表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
子供編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/19

内戦

 村に入るとすぐに僕達は血相を変える。


 ── そう。

 アセラの下っ端達が僕達の縄張りに侵入していたからだ。


 「アイツら⋯⋯とうとう来やがったか!」


 デンデラが急いで走り出す。

 それに続いてグランも飛び出した。


 「エオ、どうなってるの?」


 僕の後ろにいる子供達が僕の手を握る。

 ⋯⋯震えている。


 そうだ。

 そうだよね。

 

 まだ内戦を知らない子供たちか。


 「大丈夫。

 僕の近くにいて」


 内戦とは、簡単に言えば村の勢力争いの事を言う。


 僕達は日々それぞれの頭が少しの睨み合いで基本的には何も起きないという状態が続いている。


 しかし、遠征で頭が居なくなることがあまりない為、頭たちはここぞとばかりに土地を広げて仲間を増やす作戦をとっているというわけだ。


 目の前には、争う光景。

 

 血が飛び散る。

 誰かが叫び、命懸けで突っんで来る。


 ⋯⋯分かっている。


 全員が必死な顔で、ある者は生きるために。


 ある者は頂点に立たないといけない病の為に進み続けている子供がいる。


 僕はこの景色を見るのは初めてではないし、むしろ多い方だ。


 だけどいつも思う。

 僕達はこの村で、なんの為に遠征に行っているのか。


 "大人のように(あんな)風にならない為じゃないか"


 僕はアセラや他の陣営の頭だって⋯⋯みんなの協力が必要だから畑を作って、みんなでこの村を豊かにしていこうって決めた。


 僕にはその夢がある。

 この世界に、僕が世界を広げようっていう夢を。


 ⋯⋯ただ一人。

 唯一信じてくれたデンデラだけが、笑って一緒にやってみるかと言ってくれたんだから。


 みんな、病に侵されているんだよ。

 地獄という病に。




****




 「いけー!

 今ならデンデラ(アイツ)はいねぇ!」


 クソッ。

 思った以上にアイツらの反抗が強え。

 化物(アイツ)め。

 

 やっぱりただでは済まねぇか。


 「っ!」


 アセラの先、村の入口。

 そこには、まさに紅い波動を纏う鬼神。


 夜もない。

 ただ一瞬、アセラの目には幻覚が映っただけだ。


 軽い足取りで。

 ──ゴォォォ。


 ただそこには力が存在している。

 ──ゴォォォ。


 「⋯⋯っ」


 耳に反芻して聞こえる射貫く風。

 アセラの視線が動くのはミリも掛からなかった。


 来やがった!

 ──化物だ!


 「お前ら!! 

 予定より早く帰ってきやがった!!

 アイツを仕留めろ!!」


 チクショウ!

 なんでこんなに帰ってくるのが早えんだよ!


 今回の規模を考えたらもっと時間がかかってもおかしくねぇだろうがよ!!


 俺のところですら70も掛けたら帰って来ねぇのによ!!!


 「デンデラ!?

 チクショ!!まじかよ!」


 アセラの視界の端から曲線を描いて飛ぶ⋯⋯武器。


 「っ──お前らァ!!

 デンデラ(アイツ)に"武器"を渡すな!!」


 アセラには、過る。

 止まらない冷や汗と。


 「くっ⋯⋯」



 ーーお前らなんざ何人掛かってきたところで俺には勝てねぇよ。


 脳裏に過る。

 ちょうど三年前の事だ。


 ここにやってきたデンデラただ一人で、当時の縄張りの頭である四強が""滅多刺し""にされたのは有名な話だ。


 ──シャアアア!

 血の雨が降り注ぐ。


 ⋯⋯話は単純で。


 たまたま戦利品を持っていたデンデラに絡んだ一人の頭が犠牲になったところから全てが始まったのだ。


 無心に思い出してしまう。

 アセラの脳裏に浮かび上がる⋯⋯最悪の出会い。


 あの日、数と個という概念がアセラという人間の中で完全に消え去った日。


 真正面から戦うことを辞めた日。

 4人の頭部を投げつけ、それでも武器で叩き、叩き。


 「頭ァ!?」


 直後。

 アセラの目の前には、当時を思い出す⋯⋯武器が渡ったデンデラによる一閃。


 既に斬り終わっていた。

 ただの鉄剣。

 

 「⋯⋯てめぇらよ」


 胸のそこから湧いてくるあの感覚。


 武器を持った人間は怖い。

 そう。それが誰であろうと。


 だが違う。

 この男だけは違う。


 「バケ⋯⋯ものが!!」


 過去と全く同じ光景が重なる、アセラの瞳。

 たった一人。


 「デンデラ!!

 頼む、ニバの所へ」


 「グランが行ってる。問題ない」


 ⋯⋯チッ!まずい。


 「オイ──」


 一言で。

 アセラの後ろにいる幹部たちも震えながら後退る。


 「前言ったよな?」


 なんで。

 

 「次歯向かったら⋯⋯」


 ゆっくり見開かれる──鬼神の瞳。

 全員、後退る足が止まる。


 無理だ。動かない。


 「お前ら全員地獄の底まで甚振ってやるって」


 「行けェェエエ工!!!!」


 向かう子供達の目には涙。

 抗えない命令と、目の前の地獄。


 振りかぶって多方向から下ろすのだが、意味がない。


 ブンッッッ──。


 奇妙な音。

 素振りの音を大砲にしたような⋯⋯それは到底剣の音とは思えない。


 恐ろしくスルッと首が落ち。

 落ちたソレ目掛けて、デンデラは何度も""滅多刺し""にする。

 

 「っふぅ⋯⋯」


 螺旋に伝う血。

 剣を抜き、柄にそっと掌を沿わせながら地面に剣を突き立てる。


 「どいつもこいつも⋯⋯鬱陶しい」


 静かな風が全員の肌をくすぐる。


 「見逃してやったって分かんねぇのか?」


 瞬き一つない──鬼神の瞳。


 「だ、黙れ」


 「授業を受けさせてやんのも、俺が許した」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「お前らを制圧しなかったのも俺の判断だ」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「まぁ俺達の帰りが早かったおかげで、最悪は回避出来たようだが」


 横目で見つめるデンデラの先には、数人の子供の死体。


 「⋯⋯⋯⋯眠れよ、我が家族」


 金属音が聞こえると、空に刃先は向いていた。


 「もう、」


 ──あれ?


 アセラの目には、"どこにもデンデラの姿は無かった"。


 ⋯⋯そして耳元。

 































 

 





 「地獄を教えてやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ