天命覚者
「くっ⋯⋯!」
この人の夜は恐らく──火を発生させること。
それか火を操るという能力。
でもなぜか⋯⋯来る前に"解る"。
なんでだろう?
自分の目がおかしくなったのかなんなのか。
「⋯⋯ッ!」
何故か、目の前のどこかに嫌な予感がある。
それに従うと避けた瞬間にそこが燃え上がりだす。
理由はわからないけどつまり⋯⋯
「自分を信じる他ない!」
突っ込む。
ドン・ゴのような人間に対して距離を取るというのはあまり良い選択とは言えない!
向かう。
縮まっていく距離。
でも中々──
「っ⋯⋯くっ!」
一つの場所に炎が生まれるわけではない。
同時に二つ。
僕にもあんな能力があればいいのに。
⋯⋯なんてここまで出かけたけれど、僕にはあの人にないものを持っている。
"仲間や勢力のみんな"がいるから。
みんなで力を合わせて、新しい考えを産むんだ!
──だから今、ここで!
「是脚諸天ッ!」
炎を、蹴り飛ばす。
「っ!?」
⋯⋯なんの為に力を得たのか。
「ハァ、ハァ!」
「ッ、くっ⋯⋯!」
僕は強さを求めたわけではない。
いや、強い方がかっこいいかな?
こんな時なのに。
飛んでくる炎を避けながら、独り言が続く。
でも、僕にはやりたい事がある。
この世界を笑顔で満たしたい。
──幸せで満たしたい。
みんなが疲れてる。
みんなが荒んでいる。
止めたい。
⋯⋯人が人を貶め、虐める事を。
みんながみんなで在り続けるために。
──本にも書いてあった。
"我々と動物の差はない"。
あるのは"生命"だけだと。
僕達は喋って、彼らは彼ら独自の会話方法があるだけ。
それが分からない人間たちはだから偉そうにしてるだけなんだ。
自然たちが話してくれたように。
きっと彼らは僕達を見ているんだ。
──"人間がどうしていくのかを"。
「んっ、」
重たい音が足元で聞こえる。
⋯⋯あれ?コレって。
──エオ。
耳元で誰かが僕を呼ぶ。
振り返っても誰もいない。
でも、聞き覚えがある声だ。
「|断罪の短剣・叫魂の記憶」
「ッ、」
落雷が落ちる。
視線を落とした僕の手には、エンの魂を握っている。
「エン、」
ーー頼む
そう囁かれた気がした。
「任せて」
⋯⋯だから。
「想起せよ!!」
来る。
火の鳥。
きっとドン・ゴの⋯⋯一番強い技だろうな。
──でも行かなきゃ。
エンの力⋯⋯"借りる"ね。
足元からは爽やかな風と共に、現れる──僕の夜とは違う、整った夜が僕の足を速めてくれる。
速く、動きに無駄がない。
「⋯⋯ッ!!」
前を見つめる。
僕が、いや。
""""僕達""""が。
「──変えるんだ!」
剣先の夜が、少しずつ太く、そして、僕の手に馴染むように長くなっていく。
「⋯⋯エン?」
それはまるで僕に語りかけてくる。
──俺もいるって。
「行くよ!!」
ドン・ゴはすぐそこ。
エンと共に。
剣を構える。
ここからはエンと、僕の力量が試される。
「終わりだ!!ガキ共!!!」
熱い風⋯⋯!!
体が焼けそうだ!
熱い熱い⋯⋯!!
「ハァァァァアアア!!!」
身体を起こす。
駆けて、火の鳥と僕達の剣がぶつかる。
「貴様⋯⋯その短剣、覚醒したのか?」
「負けない!!」
押す。
けれど、想像以上に重たい。
「くっ⋯⋯!」
「ハハハハッ、何を疑っているんだ?
俺の夜が弱いとでも?」
違う。
僕がまだエンの力を引き出せていないということだ。
エンはこんな弱くない。
もっと、こう⋯⋯
沸いてくる夜を感じて、身体の力を剣に乗せ相手にぶつける。
ブォォォ!と剣に乗る夜を見てこれだ!と突きつける。
「んぉっ!?」
だがこれでいいのか?
これではまだ⋯⋯
「──ガキ」
「⋯⋯ッ!?」
背中に強烈な殺気⋯⋯!
もしかして!
「っ!」
振り返るとそこには⋯⋯火の鳥が吐いたのか、火で作られた矢がこれでもかというほど僕を待っていた。
「終わりだ」
ドン・ゴの掌には燃える拳。
そして背中には、矢。
しかも、僕は火の鳥で手一杯だ。
まずい。
飛んでくる。
──エオ、使って
「「⋯⋯ッ?」」
咄嗟に火の鳥を上に滑らせる。
矢はなぜか当たらず、ドン・ゴの攻撃を辛うじて避けきる。
──ほら、分かるでしょ?
誰が、僕に。
戸惑う。
けどその瞬間。
■■──■■・■■■■■
「⋯⋯⋯⋯はッ」
頭に浮かぶ。
「これで終わりだと思うなッ!!」
間髪入れずに更に追加が来る。
──だが。
「想起せよっっっっ!!」
世界が、止まった気がした。
「っ?」
ーーエオ、託した
ーー未来の頭、頼んだぞ
ーーエオ、頼みましたよ
飛んでくる矢。
けど。
「宿る英雄の双護壁!!!」
「ッ!?何!?」
背中には"ラオン"の夜の壁が矢を防いでくれる。
「貴様⋯⋯!
短剣はどうした!?」
ーー満足だ
僕の両手は、燃えている。
雷を味方に、嵐が僕を起こす。
風が。夜が。雷が。
コレが⋯⋯僕の夜。
「想起せよ──球体・悪背善業道」
「その⋯⋯夜は⋯⋯さっき見たぞ」
呆気にとられているドン・ゴ。
──今、踏み込む。
「ドン・ゴ!!!!」
僕とリオンの熱量を模した嵐が一つになる。
心が。
魂が。
体が。
巡る夜が。
全てを一つにする。
「なぁっ──」
「想起せよ──悪童高潔の一撃・兄弟の魂ッッ!!!」
「貴様⋯⋯"何者"⋯⋯だっ!?」
⋯⋯集中しろ。
「dァァァアアアア!」
エン。
「ァァァアアアア!!」
リオン。
「ァァァアアアア!!!」
ラオン。
──見てて。
「僕が、絶対に変えてやるんだ!!!!」
拳を。
自分の全てを押して、”ブチ抜く”。
「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯ハァハァ」
耳が聞こえない。
周りも煙で何も⋯⋯
「ッ⋯⋯あれ?」
⋯⋯そこで僕の意識は、完全に無くなった。




