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潔癖巫女は一途な毒に溺愛される  作者: 泉花


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5.姉にキス


「ねぇ、珀斗さん。育葉ちゃんに会いに行こう?」


結局、これくらいしか私に言えることはない。


すれ違いの原因は誰も育葉の気持ちを聞いていないことなのだから。


「……育葉を困らせる」


「うん。悩むかも。でもね、困るかどうかは育葉ちゃんが決めることだよ」


そして珀斗が何も言わずに去ると、育葉の心に穴を開けてしまうことを理解してほしい。


空に浮かぶ青い月のように欠けて、金色の瞳に焦がれたまま色を変えられずに過ごすんだって――。





珀斗をつれて山小屋の前へ戻ると、焚火を見つめたままボーッとする育葉がいた。


少し離れたところで夏生が腕を組んで様子を伺っている。


パチパチと弾ける音と、鈴虫の鳴き声が二人の間に流れる静けさを強調していた。


「育葉ちゃん。夏生ねぇ。話があるの」


私の声に二人はハッと顔を上げる。


私の後ろに大人しく珀斗が付いてきている姿に目を丸くし、珍しい光景に育葉が小走りに寄ってきた。



「どうして珀斗が? もしかして仲良くなったの?」


だったら嬉しい、と可憐に髪を耳に流して頬の紅潮を隠そうとする。


愛らしさを増す育葉を前に尻込みをする珀斗の背中を、私はじれったく感じて強く背中を叩きつけた。


「穂乃花ちゃん!?」


育葉の素っ頓狂な声に、一番に反応したのは夏生だった。


「おい、穂乃花! 何考えて……」


動かなければ何も変わらない。


育葉も夏生も、ちょっとは本音でぶつかり合うことを覚えればいい。


私に出来ることなんて、二人の妹としてぎゃん騒ぎするくらいだと、二人の首にさがる勾玉を奪取した。


「えっ!? 穂乃花ちゃん一体なにを……!」


「結局こうするのが一番いいと思ったの!」


これは挑発だ。


私たち巫女姉妹にとって勾玉は命にも等しい大事なものだ。


これを奪えば動かざるを得ない。


もどかしい現状を打破できるならば何でもよかった。


「私が勾玉を集めてなんとかする! お姉ちゃんたちは待っていればいいの!」


「なに勝手なことを!」


「勝手なのは夏生ねぇもでしょ!?」


この腹立たしい気持ちは抑えられない。


怒鳴るのをやめられなくなった私に、これは逆鱗に触れてしまったと二人は顔面蒼白になっていた。


「どうしたいか、決めるのは育葉ちゃんだから! 夏生ねぇが勝手に決めていいことじゃないんだから!」


「ふざけんな! ちゃんと話しただろ!? 育葉の幸せのためにはこれしか……!」


「夏生?」



ハッと息を呑んだときには遅かった。


夏生の背後で育葉が笑顔を浮かべて肩に手を伸ばす――その目は笑っていなかった。


底冷えする冷たさに夏生が震え、それを私は手を合わせて見守ることにした。


「ぎゃああああ! 育葉! ちょっ、ギブギブ!」


ゴリゴリと頭部を拳で押さえつける音がする。


あれは結構痛いんだよなぁ、と苦い記憶に遠い目をした。


「何を隠してるの? 穂乃花ちゃんたちを巻き込んでバカなことを……!」


「ばっ……バカなことじゃねえやい!」


夏生も黙ってはいられずにやけくそに吠える。


お冠状態の育葉に、夏生は歯を食いしばりながら眉をひそめていた。


「アタシはただ、育葉に幸せになってほしかっただけで……」


夏生は舌打ちをし、育葉を突き飛ばすと大股に珀斗に詰め寄る。


「おめぇがハッキリしないから! お前がもっとわかりやすく行動してくれなきゃ困るんだよ!」


珀斗の襟元に掴みかかって溜め込んだ強い感情をさらけ出す。


一切抵抗もせず、夏生の攻撃を受け止める珀斗に、ますます夏生の憤りは過激になっていく。


「何なの!? 私だけ何もわかってないみたいじゃない!?」


事情がわからなければ泣くに泣けない。


育葉は裏返る悲痛な声をあげ、寄る辺なさにその場にしゃがみ込んで顔を伏せた。


夏生は育葉を呼ぼうとして手を伸ばしたが、伸ばしきれずに足を止める。


わずかな差で先に飛び出たのは、珀斗だった。


そこからの光景は誰もが硬直してしまうとんでもなく大胆なものだった。



(えっ……えぇ!? 噓!? きゃーっ!)


自分が見てもいいものか戸惑ってしまうが、乙女心と野次馬根性で釘付けになってしまう。


育葉の両頬を包み、若干強引に上を向かせて唇を奪う珀斗がいた。


しっとりとした粉雪のキスに育葉はポカンと魂が抜けており、徐々に耳を赤くして溶けていた。


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