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戦国の片田順  作者: 弥一
戦国の片田順 2

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北城壁

『第二軍』が『悪魔の塔』まで前進した。『速歩そくほ』または『駈足かけあし』という速度だ。時速でいうと八キロメートル前後の速度だった。

 この速度は、移動完了後すぐに戦闘行動に移れる速度として、軍隊ではよく使われる。


『悪魔の塔』からムーア城の北城壁までは約一キロメートルの距離がある。『速歩』で移動すると、およそ七分半だ。

 敵兵が就寝状態から臨戦態勢に入るまで五分の時間が必要だ。レオナルド・ダ・ヴィンチが、そう言っていた。

 そして兵舎のある『カスバ』地区から『港』地区まで移動するのに、何分かかるのか。城の内部がどのようになっているか、わからない。しかし、かなりの高低差があることもあり、五分以上、もしかしたら十分くらいかかるかもしれない。

 あわせて、十分から十五分だろう。新藤しんどう小次郎は、そう考えた。


 それまでの間に『港』地区に『第二軍』が進入していなければならない。


「速歩でムーア城北城壁まで前進」小次郎が『第二軍』にむかって小さく叫ぶ。三百人が一斉に砂浜を蹴って前進しはじめた。

『金剛』が『第二軍』に無線で呼びかけたのが、この時だった。

「今は無線に答えなくていい、この先の突撃予定地点で連絡する」小次郎が傍らを走る無線兵に言った。


 左手は高く聳える岩山、右手には墓地と菜園らしきものが広がる。


『第二軍』隊長、新藤小次郎は知らなかったが、『ムーア城』天守てんしゅから、直接『悪魔の塔』を見通すことはできない。

 塔が発した鐘の音を捕えたのは、城からさらに登った監視所だった。そこからならば、眼下に『悪魔の塔』が見える。

 監視所の兵が、間を置いて、二連打を三回続ける。これは塔から、何らかかの信号が送られてきたが、何かは不明だ、という信号だった。

 信号には、他にも『陸上兵が北からやってきた』、『東海岸に敵艦が接近した』など、いくつかの組み合わせがある。

 今回は塔が鐘を四回連打しただけだったので、意味不明だった。


 監視所の兵が相談し、その意味不明の信号をどう解釈するか考える。これといって、思いつくこともない。

 彼らの下を前進している片田商店『第二軍』については、監視所が切り立った崖の上にあるので、見ることができない。

 そこで、『悪魔の塔から、信号が来た』ということを『ムーア城』天守に連絡した。


「塔から、なにかの信号が来た、というのか」夜間当直の士官が言った。

「はい、それだけです。塔に連絡兵を出しますか」

「今夜は月夜だったな。念のため騎兵を二騎、塔に送って何があったか報告させろ」

「承知いたしました」

「あと、北城壁の歩哨ほしょうに警戒を怠るな、と伝えよ」


 夜間に二名の下士官を割くことができるのは、『天守』地区だけだ。二人が指名され、騎乗装備を整えて『港』地区に降りていく。北城壁の歩哨に連絡するのも、彼らの役目だ。




『第二軍』が北城壁の近くまで接近して停止した。今はまだ、岩山の影に隠れているが、この地点から先は、北城壁まで月明かりに照らされた砂浜だった。

 その距離は百五十メートルほどだ。


 小次郎が軍を停止させ、呼吸を整えさせる。兵が落ち着くのを待っている間に『金剛』に無線連絡し、予定より早く『港』地区に突入することを伝えた。そして、カレクトの王子、マーナを呼び寄せる。

「マーナ、ここから先の百五十メートルは、城から見える場所を前進しなきゃならん」

「そうだね」

「城壁を登る『ヤシノミ隊』が先行することになる」

「わかっているよ」

「我々もすぐ後ろで護衛しながら進むが、『ヤシノミ隊』は次郎五郎じろうごろうと共に城壁を登り、壁の背後に回って城門を開けるのが仕事だ。前進中に反撃をしてはならない」

 忍者の高山次郎五郎が、突入隊を指揮するらしい。


「それもわかっている」

「城門が開けば、そこから我々が進入する。『港』地区を守る敵兵は、いてもせいぜい二十名くらいだろうから、進入すれば我々の勝だ」

「そうだね。扉をあけることを優先するよ」


「それと、最後にもっとも重要なことを指摘する。ここからは命令を叫ぶことはできないので、よく皆に言い聞かせろ」

「わかったよ。一番大事なこととはなに」マーナが尋ねる。

「一刻も早く城壁にたどり着きたいだろうが、ここからも、いままでと同じ速度で走ることだ」

「どういうこと」

「全力で城壁まで走ると、疲弊ひへいして、城壁を登ることができない」

「あぁ、そうだね。わかるよ」

「いままでと同じ速度で走れば、城壁にとりついて、すぐに登ることができるだろう。あそこまでは百五十メートル程だ。同じように走れば一分で到着する」

「そうだね」

「前半三十秒は、まず敵に発見されないはずだ。とすると、彼らが火縄銃を持っていたとしても、一発撃てるかどうか、の時間しかない。そして北城壁の歩哨はせいぜい三、四名にすぎないはずだ」

「うん」

「だから、ゆっくり走るんだぞ、城壁の下で息切れしてしまえば、狙い撃ちされる」

「わかったよ、我々の民に対する心遣いを感謝する」

「よし、では皆に説明するんだ」


 マーナが『ヤシノミ隊』に説明する。彼らが頷く。もう一度、マーナが繰り返したらしい、また皆が頷く。


「大丈夫です。みんな小次郎さんの言う事を聞いて、ゆっくり走るそうです」と、マーナ。

「そうか、では準備が出来たら、出発する」


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