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パン

「亜矢子さん、もしかしたら俺に気があるのかなぁ……へへ」

思春期さながらの妄想をしつつ、ニヤニヤとしながら翔は紙袋を開けパンを一つ手に取る。

楕円型でずっしりとしているそれは、一目見ただけでは何のパンか判別できなかった。

半分に割ってみると、断面は赤くドロっとしていた。

「お、ジャムパンか」

翔はパンにかぶりつく。

だが、二、三度咀嚼して翔は顔をしかめた。

砂糖が多目に使われているようだが、思った味と違っていたのだ。

最低でもこれは苺の果肉ではない。柘榴か何かだろうか、少し苦味がある。

そして亜矢子の焼いたパンにしては、あまり美味くなかった。

次のパンに移る事にし、紙袋の中をごそごそと探る。

手にとったのは、片手で収まるサイズのパイだった。

ほのかに肉の香りがする。

「これは……ミートパイかな?」

翔はザクリ、と音を立ててパイを食べる。

中には味付けされた細かい野菜とたっぷりのひき肉が詰まっていた。

しかし、翔はこの肉が何のひき肉かわからなかった。

恐らく牛でも、豚でも無い。

「うーん、羊か何かかな?」

疑問の答えは見つからなかったがジャムパンと違い美味しかったので、翔はそのままミートパイを食べきった。

「最後に……と、ソーセージロールか」

ぱくりと噛み付く。

ふわりとしたパンの中に、皮の厚いソーセージが入っていた。

そしてパンは噛みきれず、ソーセージの中のガリッとした骨が歯に当たる。

「……あれ?」

翔はふと思う。

ソーセージに、骨など入っているものなのだろうか、と。

まさかと思った翔は、最初に一口食べたきりのジャムパンをもう一度口に近づける。

ほのかに甘い香りはするが、果物の香りではないように思えた。

恐る恐るもう一度、赤黒い断面のジャムパンを口に運ぶ。

初めに感じたのは苦味、次に感じたのは鉄臭さ。

口の中に広がったのは、甘く甘く煮詰められた、血の味だった。


翔は思わず吐き出したくなったがこれらが亜矢子の手で作られたパンだという事を思いだし、最後までパンを食べきった。

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