小さな出会い。それは、誰かにとっては大きな道を見ることになる
今まで色々な人を見てきた。
強い人。
弱い人。
頭が良い人。
でも、今までにない人間っているんだなぁとなった人は初めてだった。
「見てくれ!頭!」
グィさんは昔から動物を育てている道の人みたい。
探究心が凄くあって、今では色々な種類の動物を育てているらしい。
「これがガーマってんだ!
肉が柔らかいすげぇ人気の動物だ!」
この南にはずっと頭はいなかった。
けれどそれらしい人はいたので、その代々らしい人間たちに献上させられていたとの事だ。
「食ってみるか?
あー確かちょうど解体したのがあったんだよなぁ」
全然落ち着かずに周りを何度もみて広い育てている場所から離れていく。
「⋯⋯⋯⋯」
振り返って──見つめる。
この動物が、ガーマ。
ガーマって⋯⋯戦う意志という意味だ。
「僕はどうすればいいんだろうか?」
自然とはお話する事ができたが、動物にも伝わるのだろうか。
「今まで自分がどうにか動いて答えを出せると思ってたんだけどなぁ」
自分が頑張って、自分が結果を出す。
そうすれば、みんなもそれに納得してくれて、何とかなる⋯⋯そう思ってた。
「ベルさんも言ってたよね」
自分が頑張っても、無力になってしまう時があるって。
「いいんだろうか」
集会でも、みんなが反対とまでは行かないけれど、好意的ではなかった。
そう、みんなが言う。
"現実的に難しい"と──。
「⋯⋯ん?」
ふと見上げると、ガーマが僕を見ているので思わず座る。
「どう思う?」
「⋯⋯⋯⋯」
「僕は、みんなが笑っている世界を作りたいんだ」
「⋯⋯⋯⋯」
「でも、みんなはそうではない⋯⋯のかな?」
どうすれば良いんだろう?
ーー理だ。
考え抜きなさい。
エオ、君なら出来る。
風に吹かれ、僕は先生の言葉を思い出す。
難しいなぁ。
「本当に」
「何がだ?」
そこには身体が求める肉の匂い。
「あ、ごめん」
「なーに、頭だって人間だろう?
なんか悩んでんのか?」
大きな音を立てて目の前の机にお皿とお肉を並べ、座って訊ねてくる。
「あっ、まぁ色々⋯⋯かな?」
「まぁ悩むのはいいけどよ、きっと時間が解決するんじゃねぇの?」
「時間⋯⋯か」
「少しくれぇなら聞くぜ?
あんま言っちゃいけねぇような事もあんだろ?」
なんだか、この人は不思議な人だ。
別に変な雰囲気も感じないし、大人のような感じもない。
けれど僕のことを知ろうとしてくれている。
頭みたいな人たちは貴方に対してきっと理不尽な事を言ってきただろうに。
「話してもいいですか?」
「ん?おぉ、イイぜ」
*
それから僕は、不思議と初対面なグィさんに悩みを打ち明けた。
「本当新しい頭は変わってんだな」
肉を口にしながらグィさんは笑ってそう言う。
「やっぱり僕って変わってるのかなぁ」
「んー、まぁそうなるだろうよ。
この世は強い奴が全てを決める。
弱いやつに生きる理由はない」
「でも、その弱い人がいなければ強い人も存在できないのでは?」
「そう言われたら確かにな」
串を向けて笑ってそう言う。
「でもそんな事、頭たちからしたら関係あんのかも知んねぇけど、普通に生きてる俺達にとっては意味がねぇだろ?」
「そう?」
「だって、女は欲しいし、腹いっぱい食べてぇし、掟なんて言ったって、守れる奴がいねぇ」
「守れないのはなんでなんだろう?」
「そりゃ、意味がねぇからだろ?」
「意味がない?」
「だって今までの頭も含めてよ?
そもそも女に対しての考え方が一緒だったって話だ。
でも新しい頭はそうではない。
だから掟を変えましょう⋯⋯え?なんで?ってなるだろ?」
何も言い返せない。
「そもそも男なんてみんなそこに関しては絶対的におんなじ意見だろ?
頭くらいなもんだぜ?
"女の気持ちを考えましょう"なんて」
「んー⋯⋯」
「だから合わない。
頭がどうしたいかにもよるけどよ」
難しい。
いざ言葉にされるとどうすることも出来ないな。
その後も淡々と食事は進む。
その中で、グィさんは突然口を開いた。
「なぁ、頭さんよ」
顎でガーマを差すので、向く。
「動物も自然も、似たところがあるのは知ってるか?」
「聞いたことがないかも」
「掟が似てんだ」
「⋯⋯掟」
「そりゃな、やってはいけない所が割と似てんだよ」
「──やってはいけないところ」
「どこだと思う?」
考える。
「出てこないかも」
「まぁそうだよな。
身近にねぇとわからんもんだ」
グィさんは片肘つく。
「そう、ズバリだな」
そう言って、笑う。
「何かあると、必ず空を見上げるんだ」
「空⋯⋯?」
と僕も気付けば見上げていた。
「あぁ、こんな真っ暗な空だ」
言いながら、次の肉を切り分けて僕のお皿にのせてくれる。
「どっこいしょ。
だがよ、おもしれぇんだよな」
「何がですか?」
「まるで見られてるみてぇに見上げては止まるんだよ」
「⋯⋯止まる」
「しかも、獲物を捉えて、食べる前が動物。
自然は、一定の時間。
おもしれぇんだよな、コレが」
一口食べながら、話を続ける。
「しかも、動物も植物も、必要以上に狩らねぇんだ」
「⋯⋯確かに」
「太ったやつなんていねぇだろ?
自然も動物も結構似てるところがあんだよ」
思わず僕はその言葉を忘れまいと大真面目に頷いていた。
何か凄い必要なモノのように感じて。
「もしかしたら俺達人間って⋯⋯結構面倒な存在なのかもなぁー。
⋯⋯あ、頭の前だったわ」
「いえ、貴重な話を聞けたので」
「ドン・ゴだったっけ?
アイツの時はひどかったもんなぁ。
何頭必ず持ってこいだの、こういう奴しか食わねぇだの。
新しい頭は欲がなさそうで助かるぜ。
育て甲斐があるってんだよ」
「欲がなさそうに見えるのに?」
「あぁ?」
「そりゃ、そんな人間に美味いって言わせる為に生きてんだ、こっちは」
たった一言。
けれど僕にとっては途轍もない稲妻のように奔る言葉だった。
話全体が、今の僕には必要で。
「っ、おい!どこ行くんだ!?おぉー!」
「すみません!!
思いついたので帰ります!」
「えぇ?
ちょっ!残りは!?くそっ!
まぁいいかぁ」




