据わる
「⋯⋯っ、」
また、ここだ。
何度も見た⋯⋯この世界とどこかを繋ぐ場所。
──僕はそう結論付けた。
「初めまして」
振り返ると、そこには、見たこともない髪色と色々付けている裕福そうな格好をした一人の大人が立っていた。
「もしかして」
言いながら。
相手の大人の反応で分かる。
サヴァンなんですね。
⋯⋯先生。
顎を触って、少し目が上を向く動き。
それは先生、あなたしかいない。
「エオ。
私の名前はカバール・ヘンドリクセンという」
そう手を差し伸べられ、僕も応じる。
「初めまして、先生」
「私はかつて、ある大きい組織を作った。
そして過ちを犯し、生涯を捧げて罪滅ぼしを行い続けた」
「⋯⋯はい」
「この世界はまさに⋯⋯私から見ても地獄だ。
──絶対に誰もがそう思う。
だが私は、側面的なことだが、贖罪の場としてあるのではないかと勝手ながらそう思っている」
「贖罪の場?」
「あぁ。
私は酷い人生を歩んだ。
けれどその重さや行った深刻な対象システムとしてこの世界があるのだと考える」
「シス⋯⋯なんですか?」
「あぁ、そうだね」
そう言って先生は色々な事を丁寧に教えてくれる。
それはなんだか、昔に戻ったようで。
僕は、辛い事よりも先に、この感覚が懐かしくて⋯⋯喜びが勝る。
「嬉しそうだね」
「はい。
だって⋯⋯先生ですから」
「っ、」
何か思うことがあったのか、少し下を向いて。
先生は──絞り出すように口を開いた。
「もっと早く⋯⋯気付いていれば」
その言葉にどれだけの重みがあるのか。
僕には計れないけど、その重みは決して軽くは感じない。
「もっと早く、この気持ちに気づいていれば」
「でも、今気づいたじゃないですか」
僕を見る先生。
頷きながら、一言吐き捨てる。
「あぁ、そうだな」
「先生」
無言で僕を見てくれる。
「僕は先生と出会えて良かったですけど、先生は⋯⋯」
──人生で最も出会えてよかったよ、エオ。
僕が言い終わる前に、そう言ってくる。
「っ、」
「まさかこんな少年に教わるとはなぁ」
「先生の場所では僕は大人じゃないんですか?」
「全く子供だよ。
ある意味、健全なのかもしれない」
「⋯⋯健全?」
「あんな思いをしなくて済むんだからな」
「そう考えたら、そうですね」
無言で座って、僕達は何もない黒い空を見上げる。
「エオ」
長い沈黙の中。
「エオはこれから先様々な地獄をまだ見ることになるだろう」
「⋯⋯⋯⋯そうですね」
南の頭になっても、まだ3つも残っているのだから。
全てはこれからだ。
「きっと」
先生は笑って僕を見て言う。
「エオなら答えを見つけられる」
「なんの⋯⋯答えですか?」
「我々の浪漫の答えだよ」
「僕に出せますかね⋯⋯ははは」
「──出せるさ」
なんの迷いもない先生の顔。
そこにはただ、決まったような答えがあるかのような。
「でもベルさんが出せなくて、みんなが立ち止まるような問題を、僕が出せるか不安です」
「そうだな。
それは否定できない」
でも先生はすぐに言う。
「だがな」
「⋯⋯?」
「エオは見つけられると信じている。
──間違いなく」
「なん⋯⋯で」
「我々の直感というやつだ。
初めて見たときから変わっていた。
今ではその意味がわかるが、初めて見たときは分からなかった」
先生のその表情からは全くなんのことを言ってるのかは読み取れない。
「だが、いずれ辿り着くその道に、エオは向かうだろう」
「道⋯⋯」
「エオの浪漫。
我々の浪漫。
その道を切り開くのは困難だ。
しかし、今のエオと、他の仲間たちがいれば──きっと叶えられる」
「簡単に言いますね」
笑って言うしかない。
これからまだまだ起こる道のり。
それらを考えればあまりに安易な答え。
「あぁ。
だが、人々を光へと導き、皆を輝かせる事ができるのは⋯⋯エオ。
私にはお前しかいないような気がするのだ」
確か⋯⋯ベルさんにも言われたっけ。
「やらないとですね」
「あぁ、きっと」
すると、黒く光る⋯⋯先生の身体。
先生を見ると、そこには二人の顔が瞬きをする度に変わり、映る。
「後は"託した"」
拳を突き出す先生。
「──はい!」
ただ見つめ返し、僕は⋯⋯拳を合わせ見送る。
「考える事を諦めるな。
理を求めよ。
言葉は全ての始まりにして神が与えた武器」
「⋯⋯⋯⋯」
「そして正しく導き、星の力を得るのだ。
夜明けは⋯⋯すぐだ」
「はい!」
先生は僕の頭を撫で、するとすぐにビリッと黒い夜が僕の全身に流れる。
「ふんっ、ありがとう」
満足気に笑い、先生は──空に還った。
「ありがとうございました」
その黒い光を浴びながら、僕はただ頭を下げた。
⋯⋯僕の、僕の全ての始まりの先生だから。




