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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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頭決闘<6>


 『今から約1400年前にあった一つの時代で最も悲劇的な結末を迎えた兄弟がいます』


 知らない誰かの声が聞こえる。


 『これはあくまでも側近が命懸けで残した手記によった明らかになった話です』


 誰かが、喋っている。

 

 『スヴェンとエヴァンという有名な話があります』


 『当時のスフール2世の子供であり、二人共⋯⋯王位継承権がありました。


 まだその二人──13歳の兄、スヴェンと11歳のエヴァンです。


 みんなからすればとてつもない重圧でしょ?』


 そうなのかな?

 僕達からすれば普通だけど。


 『この二人は兄弟仲が凄く良いことが有名で、庭師や町中でも駆け回るのを黙認していたという話が出てくるくらい有名だった。


 そんなある時、スフール2世が病により急逝する。


 この時代は戦乱の世であるから、次なる王を用意しなければならず、王位継承があるこの二人に付くそれぞれの派閥が戦争を互いに仕掛けた。


 これを"代理戦争時代"と呼ぶ。

 史実によればこれは実に数年続いたという。


 後に語られる歴史考察の学者からは"悪魔のよう"と揶揄された時代でもあります。


 二人は幼い為、摂政もいたのだが、後に即位する摂政であるロベルト3世が良しとしていたのです。


 結局のところ、戦争は一部の人間や上の人間にとっては金儲けができる。


 兄弟の立場を使って、大人たちがやりたい放題したというわけだ。


 あの手この手で国民は見えない霧の時代に入ったわけだ。


 この下の図には、――手記にはやりたくもない戦争を何故しなければならないのかという兄弟のそれぞれの悲痛な叫びを記録しているが、あまりに生々しいので写真は付いていない』


 ⋯⋯⋯⋯。


 『その後、理由がないが地下の大監獄に幽閉されて暗闇の中で兄弟は餓死したとされています』


 その人は何かを右から左へと見て、その重い口を開く。


 『恐らく、用済みということで処理されたんだろうな。


 と言っても、様々な憶測が飛び交っています。

 "実は摂政が最初から仕組んでいたのではないか"などだ。


 ただ、この兄弟からすれば、なんと並べてもこれは悲劇です』


 


****




 「はぁ⋯⋯はぁ」


 前を見るのが一苦労だ。

 頑張ってくれー⋯⋯。

 僕の身体。


 「エオ!!!前だ!!前!!!」


 膝に手をついている中、耳の限界辺りで声が聞こえる。


 「ぁっ?」


 前?⋯⋯っ!!!!


 そこには、建物一帯が吹き飛ぶ程の──嵐のような夜の渦巻く光景。


 「まだ⋯⋯あれだけ」


 「よォォ!エオ!!」


 ハハハ。

 あまりにも疲れがあると⋯⋯笑うしか出来ないなぁ。


 「──行くぜ?」


 腹が決まってる二人の兄弟。

 長かったような⋯⋯短かったような⋯⋯僕が今見た⋯⋯あの兄弟と似ている。


 「ふぅぅぅぅ」


 大きな息を口から吐く。


 壁が、高いなぁ。

 でも。


 「頭になるって⋯⋯僕の浪漫はまだまだこんなものじゃないもんなぁ」


 彼らも同じだ。

 けれど、僕は。

 

 "全員だから"。


 それにこれから、まだ見ぬ強者と戦う事になるんだ。


 ⋯⋯あ、二人が肩を抱き合っている。


 そうだよね。

 見れば分かるよ。


 人間は"一人"では生きてはいけない。

 一人になりたい時はある。


 けれど。

 

 「そうだ」


 バンバンっ!

 っと、自分の疲れが溜まって震える脚を叩く。


 「みんな一緒になれば良い、僕は進む」


 最初に命の取り合いをする相手が⋯⋯二人でよかった。


 「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 息が回らない。

 これで、最後。


 僕も、あの二人も⋯⋯体力的に最後だ。

 歩きながらベルさんの言葉を思い出す。

 

 ーーまだエオは完成していない。

 だから、その先は使ってはいけない。


 「⋯⋯⋯⋯」


 二人の夜を見て、まだそれが言えるだろうか?


 本当にそうかな?

 でも、あの二人だよ?ベルさん。


 "使わない選択肢はない"


 少しずつ速度を上げて。

 僕は、










































 ──やがて駆ける。


 "衆生救世心也、魂願空巡"。


 (魂は恐れる。

 が、真に人を救う者は恐れを捨ててはならない)

 

 「ハァ、ハァ!」


 雷の嵐にドンドン近付く。


 「エオ!!!!」


 グラン?


 「頑張れー!!!」


 「「「「エオー!!!!」」」」


 涙が出そうだ。


 ⋯⋯そうだ。

 二人は置いておこう。

 今は、僕の後ろで応援してくれている人の為に。


 "譲天星天朧星。


 (世界は一つではない、が、不変の理がある。

 それは、試されているということ) 


 幽冥在空間、植星乱世拳宿"。


 (暗明見えざる者。

 それは挑戦を、感情を、魂を、分け与える者に力を与えん)


 "悪業徳業積、星道也"


 (人の行いに善も悪もない、ただそこには星がある。


 星の道は悪い者も受け入れる場所である)


 「クッ!!」


 身体が痺れる!

 体に流れる夜が、凄い反応をしてる。


 跳ねる。

 跳ねて、跳ねて。

 

 けどなんか⋯⋯頭が起きた時のような感じ。


 ⋯⋯まずい!


 「でも──」


 「Get out my way!!!」


 初めて見る。

 ここまでの夜を。


 「オラァァアアア!!!」


 巨大な二人の魂のように見える。

 咲き誇る満開の花。

 

 でも。


 臆するな。

 ⋯⋯勝つんだ。


 目の前の、この──熱に!!!


 「ハァァアアアアアアア!」


 "天王仁降臨・第二章"

 ──夏譲星境右ノ肚鬼


 拳にまとまる夜。

 それらが僕を見ているような気がする。


 ごめんね。

 もう少しだけだから。


 ──絶対に。


 「ハァァアアアアアアア!!」 


 ──絶対に!!


 「ハァァアアアアアアア!!!」


 ーーねぇ!


 あの時見た二人の兄弟の話。

 僕は。










































 「──もう、絶対にそんなことさせない!!!!」



 "夏は人の意思が舞う"

 "全ての自由意志が巡る"

 "子らよ進みなさい"

 "若さは進む為にあるのだから"


 

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