南戦争<1>
南、五十番通り。
「しゃァァァ!」
裂創の黒い稲妻が、戦いをまた一つ終わらせる。
その大砲のような暴威を放つその拳。
豹のような威圧感を見せるリオンは直立でその跡地を眺める。
「これで、もう少し」
「頭っ!」
そこへ、数人の部下がリオンの前で片膝をつく。
「どうした?」
「現在の情勢です」
そう言い、別の部下がつらつらと情報をリオンへと上げる。
「二十番通り付近からはドン・ゴ率いる火軍が完全に独占状態にあり、二十二番通りから五十番通りまでは私達ルンデルバーンが独占成功です!」
「遂に来ましたね!頭!」
部下たちの嬉しそうな顔を見るリオンは頷く。
「これで、俺達の物語が始まる」
「なんですけど」
部下の言葉の雰囲気が良くない。
「なんだ?」
「三十七番通りとそこから広がる広大な自然の土地が見えない勢力によって隠されています」
「どういう事だ?」
首を傾げ、リオンは背を向けていた部下の方へと身体を向けて言葉を待つ。
「元から三十七番通りには数々の隠された話が多く、私達でも言及が出来ない状態でして」
──それは本当だよ
「⋯⋯ラオン」
遅れてやってきたのはラオン。
部下たちに服を渡し、肉をくわえながら現れる。
「お兄ちゃんの疑問はその通りだけど、あそこは昔から情報がバラバラで有名なんだって」
「バラバラ?」
「うん。
要は一つになってないから情報が確実とは言えないってこと。
つまり何か隠された勢力があるって昔から言われているんだってさ。
一部からは昔の残党が残ってるんだとか。
まぁ調べた限りだとまだ出てこないみたいだけど。
迷信にしては確かに情報がバラバラすぎるし、明確に隠したい時にしか起きないような不確実な物が多すぎる」
「つまり見に行かねぇといけねぇってことか?」
「そういう事になるね。
ここから距離はあるけれど、行かなければならないかな」
「珍しいもんもねぇのにわざわざこっちから行かねぇとならんとは」
舌打ちしながら小石を蹴るリオン。
「しょうがないでしょ?
領地化するってそういうことだし。
今だってここで生活する人をすべて背負ってるんだから」
周りには様々な人間が待機していて、ボスとなる二人に視線は集まっている。
「まっ、しゃーねーか。
頭となって世界を変えようとする狂った奴らの集まりだ」
リオンは全員に向かって視線を一周し、歯を剥いて言う。
「これから、俺達が世界を変える。
この南だのなんだの知らんが、今日から俺達が全員を引っ張っていく。
弱者上等。
意味分からん殴り合いは今日で終わりだ」
静まり返るこの場に、リオンは優雅に歩き回り、拳を握りこむ。
「俺達人間は、協力して繁栄することを願っている。
敵であっても、味方であっても⋯⋯俺達は人間という種族である以上、これは当たり前だ。
悪い奴も良い奴もいる。
──ったり前よ。
それらを全部まとめ上げて人々に浪漫を見せていくのが男ってもんよ!!!」
浮かび、立ち上がる破壊的な夜に全員当てられて、その放たれる夜に圧倒する。
「いいか凡人。
弱者でもいいぜ?
支配されて終わりだなんて湿ったれた事を言うな。
ここで聞いてる沢山の同胞に言う。
俺達は誰もが幸せになる権利がある。
何故かって?」
「そらぁ、俺達が人間だからだ」
獰猛に笑い、一周するリオン。
「考える事ができて、意思疎通がとれる。
思いやる事ができて、これは良い事なんだ、悪い事なんだと判断ができる。
そして何より、ここまで人類が繁栄してきたことが証明だ。
だがどうだ?
意味のわからねぇ制度で女も男も関係なく虐げられて誰も幸せそうじゃねぇの。今よ。
だからつまんねぇ面ぶら下げてつまんねぇ人生歩んでんだろ?
俺ならこう思うね
──クソ食らえだ!!!!」
肉食動物の毛皮から作られたコートを着飾るリオンは両腕を広げ、空を見上げる。
「死ねや。
そんな価値観。
支配するならもっと明るい地獄にしようや!!
飯が食えて、女も男も自分の欲求を高めて開放していこうや!!!
やりてぇことやれるから人間に産まれたのに、何やってんだてめぇらは!!
下なんて向いてんじゃねぇ!!
今を生きてんだろうよ!!
どうせどいつもこいつもこう思ってんだろ?
"いつか"⋯⋯馬鹿か。
何もしない内は、何も変わらない。
糧にすらならん。
もう一回言うぞ?
──そんなものクソ食らえだ!!!」
聞いている全員の顔は、波打つようにリオンを崇めるように見上げていく。
「男も、ガキも、女も、やりてぇことを剥き出しに開放していこうや!
弱者賛歌!!
凡人歓迎!!
今──いや、これから⋯⋯大量の凡人が牙を向くときが来たぜ!!!
俺達で変えていこうや!!!!」
人々の瞳に映るリオンの言葉に、心が、動かされていく。
「これは俺様の本音──。
すれ違う奴ら全員、意味分からん位暗い。
俺が求めてんのは、熱いくらいやる気に、殺気に、好きな異性を見て発情してモノにする為にギラギラさせてる人間の熱い眼光に満ち溢れた世界にしてぇんだよ!!
疲れて何もしません?
死ねやそんなやつ!!
今から。
俺がこの頭になったら⋯⋯変えてやるからな。
待ってろよ!!!
このクソ見てぇな時代を、俺様が変えてやる!!!」
「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
リオンたちが消えてもなお、その絶叫は鳴り止むことはなかった。




