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自動車で目指す『異世界“峠”最速プロジェクト』  作者: さけとみりん
孤高の魔法使い編
14/16

なろう系でいこう〜シボネ日常編〜

シボネ一人称です

「おはようございます、師匠!」


「おはようエムダ。今日の朝食はもう作ってあるわ。今朝は卵と野菜で良い物が手に入ったから、シンプルに仕立ててみたの。冷めないうちに召し上がれ」


「うわぁ、美味しそうです!いただきまーす!」



 ダイニングに並べた料理は私手製の朝食だ。

 焼き立てのパンと香ばしい焼き加減のハムエッグ、湯気の立つ野菜のスープの3品は市場で買うときに栄養価の高い食材だけを『鑑定眼』で厳選して調理してある。もちろん味もそこらのレストランにひけをとらないつもりだ。



「うーん、美味しい!」


「ゆっくり、よく噛んで食べてね」



 エムダは育ち盛りなのか良く食べる。作り甲斐のある子だ。幸せそうに頬張る表情を見てから、私も食事に手をつける。



「うん、我ながら良く出来てるわ。やっぱりスープには出汁が効いていないとね」



 この世界では食文化にそれほど頓着が無かったようで、素材の味を使った素朴な味わいのものが多かった。それでは私は納得できなかったので、日本にいた頃の自炊経験を活かして料理をレベルアップさせている。

 最近は料理の噂を聞きつけて、弟子入りや開業のお誘いが来ているほどだ。


 だけどもちろん、私は受けるつもりは無い。

 この世界で静かに、自分のやるべきことをやっていきたいと願っているからだ。


 私は回復術師として転生した。


 だから、人の命を守るために生きる。

 怪我や病気はもちろん、命に関わる危険性も排除する。そして、誰もが理不尽に命を喪うことがない世界を目指す。

 これが回復術師シボネのやるべきことなのだ。


 そして、直近のやるべきことは来週の決闘だ。



「ねえ、今日から決闘の日まで、貴方の強化をしたいんだけどいいかしら?」


「それはもちろんいいですけど、ホントにするんですか?師匠の『やるべきこと』って人の命を守ることですし、決闘なんて危ないですよ」



 エムダがパンをくわえながら私を見遣る。

 たしかに、側から見れば怒った勢いで決闘なんて言ってるように見えるかもしれない。でも実は、ちゃんとした理由もあるのだ。



「あのクルマが危ないのよ。

 現代の安全装置がほとんどついてないし、整備も最悪。エンジンに食用油なんか入れてたらいつか大事故を起こすわ。

 私が整備し続ければ今は問題ないでしょうけど、いずれは乗り換えが必要よ。その提案を早めただけのこと、決闘なんてただの口実なのよ」


「という言い訳を昨日考えたんですね……イタッ」


「減らず口はこの口かしら」



 十歳のほっぺたは餅のようによく伸びる。柔らかくてすべすべした手触りを、人差し指と親指でじっくり堪能してやった。



「しゅいふぁふぇん」


「よろしい。まぁたしかに、十分の一くらいはムカついたからってのもあるわ。

 あるけど、一番の目的はアイツの偏見を木っ端微塵に砕いて『MWはなんて速いんだ!俺も乗りたい!』って気持ちにさせることね。

 今後もレースを続けるなら乗り換えは早い方が良い。幸い、MWの複製ならスキルを使えば問題ないし」



 スキル『複製』は『再生』に統合されるスキルの一種で、習熟レベルの高い物体を複製できるスキルだ。

 石や木など単純な素材なら簡単に複製でき、メスなどの道具は使用頻度や構造の理解で複製精度が上がっていく。習熟レベルが最大まで上がれば本物と瓜二つの『複製』が可能となるのだ。

 クルマのような複雑な構造の物はレベルが上がりにくいが、エムダとは10年いっしょに過ごしてきたため習熟レベルはカンストしている。

 MWというクルマだけなら同等のスペックで複製できるだろう。



「それで、辛勝するんじゃ意味無いのよ。圧倒的な大差で勝って見せないと、アイツがMWを欲しがらないじゃない。そのために強化するってわけ」


「なるほどー、そういうことならわかりました!師匠のために速くなります!」


「いい子ね、ありがとう」



 万面の笑顔を浮かべるエムダの頭をそっと撫でる。

 本当は、エムダを使って決闘なんかしたくない。だけど、今からMWだけを複製するには時間が足りないし、アイツが馬鹿にしたのはMWとエムダだ。

 私のエムダが最強とは言わない。だけど馬鹿にされるいわれはない。その憤りがさっき言った十分の一のムカつきだ。


 このムカつきは決闘で十分に返させていただくわ。人の愛車を馬鹿にしたらどういう目にあうか、よく覚えておくことね。


次回、シボネ改造編に続く、、、

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