僕が望んでいたもの。
「頭!
おはようこざいます!!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「お、おはよう!!」
⋯⋯全く慣れない。
頭を下げる必要はないんだよ?
そう言いたい。
最初は言ってた。
けれど、こういう世界なんだからお前もそろそろ慣れろとケイやグラン達に物凄い釘を刺された。
──え?
僕が悪いの?
なんか前言われた事を今になってちょっとムカッとしてきたかも。
「相っ変わらず偉そうにするのが苦手な頭だなぁ」
「ケイ!」
「おう。
おはようさん、我らが頭」
「おはようございます」
「あっ、チェシェも!」
こう思うと凄い人が増えた⋯⋯どころじゃないか。
僕は今、大量にいる南の人達の一番上──なんだよね。
まだ実感ないや。
「頭、報告がしてぇから集会⋯⋯だっけか?
開いてくれよ」
「あ、もちろん!」
「明日でいいか?
聞いたか?」
「あっ、確か⋯⋯」
目配せするケイの後ろに、一人の男の子。
えーっと。確か名前は⋯⋯
「タンです!」
「よろしく頼むね」
「了解ッス!」
彼はどうやら各地に小さい鳥を送る事ができるらしい。
どうやら夜の説明を聞こうとしたら渋い顔をされたのであまり聞かないようにしている。
⋯⋯あっ。
確かに冷静に考えたら、自分の能力を説明するということは相手に弱点を教えるようなものだ。
言えるわけない。
ごめん、数十人の彼ら。
興味が勝って聞いてしまった。
「てか頭」
「ん?」
「もうちょいゆっくりできねーの?」
「ゆっくりって?」
「掟だよ」
腰に手を当てて足で小石を浮かしては、叩いて笑うケイ。
「掟?」
「あぁ。
猛反発どころじゃねぇ。
いきなり女は攻撃するな。
やるな。
扱いを丁寧に⋯⋯なんてアイツらがまともに聞くわけがない。
てかそもそもなんでって奴らがほとんどだ」
「男なんて死ねばいいのに」
「あぁ?
俺は客観的な事を言ってるだけだ」
あぁまずいまずい。
二人で喧嘩しだしてる。
「ちょちょ落ち着いて?」
この二人が暴れると本当に怖いんだよぉ!
「ったく、なんもしねぇでキーキー叫び散らかす奴らが良いご身分だわな」
「そんな人達が女に人生を狂わせられているのも滑稽な事で」
ねぇ、これどうすれば良いの!?
*
「これより第10回、集会を始める」
硬い雰囲気から始まる、僕達のきっかけとなる集会。
一番から五十番まである通りを僕一人で管理するのは中々苦労する。
今はまだ僕が記憶しながらやっているけれど、その隣で10個の通りに一人ずつ⋯⋯これから一人小さい頭の様な仕事を担当してもらおうと思う。
人はどうしても知っている人になってしまうのは仕方ないよね?
「グランだ。
10から19⋯⋯三つの判断基準から考えると、食以外の二つが問題」
「チェシェです。
20から29、同じく食は辛うじて耐えていますが、残り2つが致命的な問題を含んでいます」
「クレナです。
30から39、同じく」
「ケイだ。
40から50に関しては問題が大アリだ。
新しく出来た掟と、頭」
ケイの鋭い視線に続き、全員の視線が集まる。
「俺は特別問題視してはいねぇが、大半の奴らが頭が強いと判断されてねぇ問題がかなり深刻だ」
その言葉に僕は思わず悩む。
僕は力でモノを言いたい訳ではない。
「エオ、これはお前の性質上どうしても仕方ない部分でもあるぞ」
「だよねぇ」
グランにも言われたし、これは最初にケイからも釘を刺されし、僕自身もそう思わざるを得ない問題だ。
僕は強さを基準に考えてないから通り過ぎていたけど、彼らの大半は強さで物事を決める。
そう。
殴って、殺して⋯⋯奪うことが。
そんな彼らからしたら、不殺の僕が変に映って見えるらしい。
何故土地を奪わないのか。
何故縛りで縛らないのか。
何故、人を説得しようとしているのか。
僕がおかしいのか、彼らがおかしいのか。
凄く迷う時がある。
「それに性差問題も深刻だ。
俺は正直に言うが、エオの言ってることの半分も理解できん。
ここに居るやつのほとんどもそうだろうし、街にいる普通の奴らはもっとそう思うだろう。
今でも見張りがいなかったら身勝手な行動が増えてるし、以前より動きが活発になってるのが実だ。
どうやら前はドン・ゴだったりの奴らが怖くて何もできないらしかったが、次の頭は殺さないしなんも要求してこないし怖くないから⋯⋯なんてほざいていたぞ」
「十番通りも同じく。
こっちも中っくらいの勢力が幅を利かせて今も猟犬に働かせながら甘い汁を吸うなんて日常茶飯事だ。
止めたら止めたで面倒極まりない事が始まる。
既にいくつも揉めてる」
重い一室に座る僕達の空気。
──僕の夢。
夢だった。
だけど現実はもっと夢のようだと言いたい。
「エオ」
横目でチラ見してくるグラン。
「人間に期待し過ぎだ」
「っ、」
そう。
まるで僕の心の中を覗いているように。
「お前は⋯⋯何処か人が良い生き物だと考えてるだろ?」
何も、何も言い返せない。
そう思っているから。
「見たことあるか?
人間ってのは、相手が弱いと舐め腐る。
アセラが最初頭になった時覚えてるか?」
頷いて、僕は言う。
「うん」
「可愛いもんだったろ?
まだ命令したりなくて、慣れてねぇ」
「⋯⋯⋯⋯」
「けど、命令が通ったその瞬間、アイツの感覚が変わる。
攻撃的になってくんだよ。
甘い汁が吸えると分かったら次に行く。
そうやって悪い方に流れる。
そもそもここではそれが正しい。
⋯⋯だがお前は違う。
優しさを他の奴らに求めるとこの問題は解決しねぇ」
こんな感じで僕達の集会がその後一時間くらい続き、終わりを迎えた。
「⋯⋯⋯⋯ふぅ」
空を見上げる。
空が、どこか寂しく見えた。
次から次へと増える問題。
価値観の問題。
現実的な問題。
どれも解決していかないといけない。
方法を、考えて、実行しなければならない問題だ。
ここで躓いたら⋯⋯全てが無駄になる。
「おーおー、」
ん?
誰だろう?
「っ、んー」
長い溜息混じり。
僕を見て男の人があっ!と察したように笑う。
「アンタが頭か?」
「え?あ、そうds⋯⋯だよ!」
「俺はグィ!
元々この14番で動物を育ててよ!」
「あっ、いつもありがとうございます!」
「あぁ?いいってことよ!
てか新しい頭は馴染みやすいなぁ!
前なんて現場にこねぇし」
「あはは⋯⋯」
「あぁ、じゃなかった!」
「何かあったの?」
「そうだ!
育てる事に関してなんだけどよ!」




