頭決闘<2>
「おい、本当に大丈夫なのかよ!」
「そうだよ!」
グランとニバに両肩を掴まれる。
後ろにいる仲間たちも凄い顔をしている。
──みんなの言う事はもっともだ。
背中に見えるあの兄弟。
「⋯⋯⋯⋯」
正直荷が重い。
これはとても普通じゃないし、勝てるか分からない。
でもさ。
「やるよ」
「「⋯⋯っ」」
なぜなら、僕は大人だから。
これからみんなをまとめて協力して、勢力を広げて、押し出していく側になるんだから。
「彼らなりに思うところがあるんじゃない?
ここまで被害を抑えてこれから南を掌握しようとしているという風にも感じるし」
「実際、どんくらいだ?」
「勝てない方に軍配があるね」
「笑って言うことじゃねぇよ」
なんて言われる始末だ。
そんな事分かってるけど。
「どうだろう」
「何がだ」
正直、みんなには話していない秘密が多い。
僕はベルさんと秘密の特訓していたし、他の子供たちとは違う本棚の閲覧を許可されていた。
「ただここで出すべきかが分からない」
「なんかコソコソやってたやつか?」
グランは結構前から察しがついていたよね。
「うん。
ただし相手の強さは分かっているようで分からない」
さっきの技の威力といい、戦い方をあまり見れなかった。
⋯⋯まぁ。
きっとあちらもそう思ってるだろうけど。
「エオ、死なないよね?そうだよね?」
ニバ。
昔からずっと僕に対して優しいよね。
「ありがとね」
「うんうん」
泣いてるニバの瞳から溢れる涙を軽く拭く。
「どの道、数では勝てない戦争だ。
合わせてもらってる以上はこの後の事を考える必要がある」
「そうだわな」
「最終決定権はグラン、後は⋯⋯元年長者組で会議してもらった結論をまとめて。
それと──」
喋ろうとしたその時、真顔のグランが僕の口を指で塞ぐ。
「頭に成ろう奴が自分の死んだあとのことを言うもんじゃねぇ。
その点はあっちが優秀だな」
グランの後ろで。
これから僕の仲間となるみんなの顔色は悪い。
⋯⋯そうだよね。
「そうだ、その顔だよ」
グランにバレちゃった。
「うん。
──勝ってくる」
「頑張れー!!エオ!!」
「「「「頑張れー!!!」」」」
無言で笑って振り返り、目の前の戦場へと向かう。
そんな時。
歩きながら、なんでだろう⋯⋯昔を思い出す。
『ハァっ!はぁっ!』
最初にこの世界にやってきたあの日。
僕が最初に発した言葉は"なんで?"だった。
走って、走って。
得体のしれない自分よりもでかい人達が僕達を必死に追いかけてくる。
何故自分たちをそんな顔で追うのか。
捕まえて何をしたいのか。
目的があの時何もわからなかった。
『っは!ぉっは!あっ、アアアアア!!!』
走り続けてすぐのこと。
目まぐるしく変わる視界の中で、一人の子供が抵抗していた。
僕はただ、見るしかなかった。
泣き叫ぶ僕と同じような子供。
土よりも酷い⋯⋯その扱いを。
『オイオイ!
いつまでも逃げてんじゃねぇよ!』
必死だった。
逃げて逃げて⋯⋯逃げまくった。
生き死にの判別もない僕達はただ、あの頃⋯⋯生きたいと願い走った。
たまたま数人で合流してついた場所──村。
入ったら安全という理由もわからない状態。
しかし、その中はもっと悲惨だった。
全員が骨同然で座り、ある者は殴られ、ある者は太りながらも骨同然の同じ子供を殴っていた。
──なんて気持ちの悪いことなんだろう。
その時の僕は思った。
なんだこの場所。
なんで僕達は逃げていただけなのに。
⋯⋯同じじゃないか。
こんな事するのはおかしいじゃないか。
何度思った事か。
そうやって地獄を見た。
『すみません!
遠征して必ず拾いますので!』
地獄を見た。
『使い物にならないお前はなんでここにいる』
地獄を見た。
『お前なんて必要ないんだよ、』
⋯⋯地獄を見た。
『死ねよ、さっさと死ねって言ってんだよ!!』
⋯⋯⋯⋯。
地獄を、止めたかった。
「⋯⋯⋯⋯」
「よぉ、準備は出来たかよ」
ある子供は血反吐を吐きながら殴られているにもかかわらず両手を合わせて祈り。
ある子供はお腹が空き過ぎて、放置されているその辺に転がっていた誰だったか分からない子供の死体を食べていた。
ある子供は、
「⋯⋯本当に」
おかしいよ。
けど、彼らにも何かあったはずなんだ。
そうしなければいけなかった理由が。
──あるはずだ。
そうでなければおかしい。
この世界に僕みたいな人間は何故か⋯⋯一人残らずいない。
「返事はなしか?」
殴る事が大好きで。
弱者を甚振る事が大好きで。
支配する事が好きで。
依存させる事が好きで。
「僕は」
「あァ?」
みんな、何かに疲れて、この世界で生きているんじゃないかって。
「この世界の在り方が間違っていると思います」
あの時から。
僕が農業という言葉を知らないあの時から。
デンデラと共に進み始めたあの時から。
こうなるって事は必然だったのかもしれない。
「だな。
そりゃあ俺も同意見だ」
「お兄ちゃんの言う通りです」
もしかしたら、ここにデンデラが居たら、まだ僕は弱いままの⋯⋯まぁ、今もまだまだ弱いけれど。
──立てていなかったのかもしれない。
「けど、僕は拳で物を言うのは好きではありません」
「ハッハハハハハ!
つくづく面白いやつだな、エオは」
「そうですか?」
「あぁ。
この世界のやつはみんなそうだ。
⋯⋯女なんて土と同じくらいにしか思ってねぇ馬鹿しかいねぇ。
弱い奴は存在の価値はねぇ。
そんな中で拳で変えるのは違うなんて面白い冗談か何かだろう?」
はは。
確かそうかも。
「心に来ました」
勿論、いろんな意味で。
「んで?遺言は聞いてやるぜ?」
そうだな。
⋯⋯そうだよね。
「僕の目指す世界は、全員が一つの道に向かうことです」
「⋯⋯ほう?」
片頬を吊り上げて笑っているリオン。
「悪いことをしたから、殴ってしまったから終わり⋯⋯そうではない。
そこから気付き、どう生きていくのかが重要であって、殴る事全てが悪いということではないです」
「てきとーいいやがって」
「女の子もそうです。
⋯⋯意味があるんです。
世の中には無駄なものなんてない。
何かがあります」
「遺言はそれだけか?」
「もし、負けても⋯⋯彼らを虐げるような真似だけはしないでほしいです」
「「了解」」
⋯⋯これで、安心して戦える。
「では、よろしくお願いします!!!!」
それは僕の心の渇きであり。
涙であり、
怒りであり、
喜びであり。
みんなが喜ぶ人生を。
全員が笑っていられるような世界を作りたい。
はは、僕の人生は難しい。
これから?いや、これで終わりかもしれない。
だけど、出し切ろう。
今までの想い、これから続く⋯⋯僕の仲間たちがいるから。
「ハァァァァアアアア!!!!」
⋯⋯全く叫び慣れてなくて、笑われちゃってるけど。




