不公平
「急いで!!みんな!!!」
数人の人に担がれ、僕は急ぐ。
チェシェたちの能力は時間の制約があるみたいで、すぐには使えない事がわかった。
「どうしたんだよ!?」
「ベルさんが危ない!!」
「⋯⋯流石に逃げてるだろ」
俯いてそう言うグラン。
でも、その表情は見なくてもわかる。
「ドン・ゴの言う通りなら、きっと向き合うはず。
あの人は守る為に⋯⋯犠牲になる事ができる人だから」
そう。
その気持ちが、僕には分かるから。
急げ。
「みんなごめんね!頼む!」
──急いで。
みんなの表情なんて言わなくてもわかる。
全員、ベルさんに言葉で言い表せないくらいお世話になっている。
建物を駆け、駆け──。
風を浴びながらこの通り達を見つめる。
「静かだね」
「そりゃあな、今は戦争中だ。
隠れている奴らも大量だろうよ」
だよね。
これから、この南を良くしていくんだから!
⋯⋯その為に。
ーーエオ
頭に聞こえる。
その為に。
誰よりも平和を望み、みんなの笑顔を見るために頑張ってきたあの人が。
"逃げるしかないなんて嫌だ"
絶対に──ベルさんにこの景色を見せるんだ。
「いこ!!」
だが、そんな僕に⋯⋯運命というのは突然突き付けてくる。
「っっ!?」
全員の足が止まる。
原因はすぐに分かる。
かなり離れたところから聞こえる⋯⋯強烈な夜の破裂した音だ。
「みんな、今の音は!?」
「ちょっと遠くて分かんないよ、エオ!」
⋯⋯どうする?
なんの音だ?
「ちょっと近づける!?」
「やってm──」
──「「後は頼んだぞ、エオ」」
「⋯⋯⋯⋯え?」
それはまるで風に乗ってやってくる枯れ葉のように。
耳にふわりとやってくる、聞き覚えのある声が、二つ。
「⋯⋯っ!!」
思わず音の方を見つめる。
──ドクン、ドクン。
跳ねる。
一瞬で僕の身体は熱くなる。
「エオ?」
ま、まさかだけど⋯⋯。
「グラン、ニバ⋯⋯」
「どうした?」
「どうしたの?」
「今の音の方ってさ、サヴァン先生の家の方じゃない?」
僕の言葉を聞いた二人が確認しようと数秒。
⋯⋯その顔から答えは出ている。
「エオ、その⋯⋯」
あぁ⋯⋯心臓が重い。
お尻から出そう。
痛い。
心臓が痛い。
「まさかだけどさ、サヴァン先生の戦う音じゃないよね?」
「「⋯⋯⋯⋯」」
「そうだよね?」
どうしよう。
どっち?
ベルさんか。
サヴァン先生か。
「「あっ⋯⋯え⋯⋯」」
「すぅぅぅ」
ーー冷静になりなさい。
きっと大丈夫。
エオ、私は信じているよ。
きっといつか、世界を変える日が来るって。
あぁ。
なんでだろう。
「エオ様」
目に力が入る。
頬にも感じたことのないくらい入っている。
一生懸命に落ち着こうと呼吸をする。
でも、でもさぁ。
"そんな簡単に落ち着けないよ"
どっち?
どっちの方へと行けばいいんだ?
「お前ら頭がこんな顔してんのに何もできねぇのかよ」
気付けば隣にチェシェやケイが近くに来ている。
グランたちはその言葉に遅れて気まずそうに下を見ている。
「頭、その人ってのは大切なのか?」
「え?ぁ、うん!」
「何に迷ってるんだ?」
「その⋯⋯二ヶ所に行かないと⋯⋯」
「場所さえ言ってくれれば俺達がそっちに行くぜ?」
──なんでこんな簡単な事に。
「大丈夫。
まだ慣れてねぇだけで、その内慣れるさ」
肩を叩いてケイは横を通り過ぎる。
「でも」
振り返って、笑いながら僕に向かって言い放つ。
「違う系統だが、俺は今の頭の方が人間らしくて好きだから安心してくれよ」
⋯⋯ふぅ。
「ありがとう!!
じゃ、じゃあお願いしても!?」
静かに数回頷くケイ。
場所を説明すると、すぐに数十人を集めて向かおうとしている。
「頭から頼まれるのは案外、悪い気持ちにはならないのはあんまねぇな、行くぞ」
「お願いします!」
「──あぁ」
⋯⋯僕達も、早く行かないと!




