24 提案
「僕と、決闘するのはどうでしょう?」
アデルは、艶やかに言った。その言葉に、サイモンは怪訝な顔を見せた。
「決闘って、なんでだよ」
「そのままの意味ですよ。ただし、条件をつけましょう」
その言葉に、サイモンは楽しげに口端を上げた。
「もしも僕が勝ったら、僕たちの事業に協力してもらいます」
「俺が勝ったら?」
そうですね、とアデルは少し考える。やっぱり、サイモンに徳があると思わせなきゃいけないから‥‥なんだろう。もう二度と声優には誘いません!じゃ、弱いかな。マイナスかゼロしかない感じ。
でも、アデルは自信ありげな顔をしている。何かとっておきの餌があるのだろう。
「そうですね。ケイト様と結婚するのはどうですか?」
「「はあ?!」」
私とサイモンは同時に立ち上がり、アデルに詰め寄った。
「な、ん、で!勝手にそういうことを言うのかしら?」
「俺、罰ゲームしかねえじゃねーか!」
「誰との結婚が罰ゲームよ!!というかこっちも願い下げだわ!」
しかし、私とサイモンの言い合いになりそうなところで、アデルは笑顔で爆弾発言を投げ込んだ。
「何を言っていますか。ケイト様との結婚などご褒美ではないですか」
「な‥‥‥」
何言ってるのよ。何言ってるのよ!!もう、恥ずかしいじゃない。最近のアデルは、私にベタ褒め過ぎる。人前なんだから、気をつけてよ。まあ、全然いいんだけどね!
「こいつ、頭大丈夫か‥‥?」
「ちょっと!」
「だって、そうだろう?この女との結婚をご褒美とか‥‥」
「なんでそういうことを言うのかしら?女の子に優しく出来ない男はモテないわよ」
「それを言うなら、俺だってお前の過去の所業言わせてもらうぜ‥‥」
ぎくり。やばい。それは、ちょっと黒歴史。風魔法や水魔法で嫌がらせもしてきたし、女の色気を使ってサイモンが顔を赤くするところをからかったこともあったし、嫌味なんて自分のことを棚に上げて破茶滅茶に言っていた。前世を思い出していなかった私はかなり性格が悪いのだから、それを言われるとキツい‥‥‥
「お前、覚えてるよな‥‥‥‥‥‥俺が騎士ごっこしたいって言ったにも関わらず、お前は無理やり姫さまごっこに付き合わせてきただろう!!」
は?
「は?」
「一生、恨むからな」
うん。やっぱりサイモンは馬鹿だ。何その、ありきたりな可愛らしいエピソード。ダメージも何もないんだけど。
「ねえ。もっとあるでしょう?私に恨み‥‥」
そんな10年近く前のことじゃなくて、数年前とかのがあるでしょう。
「はあ?あとは‥‥‥ああ。俺を馬にして、お馬さんごっことか言って高笑いしてたな」
「それ9年前の話!!」
子供の話じゃん。よくあることじゃん。というかサイモンは2歳年上なんだから、それくらい面倒見てくれたっていいじゃん。そこムキになるところじゃないでしょ!!
そんな私の気持ちに気づかず、サイモンはビシッとアデルに指を指した。
「とにかく、絶対こいつとは結婚しねーから」
格好つけて言うことじゃない。
「まあ、いいですよ」
アデルは口角をあげた。
「それに、どうせ僕が勝つので。関係ないのでは?」
その言葉に顔色を変えたのはサイモンだった。空気がひりつく。サイモンは下からアデルを睨みつけた。
「そこまで言われて引き下がるのは、スティール家じゃねえな」
彼は、は腰に下げていた剣を手に取り、そして掲げた。
「受けて立つ。その代わり、俺が勝ったら何でも言うことを聞いてもらうからな」
「‥‥‥」
「なんだ?どうせ勝つから関係ないだろう」
「ええ。そうでしたね。では、始めましょうか」
アデルは微笑み、サイモンを、訓練場まで連れて行く。もちろん、私もついて行った。
応接室で話していたので、訓練場までは結構距離がある。応接室は大切なお客様を迎える場所だから、騒がしくなりがちな訓練場とは1番離れた場所にあるんだよね。
私は、その長い道中で、アデルにコソッと話しかけた。
「ねえ、あんな強気なこと言って大丈夫なの?勝てる?」
あれでも、スティール家の長男だ。トップの騎士団を支える家督を継ぐほどの才能はなくとも、騎士としての実力は同年代の中でトップクラス。王宮騎士団では、役職を務めることも出来るほどだ。
「多分、負けますね」
「は?」
「うちの団長より、強いと思いますよ。彼は」
「なんっで、あんな勝負仕掛けちゃったのよ‥‥」
本当に。なんであんなに煽ったの?負けるかもしれないのに。しかし、アデルはさも愉快そうに笑った。
「とっておきの秘策があるんですよ」
そして、彼は私に耳打ちした。耳がくすぐったくて、意識が飛びそうになったが、なんとか持ち堪えた。それにしても、彼の提案はなかなかナイスなものだった。
「なるほどね。その提案、乗るわ」
「ありがとうございます」
さて。強いけれど、馬鹿で天然で、強いのに、繊細でガキなサイモンの目に物を見せてやろう。
私と、アデルの共闘だ。




