頭決闘<3>
僕は戦いを知らない。
「ァッ!!!」
「うっ⋯⋯!!」
僕は、ちゃんとした殺し合いをしたことがない。
「フンッ!!!」
「ぐっ⋯⋯!!」
彼の拳と、僕の勢い良く蹴り上げる脚がぶつかる。
「「っ!!」」
威力は同じ。
そのまま互いの方向へと仰け反った。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯⋯⋯はぁ!!!!」
呼吸が全くできない。
──これが決闘。
伝統あるこの世界の戦い方。
どれくらいだろう?
拳で、
全身で、
──戦い続けた。
──強い。
エンとは違って、技術じゃない⋯⋯圧倒的な熱量と力に明らかな差がある。
「中々やるじゃねぇか⋯⋯なんだ?
能力があるわけでもねぇのに」
完全な近い距離で、何でもありの戦い。
今の所全く、弟さんは全く参加してこない。
なぜだろう?
けど、僕もリオンも、全身という全身から血が吹き出している。
「ぼ、ぼくのはずかしいはなしは⋯⋯やめてもらえますかぁ?」
この人⋯⋯戦い方が。
それは、例えるなら昔見てきた子供たちを混ぜ合わせたような戦い方だ。
一発は必ずもらう。
そして次に自分。
そう、自分の一撃の方が強いって拳で言ってくる。
「舐めなッ──や!!!」
その拳は、僕の頬に真横から入る。
避けようと思っても⋯⋯無理だ。
「ゔうっ⋯⋯!!!!」
カチン、と。
何かが音を全身に響かせた。
そう。鳥肌が立つ。
これがベルさんの言ってた⋯⋯骨が折れるということ?
「ぅっっっ!!」
滑りながらも僕は踏ん張る。
今、僕は自分の為でもあるし、背中には、みんなの命が乗っかっているんだ。
仰け反った僕の体は止まり、そのまま前へと倒れ込んでいく。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
「まだまだァ!!」
──くうっ!
「ジェルマぁぁアアア!!!!」
機会ピタリと合わせて、狙う。
──一瞬、
──空いた隙、
──全てを使え。
空間を走らせ、僕の交差する蹴りはリオンのお腹を抉る。
「ぅぐっ!!!」
今!この時⋯⋯!!
足がぐらつく。
何度も打てるモノじゃない。
「だ⋯⋯ァッッアアアアア!」
攻めろ。
「ァアアア!!」
攻め立てろ。
「ァァアアア!!!」
攻め続けて。
戦え。
「くぅっ!!!」
「しぶてぇやつだなぁ、テメェは」
戦え。
例え全身が動かなくなろうとも。
僕は──負けるわけには行かない。
「っ、」
だけど、一瞬何かが。
今、何が──
「ッ、ガァッッッ」
抉ったはずのお腹。
「ァァァアアアアアア!!!!」
血が出ているはずなのに、リオンはそれでも僕の顔を血だらけの土に叩きつけた。
「ばァっ⋯⋯ん!!!!!」
あまりの衝撃に口からとてつもない何かが飛び出る。
体液か何かだろう。
そんな事も考えられない内に次が来る。
「俺は⋯⋯!!!!」
──っ!?
見上げば既に構えているリオンが。
「南を制覇して⋯⋯⋯⋯」
まずい⋯⋯当た──
「ぶっ潰す⋯⋯!!!!!
このクソッタレみたいな世界に、足ィ向けてやるためにまずは勝たせてもらうぜッッッ!!!」
大振りに拳を引き、その一撃を振るう。
そう、今までで貰ったことのない⋯⋯人を殺せる一撃。
「⋯⋯っ!?」
──だが。
負けられない。
「なっ!?」
避けられない。
だからこそ、ここで使えるのは。
貰った衝撃を身体の力に変えて、回転しながら足で首を蹴る。
「ッッッラァァアアアアアア!」
──刺され!
「ガァアアアアア!!」
もう、体力が限界だ。
「ウラァアアアアア!!!」
刺さった。
まだ、まだまだ押し込む。
爪先で押せたせいで向こうへと跳ね飛ぶ。
「ッハァ⋯⋯ハァ⋯⋯!」
駄目だ。
身体が思うように動かない。
ハァ⋯⋯まずい。
動かない。
ふらつく。
「⋯⋯っ!!!!!」
倒れそうな足を地面に踏みつける。
──ドォン!!
終わってない。
相手は全員ぶっ潰すと言う根性ある人。
「ウォォオオオオオ!!!!」
叫ぶ。
はぁ⋯⋯前が、全然血で見えない。
だけど、両足で踏ん張り、ここにいるぞと叫ぶ。
僕も案外⋯⋯ここにいる人間なのかもしれない。
「終わってないぞ!!!リオン!!!」
気持ち良い。
なんだろう?
戦ってることが気持ちいいのだろうか?
こんなにボロボロになって。
目はあまり見えないし、
足は震えるし、
拳もカチカチ音なるし。
しかも握れないし。
けどなんか⋯⋯心が熱くなる。
これで終わりたくない。
もっと⋯⋯もっと⋯⋯って!!
「ハハハハハハッ!!!!」
建物が崩壊し、リオンの高笑いが聞こえてくる。
「おうおう⋯⋯エオさんよ」
ボヤケて顔はあまり良くわからない。
けど、なんとなく表情は分かるよ。
「おめぇも────漢じゃねぇか」
「⋯⋯っ、」
自分でも分からない自分。
一瞬戸惑った僕とリオンは互いに反応に困った。
「「ッハハハハハハ」」
そう一笑い。
ゆっくりと表情は僕を見て、笑う。
「お前と同じ村だったらな」
少し寂しそうにそう言うリオンの顔は、初めて僕が人を殺した時の顔と多分おんなじ。
「僕も、リオンと同じだったらって思うよ」
どれくらいの時間を相対したんだろう。
僕とリオンは、何処かスッキリした表情で分かり合っていた。
「なんで戦うんだろうな」
「譲れない物があるから」
「俺は世界を変えて、舐めた奴ら全員ぶっ潰す」
「僕は、全員と友達になること」
「ぷっ⋯⋯!
そら無理だ」
「そうだね」
「エオ、てめぇ⋯⋯友達になりたい奴らを殺す事になるぞ」
「出来るだけ話し合いますよ!
けど話を聞かない人もいっぱいるので、なんとか対話して変えていきたいと思ってます!」
「どうやって?」
彼は首を傾げる。
「絶対良いところがあるはずです!
最初から悪い人はいませんし、何かあるはずなんです!」
「ハッ、綺麗事ばっかり言いやがって」
「でも──僕はその人も受け入れます!!」
「⋯⋯結局は力で解決しようとしてるだけじゃねぇか」
「そう捉えられても仕方ないと思いますが、武力は最後です!
僕は、攻撃するよりも、創って、作って!
人と人が理解し合えるような世界を作ります!!
みんな個性ある全ての人間が、それを創って、みんなで分け合うんです!
全員がそれぞれの個性を共有すれば、みんなが満たされるはずなんです!
でも、今みんなが取られてばかりで何も出来ない世界なんです!
すぅぅぅ、僕は────それを変えたい!!!!」
僕自身の本音。
今出せる、自分の選んだ末に出た言葉。
リオンとラオンはそれぞれ味わうように頷いて、ゆっくりと笑う。
「そうか。
もし、時代が時代なら、お前は神にでもなってただろうな」
その時、ラオンが初めてリオンの隣に立った。
「⋯⋯っ」
「この世界で痛みを受けながらやり返さねぇのはすげぇよ。
だが、俺達は二人で無敵だ。
お前に出来ることはもう、何も⋯⋯ねぇぜ?」
二人の対象的な天に登る夜。
勢いのある、燃え上がるような夜。
静かに、水のように静かながら、燃えるのを支える夜。
「ルンデルバーンとして、俺達は天下を取る。
お前の首一つで──終わらせてやる」
二つの夜が、一気に僕の方へ動く。
雷のようで、水のようで、動くその黒い輝く流星。
「⋯⋯勝てるかなぁ」
自分の水を含まない声に、僕は空を眺めた。




