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〈12〉リスタート

四月、信也は瑞ケ丘ハウスエステートも退職し、実家に戻った。

実家に戻り、一軒家の家で一人になり、最初に感じたのは孤独だった。

寂しい……。

あまりにも寂しかった。

今まで六畳一間のアパートだった。部屋の狭さは感じていたが寂しさは感じていなかった。部屋はほとんど寝るところ。アパートを出て、少し通りに出れば賑わいもある。

しかし、実家はただの住宅地。しかも家と家の間隔も広い。空が広い。

いや、何よりも一人住むのに部屋数が六つと多い。

しかも三階建てと大きいせいか、その広さがかえって孤独を感じさせる。

それに第一、静かすぎる。

実家に戻る前までは都会の喧噪が誤魔化していたが、実家に戻り、たった一夜を過ごしただけで自分が孤独であることをまざまざと教え込まされた。

信也は老人ホームにいる父を思った。

親父は母が亡くなってから、こんな寂しい暮らしをずっと一人でしていたのか。

一軒家で一人で生きるにはあまりにも寂しすぎる。

頑固な心を持っていてもこれでは折れるのは当たり前だ。

信也は自分に自問自答した。

ここに楽しみはあるのか?

喜びはあるのか?

一番大切な心の支えはあるのか?


信也の心の支えは、麻衣子のビートファイトだった。

しかし、実家に戻ってきてここから青葉スポーツセンターまで片道四十キロ、車で二時間はかかる。とてもたった一時間のレッスンのために実家から通うことなど考えられない。現実的ではない……。

しかし、信也はふと思った。

ゴルフが好きな人は片道二時間かけてでもゴルフをしに行く。ゴルフの前の日は楽しみで中々寝付けないということを聞いたことがある。

俺にとって小倉さんのビートファイトはゴルフが好きな人となんら変わりはないんじゃないか?

たった一時間かもしれないけど楽しみには変わりはない。

今の人生、唯一の楽しみなんだ。

片道四十キロ、本当に通えないか?

人生、唯一の楽しみなら通える。

たった二時間で小倉さんに会えるのなら通えるはずだ。

別に実家に戻ったからって小倉さんのビートファイトを辞める必要はないんだ。

二時間かけて車で通えるなら通えばいいんだ。

楽しみを捨てる必要はどこにもないんだ。

信也はそう思うとどこか気持ちが楽になった。

信也は麻衣子のビートファイトに通うことを決めた。

片道四十キロ、車で二時間かけて。






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