頭決闘<1>
「お兄ちゃん」
「けっ!分かってるよ」
アイツ。
正直あのエオって奴⋯⋯俺の下に欲しい。
見りゃ分かる。
「エオ!!駄目だよ!」
「エオ!
俺達の事なんか気にするなって!」
普通に頼りなさそうに見えるが、人の集まり方が普通じゃない。
「⋯⋯⋯⋯」
あの奥の奴ら、大人の中でもかなり強い部類だ。
何故かこちらに手を出しては来ねぇが、理由があるんだろーよ。
今、俺たちにはこの南の情報が全くねぇ。
──それに。
「ねぇえエオ!嫌だよ!」
俺の村では見たことのない動き方だ。
"従える"のではなく、"付いて"きてる。
馬鹿な俺でも分かる。
俺は俺らしく夢を語って従え、あいつらは、エオが"好き"だから"従ってる"。
この意味はちげぇ。
「自分が何を言ってるか分かってる?」
「ん?あぁ。
魂が震える奴らとは無駄な争いをするべきじゃない。
弱い奴らを死なせることが特権じゃねぇ。
⋯⋯それは、あの貴族とかいう奴らと何も変わらない。
ドン・ゴとか言うやつと一緒だ」
あのクソ野郎。
弱い奴らを食い物にしやがって。
「頭!」
振り返ると心配そうな馬鹿共の顔。
なんだ?お前ら。
「この、リオン兄弟が負けるとでも?」
地の面を足で踏んで、叫ぶ。
「いいか!
俺は世界を変えてぇんだよ!!
その先頭には俺じゃなくてもいい。
俺の意思を持ったやつがいれば構わん!」
そうだ。
こんなクソつまらん世界⋯⋯こっちから願い下げだ。
「俺がいても居なくても。
強い奴だろうが弱いやつだろうが⋯⋯関係ねぇ。
意思ってのは誰かが抑えて抑えれるもんじゃねぇ」
それをまとめる事ができるのが──本物の王であり、頭だ。
「俺は俺達の⋯⋯アイツらにはあいつらのやり方がある。
ただ、アイツらと俺達⋯⋯どちらも考えてる最後はまぁ割と似ている。
隣は実は仲間でしたって流れが一番ダリィだろ?
だったら被害を減らして、同じ魂を持つ奴らの頭が戦うのが筋ってわけだ」
「お兄ちゃん⋯⋯」
「そんな顔すんな」
「ワシャワシャしないで」
ったく。
そんな顔で見上げんなよ。
──馬鹿弟。
「これから世界を変えようとしてる俺達の道はなげぇんだ⋯⋯行くぞ」
歩きながら、昔を思い出す。
『っ!!ラァァァア!!』
生きる為に無理だと謝る相手を、相手を──痛めつけた。
『や、やめっ』
手を握っては、緩める。
あの時と今。
何かが変わったんだろうか。
──いや。
世の中⋯⋯なんて理不尽なんだろうかってムシャクシャしたんだよな。
近くを見ると、戦争中にもかかわらず、端で座るあの時の俺達と同じくらいの奴ら。
何を言ってるのかわからず、ただ命令されて仕方なく生きていた。
⋯⋯俺は、それが酷くムシャクシャした。
ぶっ飛ばしたくなった。
『おい』
『え?』
ゴチュって初めて聞いた自分の殴った音は快感でもあり、酷いモノだった。
ラオンとは本当の兄弟ではない。
ただ、最初から隣に居ただけだ。
それを大人たちが兄弟だと言ったから兄弟と名乗ってるだけ。
進んだ。
進み続けた。
『ハァアアアアッ!!!』
ただひたすらに、自分の魂を信じて。
この拳で道を開けてきた。
頂点とはなんだろうか?
自由とはなんだろうか?
強いとはなんだろうか?
弱者とはなんだろうか?
強者とはなんだろうか?
道を開けてきた俺にもわからない、問い。
「お兄ちゃん」
「安心しろ。
俺たちは二人で一人だ」
目を見ることもせず、ただ、俺達は横に拳を出しては合わせる。
俺達の⋯⋯魂の確認。
ここに居ると。
俺達は常に在る。
二人が揃えば無敵だ。
俺達がマジで戦った時に負けたことがない。
「頭ー!!」
「「「「頭ー!!!」」」」
後ろから声が聞こえる。
──ふん。
堂々としていればいいのだ。
この世界に落ちた日。
そう、二人の王が降りた日。
ただ、黙って俺達を見上げればいいのだ。
待ってろ。
「「変えてやる」」
目の前からドボドボ歩いてくる、アイツ。
頼りねぇ足取りだな。
⋯⋯来たな。
「よろしくお願いします!!」
「頼りないが、魂は本物だ。
頭決闘でこの戦争を決める」
「勝者勢力に吸収されるということでいいですね?」
ラオンの確認に奴は頷く。
「良い戦いにしましょう!」
「⋯⋯ふっ」
振り返って距離を取る。
戦いに良いも悪いもあんのかよ。
──だが。
「どっちが強えのかを決める戦いなのに、今までで一番悪くねぇ空気だな」
「お兄ちゃんがそういうのは珍しい」
「それはお前もだろ?」
「⋯⋯否定しません」
「「ハッハハハハハ」」
数秒静かにして、俺は言う。
「行くぞ」
「はい」
ブチのめしてやる。
「シャッーーーァ!!
オラァァァァァ!!!」




