第11話:三組目のお客さんたち
「うぅん……この数日で何か月分の収入になったんだろう……」
「ロールちゃん、金貨はしまっておこうよ。キャンデさんは狩りに行ってて不在なんだし」
『不用心過ぎるニャよ』
「はぁぁ~……」
キャンデさんが泊まることになってから数日後。
ロールちゃんは相変わらず金貨タワーに夢中だ。
特に砂金の大粒がお気に入りのようで、毎日磨いては眺めていた。
「さあ、ロールちゃん。キャンデさんが帰って来る前に金貨はしまおうね。ビックリされちゃうよ」
『いくらSランク冒険者が泊まっていても、注意するに越したことはないニャ』
「ほぁぁ~……」
金貨と砂金をロールちゃんから引き剥がし、いつもの場所にしまう。
黄金の輝きが消えると、ロールちゃんの表情はキリッとなった。
「よし、掃除しましょうかっ」
「『ああ、良かった(ニャ)……』」
やれやれと一安心。
ロールちゃんのためにも私がしっかりしなければ。
まずは冷静に料理したい。
常に平常心を心がけよう。
平常心を極めるのだ。
そう強く決心していたら、ちょうどキャンデさんが帰ってきた。
「おーい、毒魔物を狩ってきたぞー。ついでに自生していた野菜もいくらか採ってきた」
「お帰りなさいませ、キャンデ様! お手拭きをどうぞ! お水をどうぞ!」
すかさずお出迎えするロールちゃん。
甲斐甲斐しくお手拭きやお水を渡していた。
「キャンデさん、お帰りなさい。お怪我とかありませんか?」
「別に問題ない。これくらいは朝飯前だ」
「さすがSランク冒険者ですね」
キャンデさんの身体にはかすり傷一つついていなかった。
やはりSランクともなると、その実力は別格なのだろう。
「ついでに血抜きや下処理も済ませてきたぞ」
「え、ほんとですか! ありがとうございます!」
「見つけ次第狩ってきたがどこに置けばいい?」
「キッチンの方にお願いします。私もお持ちしますね」
みんなで食材をキッチンに運ぶ。
中央のテーブルが満杯になるくらいの量だった。
「いやぁ、たくさん採取してきてくださってありがとうございました……って、<どくどくチキン>じゃないですかぁ!」
「い、いきなりどうした」
「レベッカは食材を見たり料理をするときテンションが上がるんです」
『いつものことなんだニャ』
鳥型の毒魔物代表格、<どくどくチキン>。
キャンデさんがお肉の状態に処理しておいてくれた。
この魔物はいつも地面を走っているので、身が引き締まっていておいしいのだ。
食べると体が少しずつ鶏に変化する毒があるけど。
毒消しすればこれほど美味な鶏肉はなかなかない。
「しかも卵まであるんですかぁ! んんん~、素晴らしい!」
「あ、ああ、ついでに採取しておいた。それにしてもすごい勢いだ……」
「料理しているときはもっとすごいですよ」
『まさしくハイテンションレベッカニャ』
<どくどくチキン>は卵もおいしい。
お肉より強力な毒があるけど、毒消しするから問題ないのだ。
そして、卵の横には紫の斑点模様をした野菜が……。
「<トキシントマト>ぉ! この森にもあったとはぁ!」
「だ、だから、急に大声を出すんじゃないっ」
「慣れるしかないです」
『慣れれば平気だニャ』
真っ赤に実った<トキシントマト>。
普通のトマトより数倍も栄養が詰まっていて、夏を思わせる酸味が特徴的だ。
とても丈夫な性質で一年中育つことができる。
その分毒も強く、果汁に当たると肌が焼け焦げてしまう。
さらに隣にはお馴染みの米がある。
「<迷子米>なんて、どこで手に入れたんですかぁ!」
「ダ、ダンジョン近くで自生していたぞ」
「毒食材の知識の広さは本当に素晴らしいよね」
『レベッカ以上に毒食材を理解している人は見たことがないニャ』
最後の食材は<迷子米>。
見た目は薄紫色のお米。
食べると毒により方向感覚がわからなくなり、よく知っている道でもすぐ迷子になってしまう。
危険な毒はあるけれど、火を通すだけで簡単にふっくらおいしく炊き上がるのだ。
稲穂のまま採ってきてくれた。
「こんなにたくさんの毒食材が採取できるなんて、キャンデさんすごいですね。さすがSランク冒険者“惑乱の凶星”です」
「調理できる方が十分すごいと思うが……」
「レベッカは色々自覚がないからね」
『それがレベッカの良いところでもあるニャ』
毒食材を見ていると、それだけで気持ちが盛り上がる。
これでどんなお料理を作ろうかなぁ。
鶏肉と卵にお米とトマト……。
想像が膨らんでしょうがないですよぉ。
今まで集めた食材も使ってあげたいね。
「鶏肉のオムライスとかどうですかね」
「あっ、おいしそう」
「なかなか良いじゃないか」
『ボクも食べたくなってきたニャよ』
外の看板に追加しよう。
キャンデさんはクエストがあるということで、ダンジョンへと向かって行った。
「すみません……開いてますか?」
看板にメニューを書き終わったちょうどそのとき、森の方から三人組の男女が歩いてきた。
すぐお店の中に案内する。
「はい、どうぞ! 開いてますよ! お好きな席にお座りください!」
三人は無言で席に着いた。
だいぶ慣れてきたけど、この瞬間はやっぱり緊張する。
“カフェ・アンチドート”、三組目のお客さんたちだ。
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