、それっぽいっすね。なら助かりますよ。俺、今、何にも武器なんて持ってないですし、襲われたらそれで終わりっすからね。」

俺は、オッサンの機嫌を損ねないよう、笑顔で相槌を打つ。



そうこうしていると、警備兵らしき男から、ジープの各乗員・乗客に1枚ずつ紙切れが配られた。

英語で書いてあるが、スマホの辞書で調べないとよく分からん。


とか思っていると、オッサンが優しく説明してくれた。

「例の108人ルールの誓約書だってよ。本当に誓約するなら……、そこの、ほら。下線のあるところにサインしてくれだってよ。」

そこで、俺は、オッサンにボールペンを借りると、サラリとサインして警備兵らしき男に渡した。



また、しばらく待っていると、今度は、例の警備兵らしき男が俺のパスポートと腕時計のような金属の腕輪を手渡してきた。

「右の手首に付けろってさ。」

オッサンが説明してくれる。


俺は、オッサンがやってるのをマネして、右手首に、その鮮やかな青い腕輪を巻き付けた。


すると、別の警備兵らしき男がやってきて、何やらよく分からん機械で腕輪を包み込むと、「パキン」という小さな金属音とともに、腕輪が完全に固定された。



腕輪には小さな液晶のような画面があり、「108」と表示されている。



おそらく、1人殺すごとに1ずつカウンターが減っていき、「0」になったとき。

ルール違反として、退場とか、罰金とか、何かのサンクションが課されることになるのだろう。

しかし、俺が何人殺したかなんて、どーやって確認するのかね?

自己申告制?

さっぱり分からん。



こうして一連の手続きが終わると、俺らを乗せたジープは、他の2台とともに、ゲートの向こう側へと進んで行った。



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