頭決闘<4>
強い。
「ォォォオオオオ!!!」
本当に強い。
「ラァアアアア!!」
触れられる距離。
脇を狙う。
⋯⋯けど。
──ダァン!!
「悪いね、エオ」
「⋯⋯っ!」
目の前には拳を防ぐ、黒い炎の壁。
多分これは、ラオンの夜。
これが、リオン兄弟の本来の戦い方!
話に聞いた⋯⋯兄弟。
兄が攻撃。
そして弟の防御。
「オイ、エオ」
燃え盛る拳の夜。
揺らめき、震える一撃。
「っ、くっ!!」
まずいと思ってやり返す。
けど、ラオンの夜であると思う防御の夜。
「ハハハハッ!!」
そしてその後ろから業炎を纏う拳が見える。
何度やっても防御され、その一撃を連続でもらう。
「行くぜェッ!ラオン!」
「うん、お兄ちゃん!」
「俺ら二人こそ最強無敵ィィ!!」
拳を出すとラオンに防がれ、その隙にリオンの拳が僕を襲う。
一発、二発、三発。
回転が上がる。
ドンドン。
まずい、当てなきゃ⋯⋯!
でも、興奮してる僕は気付く。
ベルさんの言っていた頼剛という言葉。
一心同体、協力。
まさに言っていた通りの戦い方だ。
「っ、」
直後ズドォン!と雷が二人に墜ちる。
まるで二人を味方しているみたいに。
「「攻防一体!!」」
腕を構える。
けど⋯⋯!
拳を出すとラオンに防がれ。
「ぐぅぅっ!!!」
その隙間から目に見えるほどの夜を纏うリオンが的確に僕の顔面へと真っ直ぐ拳を打ち込んでくる。
「ッう!」
やり返しても、同じだ。
ラオンが冷静に僕の打ち込む場所を読み、その間一瞬でリオンがやってくる。
「どラァア!」
「うぐっっっっ!!!」
僅かに顎を反らせてたけど、痛みは変わらない!
回転が上がれば、その反撃は速くなり、そのまま速度が上がって僕がどんどん追い込まれる。
でも興奮してやり返さなきゃと地を踏んでしまう。
「くうっ⋯⋯!!」
後ろに仰け反りながら、僕は懸命に二人を見ようとゆっくり動く中で見つめる。
けど、何も見えない。
既にぼやけてて⋯⋯ただ、黒い拳が。
胸の前で構えるリオンが凄い速さで迫りくるのだけは分かる。
脚の動きが、トリスさんみたいだ。
黒い雷のように蛇行して。
「⋯⋯強いなぁ」
強い。
分かっていたけど、やっぱり。
"頭になるって、こういう事なんだ"
孤独で。
けど。
──倒れる事を許さない。
今見えないけど、後ろにいる僕の仲間たちの顔なんて見れない。
そりゃ⋯⋯負けられないからね。
「ヨッシャ!!」
──ズドン!!
勢いよくリオンの拳が──真っ直ぐ飛んでくる拳が、仰け反る僕の顎を狙い打つ。
「お兄ちゃん!」
でも身体は限界を迎えている。
避けられない。
連撃、連撃。
リオンの一撃の速さがドンドン速くなる。
⋯⋯本当に。
──まさに雷だ。
凄い速度。
練度。
まだまだ僕達にはない⋯⋯分かりやすい強さっていうものか。
「コイツ⋯⋯!!」
なんだ?
彼は何か僕を見て怖がってる?
「なっ、なんで倒れない?」
あの、"あの"リオンが怖がってる。
⋯⋯地を踏ん張る。
ギュッと止まって、僕はただ見上げてリオンたちを射貫く。
負けられない。
何度叩かれても、僕には⋯⋯僕には頭の中で昔のことが離れない。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
"みんな友達になればいいんだよ!"
「はぁ⋯⋯はぁはぁはぁ⋯⋯!!」
"絶対やろうね!デンデラ!!"
「はぁ⋯⋯!!はぁ⋯⋯!!!!」
何も聞こえない。
耳が酷く音を鳴らしてまるで必要ないかのように音を消す。
その時、ポスンと。
僕の身体は前進する。
んっ?
背中を見ると、そこにはデンデラが居た。
──幻覚だ。
けど、笑って僕を見ている。
僕を押して。
『行け』
⋯⋯そうだね。
僕は弱気になっていたかも。
『大丈夫、お前ならやれる⋯⋯エオ』
⋯⋯うん。
『俺の隣はお前しかいないんだからよ』
今、使う時かな?
そうだよね?
幻覚だろうデンデラは笑う。
「うん、"""行ってくる"""」
飛び出す。
まるで自分が自分じゃないかのように。
動かない脚。
けれど、何故か動く。
「⋯⋯っ!!
オイオイまじかよ!!」
「お兄ちゃん!」
ベルさんの言葉が浮かぶ。
ーーいいかい?
ジェルマは良いところまで磨き上げた。
本は読んでいるね?
"はい!"
ーーあれは昔に私の書いた本なんだけどね。
ちょっと特殊な本なんだ。
"特殊⋯⋯ですか?"
「──是脚諸天」
「⋯⋯んっ!?」
「ラオン!!」
ーー私は昔から見えない存在と夢で交わしていた。
私は強いと言われてたけど、あぁ⋯⋯もちろん技も私が考えたものだけど。
"一部"私じゃない。
ラオンに放った一撃。
それは夜を抜け、顔を捉える。
「罪人よ、天を見上げなさい」
ーーよく歌が夢の中で聞こえるんだ。
しかも、その存在は言う。
"言葉に夜"が"宿る"と。
「春は咲き誇り我が天にそびえ立つ魂よ」
「「⋯⋯っ!?」」
ーー昔教えたんだけどね。
今じゃ悪用されちゃってさ。
だから一部見せないんだ。
けどエオは大丈夫だろう。
この文字に意味はないと思う。
けれど、今は夜が使えないエオには凄く有効だと思う。
「下がれ!ラオン!」
幽冥存尊。
(暗き存在は総てを見ていて、そこに在るのである)
弾是我斬岩。
(言葉は万物を撃ち抜く弾であり、自身を強くする事もできるのであり、岩同然の相手でも斬る事ができるのである。
認君鬼哭魂歌。
(自分を認めれれば、必ずオニは宿る。
魂と繋がれ。
さすればオニはいつでも力を貸してくれるだろう)
なんだろう?
今なら何でもできそうな気がする。
頭の中で見える⋯⋯。
あの時の本だ。
「チッ!なんだ!?
突然コイツを吸い込みやがる!」
殴る。
「くっ!ラアアア!!」
避ける。
殴る。
「あがっ⋯⋯!」
当る。
なんで?
急に静かになって、周りが遅い。
「て、てめぇ!」
是空秦臥。
(空に進化の過程がある)
空我流天成。
(空は己同然であり、止まるように見えるすべてのモノが天である)
拳鬼夜罪獲欲。
魂覚空是生命鳴世。
(拳に宿したオニは夜と交わり、その者の罪を獲るのである。
春はそうして息吹を増す。
新たな魂が煌くのである。
全ての始まりよ、空を見上げなさい)
ーーエオに叩き込んだのは、まだ基本。
私の⋯⋯私が戦いながら辿り着いて、夢の存在から体得したのは、型を使った歌。
私も分からなかった。
けど、歌に夜の概念を込めるという事ができたせいで、あんな事になってしまったから。
まぁまだわからなくてもいい。
でも、一応名前はある。
「⋯⋯⋯⋯」
黒い稲妻と、見たことのない⋯⋯紅い夜が弾ける。
「夜華ノ神第一章──天王仁降臨」




