第37話:八組目のお客さんたち
「き、緊張してきたね、レベッカ」
「う、うん、胸がドキドキするよ」
『ネッちゃんは昨日よく眠れなかったニャ』
王様を助けてから数週間後、私たち“カフェ・アンチドート”一同はドキドキしながら食堂で待機していた。
なぜなら今日、王様がお食事を食べに来られるから。
【毒消し】スキルで毒を消したとき、ぜひ一度訪問したいと約束されたのだ。
諸々の下準備は済んでいる。
あとは来るのを待つだけ。
終始ドキドキしている私たちを見て、キャンデさんが呆れたように言った。
「お前たち、もっとシャキッとせんか。そんなんじゃ自信なさげに見えてしまうぞ」
キャンデさんだけは普段通り落ち着いていた。
変に気負うこともなく堂々としている。
こ、これがSランク冒険者……。
この平常心は私たちも見習わなければならないね。
「レベッカ、料理の準備はしなくていいの? 王様来たらすぐ知らせるよ?」
「ありがとう。でも、大丈夫。もうできているから」
準備が大変だから……と、フルコースみたいな大掛かりな料理は作らなくていいと王様には言われていた。
ちなみに、メニューのご希望も聞いている。
こんな料理が食べたい……と伝えられたのだ。
みんな(ロールちゃんとネッちゃん)で深呼吸をしていると、シュウン! と乾いた音が外から響いた。
王様は転送魔法で来るらしい。
きっと着いたのだ。
「行こう、みんな!」
「うん!」
急いでお店の外へ出る。
あの日と同じように、数人の衛兵さんが集まっていた。
私たちを見ると会釈してくれた。
そして、彼らの後ろからは……。
「レベッカ嬢、久しぶりじゃの。元気にしておったか?」
「お、王様っ! はい、元気でございますっ。王様はいかがでしょうかっ」
フリーデン王国の王様がゆったりと現れた。
長い白ひげと長い白髪。
ローブも相まって、偉大な魔法使いみたいな印象だった。
前にお会いしたときは病床に付していたこともあるためか、以前よりずっと元気に見える。
「お主のおかげで完治したぞよ。その節は誠にありがとのぉ……ホッホッホッ」
「良かったです、王様」
「あのときは、ワシもこれまでかと思った。お主が女神のように見えたぞ」
王様は髭を撫でながら穏やかに笑う。
衛兵さんも笑顔だった。
国のトップが回復して、本当に安心したのだろう。
先にみんなを紹介しておくことにした。
「王様、“カフェ・アンチドート”の仲間をご紹介します。こちらは宿屋を一人で切り盛りしているロールちゃんです」
「ほぅ、お主があのロール嬢とな。一人で宿を切り盛りとは素晴らしい」
「よよよ、よろしくお願いいたしますっ!」
ロールちゃんは緊張した様子で、王様と握手を交わす。
王宮に行った日、みんなのことも話していた。
「こっちは猫妖精のネッちゃんです。子どもの頃からずっと一緒にいます」
『ネ、ネッちゃんだニャ』
「キレイな毛並みじゃのう」
ネッちゃんも王様と握手する。
毛並みを褒められ嬉しそうだった。
「そして、あちらにいらっしゃるのがキャンデさんです。Sランク冒険者で、私たちじゃ狩るのが難しい食材を狩ってきてくれます」
「キャンデだ」
「なんと、“惑乱の凶星”ではないか。そんな大物までおるんじゃなぁ」
キャンデさんは握手しないけど、軽く会釈していた。
「それでは、王様。中へご案内します」
「今日は世話になるの」
「いいえ、お越しいただきありがとうございます。皆さんもどうぞ、中へお入りください!」
「冷たいお水もありますよ!」
『レベッカの料理は本当においしいニャよ!』
“カフェ・アンチドート”八組目のお客さんは、フリーデン王国の王様たち。
皆さん、ワクワクした様子で席に着く。
このお店には色んな人たちが訪れたけど、今回はさらに一層特別なお客さんだ。
みんなのためにも頑張れ、レベッカ!
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