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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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やるべき事

 「エオー、こっちは準備出来たぜ」


 「うん」


 通りを見下ろす。

 風を浴びるけど、前とは違う。


 今は悲しい気持ちでいっぱいだ。

 たった数日で、もう感覚が懐かしい。


 「先生、ベルさん」


 ベルさんがどうなったのかは僕にも全く分からない。


 ⋯⋯けど。


 「避難所に本があったから」


 そう、きっと。

 きっと⋯⋯何かしらの方法で生き残ってるんだって信じる。


 例え居なくても、貴方に教えてもらった事を必ず後世に残します。


 貴方の浪漫と、

 振り返る僕の目に映る⋯⋯人々。


 "貴方の残したこの組織を"。


 「今行く」


 ──僕が今度は引き継ぎます。


 





 「⋯⋯ウル」


 かつてそこは畑だった場所。

 そこで僕は、チェシェ達に信じられないものを見せられた。


 「死人(ガル)に近かったですが、間に合いました」


 そこには、完全に元通りのウルの姿。


 「⋯⋯良かった」


 心からの感謝を。


 「──ありがとう」


 横にいるチェシェを見て、僕は伝える。


 「いえ」

 

 「ありがとうね、ウル」


 「うんうん!!

 エオが居なかったら、俺達とっくに⋯⋯」


 握り締める拳。

 僕だけじゃない。


 ⋯⋯みんな、成長していくんだ。


 「頑張ろう、この南を⋯⋯誰よりも笑える場所にするんだ」


 そう。

 でも、その為には必要なモノがある。


 「やる事は多いよね」


 ⋯⋯間違いなくこれから大変になる。


 「まずは、全員の食糧からだね」


 「どうなさるつもりですか?」


 チェシェを先頭に元ルンデルバーンの幹部たちからの視線が集まる。


 そりゃあ⋯⋯勿論──。


 「畑を作る」


 「畑を⋯⋯?」


 新しく入ってきたチェシェ達には全くわからない話だ。


 隣を見るとグランたちが腰に手を当てて大笑いしている。


 「はー。

 んで、頭」


 こっちを見たグランにちょうど良く、風が吹く。


 「俺達に、指示をくれ」


 ふふっ。

 グランにそんな事を言われる日が来るなんて⋯⋯思わなかったな。


 「まだ残っている畑はどう?」


 「エオ、まだあるよ!」


 子供達が数えてくれたみたいだ。

 んー。全員分とは行かないけど、始められるか。


 「僕も知らないといけないことが多いからまだなんともだよねぇ」


 「その辺りは私達がお話出来ます」


 「戦力方面も既に元頭候補のリオンと話はしていたから行ける」


 「助かるよ。

 僕はまだまだ知らないことが多いんだ」


 全部では無いにしろ、情報がある事は最大限利用させてもらおう。


 リオン、ラオン。

 それに。


 エンにベルさん、先生。


 ⋯⋯見てて。


 「お堅い情報は後回しだぜ?」


 ケイに親指で見ろと言ってくる。

 

 「そうだね」


 僕は笑って、数百人が並ぶ前にしっかりと立つ。


 ⋯⋯見えるは、これから全ての未来と戦う子供たちだ。


 僕はそう思っている。


 「何を話そうかな⋯⋯そうだね」


 寝てから今まで、何か考えておくべきだと思ったんだけど。


 「こんな景色を見れる日が来るとは⋯⋯正直思っていませんでした」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「ただ、僕がやりたかったのは。

 そう」


 一人一人。

 全員を見つめ。


 「今のみんなは、飢えている」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「奪おうとしている」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「考える事を捨てている」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「そうじゃないですか?」


 返ってくるのは、沈黙。

 見ながら、少し、歩く。


 「そりゃあそうですよね。

 既に縛りを受けて、未来もない生活をしなければならない。


 女は碌でもない使われ方をして、男も碌でもないことにしか使われませんから。


 でも──」


 足を止める。

 ⋯⋯真正面。


 全員に向かって、僕は言う。


 「これからはそうはさせません」


 数人の顔が上がり、僕に向いた。


 「僕の夢。

 そして、やりたい事は最初から⋯⋯そう」































 ──みんながみんな、やりたい事をやる事です。


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 表情は変わらない。

 けれど視線が、ズレていた視線が、僕に集まる。


 「食べ物を作りました。

 頭に盗られます。


 でも、考えてください。

 みんなで作って、みんなで送りあえれば⋯⋯それは、あげる、です」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「そうしていればいつか、心に余裕が出来ます。


 そうすれば、飢えなくなります。


 他人から盗ろうと思わなくなります。

 戦わなくてよい。


 ただ、その一部を僕にくださるだけで十分です。


 僕が作りたい世界は、みんなが送り合う創の世です」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「何言ってんだと思われるかもしれません。

 しかし、その答えはみんなの目の前にいる僕が──」


 ジリジリ、と。

 僕の夜が溢れだす。


 「必ず──皆さんを笑わせます。

 必ず──皆さんをお腹いっぱい食べさせます。


 ですが、僕に足りないものはそう、お腹いっぱいと同じくらいあります。


 今回の戦いで気づきました。

 戦力が少ない事の選択の無さ。


 戦闘経験のなさ。

 どれも必要なことばかりだ」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「世を知らないのも問題です。

 正しい知識を知らない。


 ですから、自分には何もない⋯⋯そんな風に思うことはありません」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「夜というものは、必ず⋯⋯皆さんに贈り物をしてくださっていると、僕は信じています」


 「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」


 「時間はかかります。

 それは許してください。


 だが僕はここに約束します。


 必ず⋯⋯争いではなく、送り合い、気持ちでみんなと一つになり、絶対にこの南を⋯⋯楽園にします!!!!」


 そう。

 戦いは終わった。

 今度は、南を良くしていかなければならない。


 やるんだ。

 必ず。


 「ここに今日、南の頭として。

 皆さんの前に君臨する事を誓います」


 手を合わせ、僕は祈る。


 「そして、約束します。

 皆が一つの道へと辿り着く為に」


 静かだ。

 でも、まだまだこれから見せていけばいい。


 パチ、パチ。


 「⋯⋯っ」


 パチパチパチパチパチパチ。

 増えていく拍手。


 チラッと見ると、誰かがやってくれたみたいだ。


 流れるように広がる。


 一礼して、僕はその歓迎を受け取る。

 これから、始まる。


 いや、ここは叶える一歩目にようやく辿り着いただけだ。


 グラン、ニバ、ウル。

 みんなの顔を見て、新しい人間の顔を見ていく。


 「よろしくお願いします!!」


 うるさいくらい拍手が大きくなって僕は、その真ん中を通り過ぎる。


 「ようやく頭っぽくなったな、エオ」


 「カッコよかったよ、エオ!」


 「ありがと」


 まだまだこれからだ。

 そう。










































 この地獄で生きていくには、ね。

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