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潔癖巫女は一途な毒に溺愛される  作者: 泉花


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4.双子の姉妹


「穂乃花ちゃんが勾玉を集めているの? 私たち、どう動くか悩んでいたのよ」


長い黒髪を耳の下で二つに結った育葉は、夏生より目元がおっとりしている。


癒し効果抜群の見た目と声は私に安らぎを与えてくれた。


一瞬ほっとするも、キビキビ動き出す面倒見のいい姉の顔に、すぐに背筋がシャキッと伸びた。


「勾玉のことなんだけど、今は……」


育葉の問いに答えようとして、視界に壁際の棚に整頓された薬草の束を見て口が止まる。


育葉はすでに煎じてある薬湯を用意すると、爽やかな笑顔を浮かべて私に飲むよう促した。


「飲まなきゃダメ?」


「だーめ。まだ熱があるんだから」


やさしい顔立ちのわりに育葉は気が強い。


体調を崩して幼心に戻った私は甘えたい気分なのに、育葉は手厳しかった。


薬を受け取ると一気に喉に流し込む。


あまりの苦さに涙が出そうになり、舌を突き出して味からいち早く解放されることを願った。



「うみちゃんは?」


湯のみから口を離して、一人一人の顔を見ていく。


ここにいるのは育葉と夏生、そしてずっと心配の眼差しを向けてくる深琴だ。


「うみっこには食事の準備をしてもらってんだ」


夏生は深琴のとなりに足を組んで座り込む。


大きなあくびを隠しもせず、親指で山小屋の外を指した。


「うみちゃんは料理が上手だから。今は外でテキパキ頑張ってるかな」


見た目こそ幼子だが、植実は姉妹の中でもしっかりものだ。


料理に関しては姉妹で一番の腕を持ち、これから出てくる料理は間違いなくおいしいと喉が鳴った。


「いや、アタシが作るって言ったんだけどよぉ」


植実が全力で止めたのだろう。


もし夏生が作れば焦げた魚しか出てこない。


穏やかで争いごとを避けたがる植実でも、夏生の料理だけは断固として拒否していた。


何はともあれ姉妹の様子もわかり、安心して胸を撫でおろす。



「すまねぇ。ちょっと、外出てるわ……」


「えっ!? 深琴、外は……」


雨なのに、と言い切る前に深琴は山小屋から出て行ってしまった。


滅入った様子に、追いかけそうになる……が気持ちにブレーキをかける選択をした。


(追いかけたいなんて……。だって私たち、そんなのじゃないのに……)



深琴は許されないことをした。


乙女を凌辱したのだから私は徹底して突き放すべきだ。


それなのにどうしてか、気持ちが煮え切らない。



「穂乃花ちゃん。……無理、してない?」


「えっ?」


汗ばんだ手に育葉の手が重なり、考えていることを見透かされた気がして心臓が跳ねた。


「ごめんなさい。本当はみんなが千種ちゃんのところに集まればいいことなのに」


「よかっ……」


深琴を心配しそうになったことに気づかれたかと思ったが、そうではなかった。


見透かされなくてよかったと安堵するも、すぐに育葉の言葉に焦りが浮上する。


「ちがう! 儀式が失敗したのは私のせい! 私が勾玉を集めてそれで……」


それで姉たちの苦労がなくなるわけではないのに?


勾玉を集めたところで、姉たちの協力がなければ八ツ俣は封印できない。


私が勝手に罪を感じ、一人で勾玉を集めようと躍起になっているだけだ。


(千種ねぇ……)


姉妹たちを引っ張ってくれた心優しい長女を思い出し、喉の奥がズキズキしだす。


「人柱となって八ツ俣を封印する」と告げたときの苦痛に満ちた顔は忘れられない。


だから余計にまやかしのような甘い言葉に心が揺れたんだ。


“人柱にならなくていい”


深琴の言葉が張りつめていた私の希望になった。


たった一言がいつのまにか私を支えていた。


(なんで……よりにもよって深琴なのよ!)


行き場のない葛藤に歯を食いしばる。


すると育葉が私の背に手をまわし、柔らかに包み込んできた。


「育葉ちゃ……」


「どうして穂乃花ちゃんが責任を感じるの?」


「私が怖くなって力を使っちゃったから……」


「怖かったのはみんな同じだろ! アタシらは千種ねぇの言葉で覚悟を決めたけど、絶対に成功するかなんてわかんなかった! 誰にでも揺るがす可能性はあった!」


過去に怯える私に、夏生が前のめりに過去を訂正する。



あの瞬間の恐怖。


そして目覚めてからずっと抱えていた罪悪感が震えだす。


姉たちは一貫して優しすぎる。


いっそのこと私を責めて責めて責め抜いてくれればいいのに。


「封印に失敗し、穂乃花ちゃんは私たちをこの時代まで飛ばした。それだけよ」


「まぁ、失敗したのは穂乃花のせいじゃねぇってことだ! アタシは別に理由があると思って……」


「もう夏生ってば! あなたはどうしてそう話を飛躍させて!」


「いてっ! ごめんって! もう喋らない! 喋らないから叩くなって!」


どうやら育葉と夏生には別の考えがあるようだ。


何も知らない私のペースを考えて話そうとする育葉の気づかいも、夏生が能天気に口にしてしまうので台無しだ。


だがそんな双子ならではの空気が懐かしく、頑なな心が解れていくのを感じた。


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