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地獄で生きたければ。  作者: どら焼き戦線バルハザーク
大人編・南

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南戦争<3>

 「兄貴、良かったんですか?」


 まだ大人になり切れていない新成人たちの背中を眺めるベルとトリス。


 エオたちが歩いて向かうその背中は、何処か頼りなさそうで、けど、未知数で。


 「正直不安だ」


 腰に手を当てて下に転がる小石を、トリスは足で遊びながらベルを覗く。


 「兄貴も不安ですか」


 「戦い方や夜の使い方、基礎だけに絞ればまだなんとか若い世代の中でも上位に位置するだろうが、能力はない」


 「俺も見てみたかったすよ」


 そう呟くトリスに横を向き、ベルは首を傾げる。


 「何がだい?」


 それは尊敬と畏怖がこもった⋯⋯好奇心ながら訊ねるトリスの歯を剥いた笑い。


 「──"全盛期"のノブレスですよ」


 その時代。

 黄金の時代、または夜明けとまで呼ばれたノブレス。


 「フフッ、そんなことを言うのはお前が最後だよ」


 「⋯⋯まさか。

 全員、化物みたいに強かったんですよね?」


 「能力ではなく、夜の鍛錬だけに集中したあの時代は、恐らく現代の今の精鋭でも中々手こずるだろうね」


 誇らしげに笑うベル。


 「不安はありますが、その王が⋯⋯直々に教えた戦い方ですから信じるしかないですね」

 

 「最後の弟子のようなものだ。

 息子とも呼ぶ。


 ──私の子。


 子供たちは色々な形で別れてしまったけれど、最期に見れるのが、あの少年で⋯⋯本当に良かった」


 「エオ、本当に良い奴ですからねぇ」


 「あぁ。

 子供からの好感度も高い。

 

 良くも悪くも、私よりも教祖の適性が高い」


 「⋯⋯それはそうっすね」


 苦笑いのトリス。

 あのガキ、本当にすげぇな。


 トリスは日々見ていた。


 普通ならば言葉や命令で済ませる事。

 それら全て本人が率先して一緒に行い、その背中を見て子供たちはその真似をしていく。


 「そうだ。

 食糧庫の移動は済んだかい?」


 「あっ、それはもちろんです!

 既に山5つ分くらい離したところに」


 頷き、ベルは安堵しながら増える火の手を眺める。


 「嫌な予感がするんだ」


 「兄貴?」


 本当に⋯⋯これで良いのだろうか?

 まだ、何かありそうで。


 ベルの頭に浮かぶ、昨晩、夢に見た光景。


 「ドン・ゴは何をしている?」


 「ドン・ゴっすか?

 アイツは今、二番通りでのほほんとしていますが」


 紙を覗いてそう伝えるが。


 「絶対に目を離すな」


 その意味はトリスには伝わらなかったが、言葉に隠れた威圧が物語っていた。


 「⋯⋯はい!」








 「おい!何だあいつら!?」


 ──フンッ!!


 僕の膝が、三十七番通りを制圧しようと戦う勢力の一人に入る。


 「ぐあっ!!!」

 「てめぇ⋯⋯」


 まだ、ここだけは大丈夫だ。

 見回すと周囲にいる数十人どころではない視線。

 

 「こんにちは!!!!」


 ここで名前を売る!


 「僕はエオ!!!」


 ベルさんに言われたことだ。

 


 ーー今回、勢力が明らかになっていないだろうから、謎のままでいたいところだけど、恐らくエオは今後の重要な鍵だ。


 エオは表舞台に立つ必要が出てくるだろうね。 


 ──いっその事大々的に名前を売っておきなさい。



 「これから、全ての人間と友達になる男です!!!」


 力一杯叫んでやる。

 デンデラ⋯⋯聞いてる?


 「おいおい、何だあのガキ」

 

 「みんな何かに追われて、みんな今日を生きる為に戦っているはずです!!!」


 デンデラ。

 僕達の夢⋯⋯ここから始めるよ。


 どこで見て、どこで聞いているか分からない。

 

 「絶対に──みんなが笑顔になれる世界を創ります!!!!!」


 「馬鹿げた夢だなっ!!」


 僕に向かってくる⋯⋯短剣の夜。

 能力か。


 だがその直前。

 

 「未来の頭なんだ⋯⋯ここで止めとくぜ」


 短剣が勢い良く落ち、僕の目の前には。


 「エオ」


 大きくなった、鉄の変な武器を構えるグランがいる。


 「ほら、叫べ」


 ちょっと僕はその姿を見て泣きそうだ。

 成長ってこんな感じなのかなって。


 「デンデラにもきっと届く。

 よく叫べ」


 「僕は!!

 この世界でお腹を満たして!!

 楽しい事を増やして!!

 楽しい事で泣けるような世界にしたいです!!!」


 「ハハッ、アイツ⋯⋯イカれてるのか?」

 「こんな世界でそんなこと無理だろ」


 そうだろうね。

 みんなそう思うはずだ。


 「僕が⋯⋯頭になります!!

 そしてまずはこの南を──みんなの楽園にします!!!!


 なので!!

 ここを攻撃する人はみんな敵になります!!!


 退いて欲しいです!!!」


 全っ然退いてくれない! 

 ⋯⋯まぁ当然と言えばそうかな!!


 「じゃあ今から⋯⋯敵とみなして戦います!!

 ごめんなさい!!」


 「「あっはははは」」


 近くで笑う二人。


 「なんで笑うのさ!?」


 「丁寧にそんな宣戦布告して今から殺しますって、おもろすぎだろ」


 「おっかしーアッハハハハハ!」


 「しょっ、しょうがないじゃん!!」


 「「あっ」」


 二人の指差す方向。

 よく見ると、向こうの頭らしき集団が見える。


 「あれ?」


 アレって⋯⋯


 「出迎え感謝する!!」


 すごい声量だ。

 

 「⋯⋯やっと現れたな!


 ハハッ、エオだな?

 俺は──ルンデルバーンのリオン!!」


 あっ、あの時の!?

 あの人たちだったんだ!


 「俺は世界を変えるためにこの南で頭になる事から始めようと思って残りはここだけなんだ!


 お前とは気が合いそうだが、お前たちは俺達の下につく気はないだろう?」


 「──ありません!!!」


 「よーし!!

 ならば、拳で戦うしか方法はねぇ!!

 とことんやり合うぞ!!


 お前らみたいに根性がありそうな大体同い年は見たことがねぇ!!


 てめぇら!俺達の流儀で戦うぞ!!

 俺達の魂が乗った拳⋯⋯見せつけてやれ!!」


 ウォォオオと響く地鳴りが、こっちに向かってやってくる。


 「行きます!!!!

 これから、ここから──始めます!!!」


 ルンデルバーンと僕達ノブレス。

 ここに、戦いの火が付き始めた。


 まだまだ未熟だけど、ベルさん。

 トリスさん。


 ⋯⋯見ていてください!!

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