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潔癖巫女は一途な毒に溺愛される  作者: 泉花


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9.自慢の姉と妹


♡♡♡ 九 ♡♡♡


八ツ俣封印のために姉妹で作戦会議だ。


「やるべきことは二つ。一つは八ツ俣と交戦し、被害を広げないこと。二つ目は巫女をそろえること。守里ちゃんを迎えにいって千種ちゃんを取り戻す」


「はいはーい! アタシは八ツ俣のとこにいっきまーす!」


育葉の提案に、夏生が前のめりになって挙手をする。


「ワタシは守里ちゃんのところに。この怪我では歌うのに支障が出るから」


戦闘となれば頭部の傷が開くかもしれない。


絢芽は守里のもとへ行き、ついでに結界を展開すると役目を名乗り出た。


結界張ると簡単には言うが、なかなかに難しいこと。


平然と巨大結界をつくってしまう絢芽はやはり姉妹の中でも強者だった。



二組に分かれ、私は八ツ俣のもとへ向かうことに。


守里を迎えに行く上で、足の速い珀斗の協力を得ることとなった。


しかめ面をしていた珀斗だが、育葉のお願いには逆らえず大人しく背中に乗せて飛んでいった。


八ツ俣封印の先陣を切ることになり、早速問題が発生する。



「ここから暁月村まで距離があるけどどうするんだ?」


それなりに距離があるため、一、二日ではたどり着けない。


それこそ珀斗並みのスピードがなくては、八ツ俣の被害は広がるばかりで手遅れになってしまう。


危機はこれからだという時に足止めされて頭を悩ませていると、八恵が一歩前に出て大きく深呼吸をした。



「あたしがお姉ちゃんたちを連れていく」


強い意志のこもった言葉に八恵の緊張した面持ちを凝視してしまう。


落ちつきなく視線をさまよわせているが、すぐに立て直して凛と顎を引いて胸に手を当てた。


「水神様にお力を貸してもらう。大丈夫、水神様は優しいから」


一言一言、口にするのはどれほど勇気を必要としているだろう。


私の目を真っ直ぐに見つめ、唇をぎゅっと締めて口角を引き上げた。


「穂乃花お姉ちゃんが勇気をくれたんだよ」


天つ少女の微笑みに息をのむ。



この子はもう大丈夫だ。


姉としてはさみしさもあるけれど、何より誇らしい気持ちに目頭が熱くなって大きく縦に頷いた。


「水神様。力を貸してください。千種お姉ちゃんを取り戻したいんです」


波打つ髪が亜麻色から黄金に変化する。


どれだけ空が暗雲に覆われていようとも、その輝きだけは損なわない。


水陽炎のゆらめきが髪を撫でて、青白い手足が伸びていき、スッとした目元が柔く細められて私たちを一瞥した。



「色々とすまなかったな。あやつには関わりたくない。放っておけばいいが、この地に住むものにはそうもいかなかった。なにより八恵の頼みだ。私が聞かぬわけにはいかないだろう」


「水神様……」



はじめて見る水神様は八恵の面影を残しつつ、ずっと艶めかしい雰囲気だ。


八百万の神々の中でも上位の存在であり、圧倒的神々しさに目を見張っていると、水神様はその身を変貌させる。


川のせせらぎ音を鳴らす天の川に似た眩い龍だ。


水神様の姿を借りながらも中身は八恵のようで、丸っこい穏やかな目が私を映し、甘えん坊になって長い髭で頬ずりをしてきた。



「八恵ちゃん、くすぐったいよ。……ありがとう。すごく綺麗だよ」


穂乃花の言葉に八恵は瞬きをして尻尾を左右に揺らす。


稲穂を纏った黄金の胴体。


一枚一枚の鱗は星を張り付けた繊細な輝きを放っていた。


「いやーっ! 八恵、お前スゲーな!」


夏生が龍の身体をバシバシと叩くと、八恵が金色の尻尾で夏生の身体を叩く。


「いてっ! ごめんて! その姿だと力半端ねぇな!」


(八恵ちゃん少しだけ強気……)


少しだけ自信が湧いたようだ。


これだけ威厳ある姿になればある意味当然かもしれない。


私たちが背に乗りやすいようにかがんでくれた。



「穂乃花」


器用に乗り込んだ深琴が、王子様みたいに紳士な顔をして私に手を差しだしてくる。


こんなことをされると乙女心が揺らがないはずがなかった。


それでもやっぱり悔しいと唇を尖らせ、その手に引いてもらう。


夏生も乗り込むと一気に上空へ飛び立ち、霧雨を突き抜けて煙嵐に隠れていたあかね雲を見た。



「八恵ちゃん、お願いね」


湧き水のようにひんやりとした八恵の肌をそっと撫でる。


私の声かけに八恵は猛スピードで空を駆けた。


あまりの勢いに身体が浮きそうになったが、深琴が腰をつかんで支えてくれる。



(大丈夫。みんな千種ねぇが大好きだ。八ツ俣になんか負けないんだから!)


必ず千種に声は届く。


八人姉妹の長女は凄いんだって、八ツ俣に思い知らせてやると胸を張った。


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