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17/19

一六

 翌日、南風さんは学校を欠席した。

 綾垣担任によると、今朝方、『体調不良のため休みます』との連絡があったそうである。無断欠席でないのは朗報だったが、心配の種はつきない。


「お嬢ってば、よっぽどショックだったのかなあ。まあ、あんな一生懸命猫かぶりまくってたわけだし、そりゃあダメージおっきいよね。いまごろ、枕に顔をうずめておいおい泣いてるのかしら……」


 帰りのホームルームが終わると、美樹原がだるそうに首をまわしながら、放言する。


「おいっ。そういうこと、あんま大声で言うな。お前、南風さんに恨みでもあんのかよ?」


 クラス内で、南風さんの裏の顔を知っているのは俺と美樹原だけなのだ。


「いんや? 恨みなんて、あるわけないじゃん。アタシ、あの子に恩があるんだよ?」


「なんだって……?」


「いや単純に、中学時代、あの子に助けられたことがあるのよ。駅でガラの悪い連中、レディースって言うのかな、趣味のいいカッコした人たちにカツアゲされそうになってさ。そこへ流浪の用心棒めいたあの子が現れて、バッタバッタとやっつけてくれましたとさ。アタシって、一度見た顔は絶対忘れないから。一目であのときの女の子だってわかったわ」


 衝撃の告白を聞かされて、俺はあんぐりと口を開けた。


「ま、マジでかよ……」


「だからなおさら、幸せになってほしいんだよねえ。ほら、あの子って超がつくほど無理してる感じじゃない。なんでまた、あんなキャラになろうとしたのか……あのままでも充分魅力的だったし、慣れないことはしないほうがいい気がするんだけど……」


「そういうものなのか……」


 同性の目から見ると、南風さんの変貌ぶりは不自然に映るようだ。異性の俺は、まんまとその姿に心を奪われてしまったわけだが……。


「ま、それはあんたにも言えることだけどね。どんくさい兄(あん)ちゃんかと思いきや、いきなり『バキ』みたいにぶっ飛ばすんだもん。人は見た目によらないって言うけど、ちょっとあんたたちは常軌を逸してるわ。単刀直入に言うと、キャラ濃すぎ!」


「いや、あの、すみません……好きでこうなったわけじゃないけど」


「別に謝らなくていいよ。助けられたのは、こっちだし」


「そいや、顔……だいじょぶか? かなりきつくビンタされていたけど……」


「ん? 心配ご無用。平気の平左って感じだから」


「そいつはよかった……」


 カラカラと笑う姿を見て、俺はほっと安堵した。最初は意地悪な女かと思っていたが、強気で、肝が据わっていて、細かいことは気にしない性格のようだった。またも、反省しなくてはなるまい……。


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