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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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南戦争<5>

 戦いが始まった。


 「「らァァァァ!!」」


 僕達とルンデルバーン。

 本で習った知識で言えば、これは乱戦というものに近い。


 戦術などと言うよりも、もう風で何が起こってるのかも分からず、ただ僕達は目の前にいる相手を殴り飛ばすことが大前提となってる。


 「どりゃァァアアアアア!!!」


 「っ、アイツ⋯⋯!」


 その中でも別格の、凄まじい夜の風圧。

 ──リオンだ。


 「ッハハハ!

 これだから戦いはイイ!!」


 拳を一回振れば、文字通り全員を薙ぎ払う。

 隣でグランが思わずビビっちゃってるよ!

 

 「みんな!

 まずはあの二人以外を⋯⋯」


 だが、僕の耳には重い振動の音。

 強烈な風が身体を通り過ぎる。


 「⋯⋯だーれが雑魚だって?」


 そこには、黒い揺らめく剣を担ぎ、笑う僕達と同じくらいの少年が立ちはだかる。


 「ルンデルバーン、幹部のケイだ。

 確か⋯⋯お前の名前はエオだったな?」


 「エオに近寄るな!」


 まるで見えているかのように飄々と最小限の動き。


 空振った僕達の仲間であるポズ。

 そこにがら空きとなったお腹に向かって爪先で軽く蹴りを入れる。


 「うッ⋯⋯!!」


 全く入っていないようで、物凄い威力だ。


 「ハッ! 

 なんだなんだ。

 お前ん所のガキはまだまだなようだが?」


 ⋯⋯強い!

 間違いなく強い。


 「⋯⋯っ!」


 瞬きする間もない凄まじい圧。

 それも、奥から。


 あの揺らめき、あの強さ。


 ──リオン。


 「テメェら⋯⋯世界を変えるぞ!!!」


 拳を挙げ、走り出し、一つ、二つ、建物を駆け抜け、空を泳ぐように歩く。


 「てめぇらッッ!!」


 黒い光。

 っ、自分の仲間たちに号令を。


 「あんな腰抜けを⋯⋯頭にならせてたまるか!!


 男というのは強気でなんぼ!!


 熱い渇望がいる!!!

 頭というのは、誰にも媚びず!

 誰にも頭を下げることなかれ!!!!」


 「「「「「ダモス(勝利を)ダモス(勝利を)!!」」」」」


 「す、すげぇ⋯⋯」

 

 光が建物を抉る。

 その身体から放出する夜の量は、恐らくベルさんに匹敵する。


 「進めぇぇぇ!!!!

 俺達ルンデルバーンは南を制覇し、残る三人を打ち倒し──俺たちが世界をブッ壊してやる!!!!」


 っ、重苦しい音。

 ドドドドっとリオンの身体から夜が凝縮される。


 なんだ?


 ──キューン!!!!


 「俺の魂が言ってるのさ!!!

 俺は──」


 




























 「この世界を変える為に生まれてきたんだってよォ!!」


 「うっ!」


 地震?

 夜の風圧でここまで⋯⋯!


 「拳で──この拳で⋯⋯必ずやり遂げてみせる!」


 「エオ!!」


 ⋯⋯っ!

 見上げたその時、既にリオンは目の前に。


 「テメェに──導けるか?」


 ドスの効いた、動物のような低い声。


 「想起せよ(クオリア)──」


 「⋯⋯っ!?」


 まずい!

 防御が⋯⋯!?


 「悪童高潔の一撃(テーラセフィラム)ぅぅ!!!」


 黒い明滅。

 それは至極を極めた一撃。


 黒い光は世界を夜明けに導き、また、地獄にする事もできる光明だと言われている。


 「⋯⋯?」


 だが衝撃はやってこない。

 開くと、その拳は、僕ではなく。


 「ウル?」


 「え⋯⋯エオ⋯⋯!」


 僕とリオンの間に立って顔に直接⋯⋯!


 「ウル!!!」


 「ほう?やるな」


 「ウル!」


 「余所見すんな」


 「っ!」


 真っ直ぐ!


 「ハハッ!」


 蹴り、蹴り、真っ直ぐ回って蹴る。


 「やるじゃねぇか!

 見かけによらず早く正確で、靭やかな身体だ!」


 ここで反げ⋯⋯


 「──だが」


 「⋯⋯っ!?」


 空振る。


 僕のレッドリィ(回し蹴り)が!?

 "読まれた"?


 「仲間が怪我したくれぇで乱すな」


 地面に手をつき、突き刺すような足先が僕の鼻を折る。


 「んグッ!!」


 痛い⋯⋯!

 でも──!!


 「んっ?」


 黒い稲妻を纏わせ。


 「なんだ?」



 ーー空是破承(ジニステンプル)

 まだまだ現役になるんじゃないかな。



 「ハァァアアア!!!」


 鼻が折れた事よりも⋯⋯守ったウルの方が痛いに決まってる!!!!


 「ぐっ!?

 ──速え!!!」


 当たった!!

 押し⋯⋯込めェエエエッッッ!!!


 「すゥーッッッ⋯⋯ウラァアアアアア!!!!」


 気持ちだけは負けない。

 絶対に!!


 押し込む。

 かなりの荒れる風と共に、奥へ滑って埋まっていく。


 「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 仰け反らせて建物に埋まってるけど。


 「多分⋯⋯駄目かも」


 ベルさんの部下の人達が畑や家を守っているし、近くにも他のみんなが戦ってる。


 でもまだ、まだ──終わってない。

 リオン"兄弟"だ。


 「お兄ちゃん、ここからは僕も混ざるよ」


 埋まった瓦礫から勢い良く出てくるリオンと、その隣に優雅に立つもう一人の兄弟。


 「エオ、流石にまずいぞ」


 「ラオン⋯⋯待ってたぜ!!」


 ガチン!と両の拳をぶつけると、夜特有の雷が広がる。


 「お兄ちゃん、あまり威圧するとダサいよ」


 身体から細やかに夜を出す弟のラオン。

 背中合わせで語る二人の浪漫を持つ兄弟。


 「くそっ、カッコイイなぁ!」


 素直にそう思った。

 僕もあんな風に頭としてみんなを導けるのだろうか。


 「オイオイ、頭になろうとしてるやつが⋯⋯憧れてんじゃねぇよ」


 「カッコイイものは──そう言った方がいいのでは?」


 数秒の静けさを生んだけれど。


 「ダッハハハハハハハハ!!!!」


 腰に手を当て、リオンは豪快に笑いだした。


 「これは戦争だぜぇ?

 褒め合うのが戦争かぁ?」


 「お兄ちゃん!」


 「──だが、嫌いじゃない」


 っ、気配が変わった。

 明らかに違う。


 心臓の音がバクバク言ってるのは嘘じゃない。


 何かがある。


 「すーっっっっ」


 リオンは大きく息を吸い込み。

 ⋯⋯叫ぶ。


 「テメェらァッ!!!!!!」

 

 戦っている全員の手が止まる。


 「どうやら俺の戦っている相手は⋯⋯俺達と同じ魂を持っているようだ」


 息すらつけない静けさ。

 呼吸が詰まる。


 近くのグランがあまりの迫力に瞬きが出来ずに冷や汗すら流してる。


 僕もこの威圧にやられそうだ。


 「エオ、お前の勢力の名前は?」


 そう言われて、思い浮かべる。


 ーーあくまで私たちが羅針盤(ノブレス)


 だけど、もしも。

 

 「僕達は⋯⋯」


 ーー意志を継いでくれるなら、名前は関係ない。


 私の意志を頼むよ。


 「集束する霊魂(ハヌータ・ソル)


 「そうか。

 集束する霊魂(ハヌータ・ソル)

 ⋯⋯まず、数はルンデルバーン(俺達)の圧勝。


 だが、それじゃあ"対等"じゃねぇよな?」


 「⋯⋯⋯⋯」


 自分で言うのもなんだけど、戦力は明らかに僕達が少なすぎるし、まだ弱すぎる。


 「だが──俺達の考えは違う。

 数で勝つ事なんて正直関係ねぇ」


 なぜか後ろの彼らがなんか呆れている。

 ⋯⋯どういう事だ?


 「このまま戦えば、俺達が勝つ。

 そんなの──目に見えて分かることだ」


 それに関して僕達は、何も言い返す事ができない。


 「だが俺は認めない」


 「⋯⋯?」


 「頭が弱いような勢力⋯⋯カスだと思わねぇか?」


 っ、もしかして。


 ーーエオ、もしも戦争が始まった場合、覚えておく事がある。


 「それって」


 歯を剥いて、リオンは笑う。

 そして後ろの彼らは溜息をついている。


 「今までの頭候補だった奴らも同じだ」


 「同じ?」


 ーー実はこの南には古くから続いている伝統が残っている。


 「俺が思う頭というのは、付いていくそいつらの夢や希望、憧れ⋯⋯そして願いがこもってる。


 そんな奴が弱い?

 そんなこたァ俺が許さん。

 ⋯⋯だから、全員叩き潰した。


 エオ。

 俺はてめぇに──対等に。


 そしてどっちが本当に頭として相応しいか⋯⋯

決めようぜ」



 ーー頭決闘。

 これは正式な掟であり、何よりも優先されるモノだ。


 ーーそれって?


 ーー頭決闘は勝った者が強制的に頭になる事ができる⋯⋯由緒正しき掟。


 そして、何よりも数、能力や環境、それらに巻き込まれない文字通り死を賭ける戦いだ。



 「集束する霊魂(ハヌータ・ソル)のエオ。


 俺はてめぇに頭決闘を申し込む!!!」


 「っ、エオ!」


 「大丈夫だよ、グラン」


 視線の先には、意識がない⋯⋯無惨に倒れているウルがいる。


 「他に手は出さない?」


 「ったり前だろ?

 俺を誰だと思ってんだ馬鹿野郎」


 頬を吊り上げ、腕を組んで嗤うリオン。

 ⋯⋯なんて真っ直ぐなんだ。


 いつでも潰そうと思えばできたはずだ。

 ──それを。


 「受けて立つ!!!!」


 やるしかない。

 僕がここから進むには。


 「ッハハハハハ!

 いいじゃねぇかいいじゃねぇかァ!」


 この二人に、この強い勢力に。

 これから僕は生涯──挑み続ける事になるんだから。

 

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